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エッセイ・コラム

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感じた事をいろいろ書いていきますので、読んでみてください。
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2020年8月の記事一覧

今、瞬間の命に感謝した乾杯

今、瞬間の命に感謝した乾杯

乾杯の音頭をとるのは必ず祖母自身だった。
二か月近く、必ずそれは祖母だった。

高二の冬。心臓発作で倒れた祖母には、家族総手で自宅看護をおこなった。 
ボロ雑巾のようで、いくらももたないと言い放った医師に怒って、入院を拒否した祖母。
毎日の発作には、かかりつけの先生が往診で面倒を見てくれた。

家に工業用の酸素ボンベを設置し、点滴を吊り下げ、やれることは皆やった。
発作を起こすと、誰かが後ろから抱

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雲の峰隠れてもなお富士は富士

雲の峰隠れてもなお富士は富士

一週間遅れで父に会いに行ってきた。
祖父母も同じ墓に眠る。

実際は車だが、この駅を見ると思い出す。
小学二年生。三歳の弟の手を引いて、たったふたりで東京からここまでやってきた事はやはり忘れていない。
母の出産予定日が近づき、わたしと弟はここに預けられた。
八歳と三歳の道中だ。この駅に着いた時、緊張がゆるんで泣きそうになった事は忘れられない。
曽祖母が亡くなり、町の集会所として使用して貰っていた祖

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