ダンスでコミュニケーション能力が高まる、は本当か。[研究紹介]

※文献情報は最後に書いてあります。この研究の情報をなんらかの目的で利用される際には、必ず原典をご確認ください。原典を確認しなかったことによる不利益には一切責任を負いません。

・・・ダンスはコミュニケーションだ!


とはいえ、ダンスをすることはコミュニケーション能力を高めることにつながるのか?と疑問に思ったことがある人もいると思います。

近年、ダンスとコミュニケーション能力に関する研究が、いくつか行われています。

今回は、「ダンス×コミュニケーション能力」の研究を、まとめて紹介したいと思います。



最初に紹介するのは、谷本(2016)の研究です。谷本(2016)では、大学でのダンス授業を通して、学生のチームワーク能力が向上するかどうかを検討しました。そして、このチームワーク能力のひとつの要素として、コミュニケーション能力が定義されていました。

ダンス授業は全15回で、調査は4月上旬と7月下旬の2回に渡って行われました(1回目と15回目なのか、具体的なタイミングは不明)。ダンス授業の内容は、ダンスの創作方法、創作ダンスの指導法を中心とする内容で構成されていました。各回の授業は、テーマの確認の後、5~6名の小グループに分かれて創作活動を行い、その後お互いの作品の発表と鑑賞という流れで行われました。ちなみに、この調査の参加者は全員男性でした。

さて、結果はどうだったかというと、コミュニケーション能力のなかでも、「記号化」という側面の得点が向上したことが示されました。これは、「表情が豊かである」や「自分の気持ちを表情でうまく表現できる」という質問に対して、ダンス授業後には、よりあてはまると思えるようになった、ということです。ダンスの作品を創作する際に身振り手振りを用いて話し合いを行ったことが影響したのではないか、と考察されています。


次に紹介するのは、向出(2018)の研究です。向出(2018)では、大学でのダンス授業を対象に、コミュニケーション能力に限定して、効果を検証しています。この研究では、6回のダンス授業の1回目と6回目で、コミュニケーション能力の調査(アンケート)を行いました。

分析の結果、1)自分の気持ちや考えを言葉やしぐさで表現する力(表現力)、2)相手の意見や立場に共感したり、友好的な態度で相手に接する力(他者受容)、3)良好な人間関係を維持することを心掛け、意見や感情の不一致による不和に適切に対処する力(関係調整)の3つの能力が向上したことが示されました。このような能力の向上が示された要因として、毎時間グループメンバーを変えたことでコミュニケーション体験が増え、一体感を経験したことと、自分のイメージで自由に踊る体験(即興表現・ミラーリング)を取り入れたことの二つが考えられるとされています。


最後に紹介するのは、酒井・相良(2020)です。この研究では大人数で行うダンスの作品創作活動に焦点を当てて、その活動を通してコミュニケーション能力の変化を検証しています。1グループ30名弱~50名弱の女子大生が、ダンスの作品創りを行いました。その期間は約3カ月間(大学の長期休みを除く)で、活動の初期と活動終了後に調査が行われました。

分析の結果、コミュニケーション能力として定義された6つの要素のうち、1)相手の考えや気持ちを敏感に感じ取る力(解読力) 2)自分の考えを言葉で上手く表現したり、周りとは関係なく自分の意見を明らかにする力(自己主張能力)が向上したことが示されました。この結果は、大人数での活動ならではの、大きな集団の中で敏感に他者の考えなどを読み取る必要があったことや、個人の意見を大人数の中で伝えなければいけなかったことが影響しているのではないかと考察されています。そして、上の二つの研究は即興的なダンスが取り入れられていたのに対し、酒井・相良(2016)では作品創作の期間のみを対象としたことで、作品創作活動だけでも、コミュニケーション能力(の一部の要素)が向上したことが明らかになりました。


こうした研究からは、活動の人数などによって多少向上するコミュニケーション能力の内容が異なるものの、概して、ダンスをすることでコミュニケーション能力が高まる、と言えそうです。しかし、それを明言するには、まだまだ課題はあります。例えば、ダンスじゃなくても、他の運動でもよかったのでは?ダンスや運動ではなく、集団活動の効果なのでは?などが考えられます。また、こうした研究で測定されたコミュニケーション能力は、全て学生の自己申告によるものです。実際の行動の変化については変化が測定されていないので、その点は不明です。


以上、「ダンス×コミュニケーション能力」研究でした!ダンス研究はコミュニケーション能力以外にも、様々な能力や自己概念について研究がおこなわれています。今後も研究を紹介していきたいと思います。

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今回は、このあたりで。もう少し、頻繁にnote書きたいんだけど、、、文章書くの、苦手なのかなぁ、、、(ぼやき)        *********************************

谷本英彰(2016)ダンス授業における創作活動がジェネリック・スキルに及ぼす効果ーチームワーク能力に着目してー 大阪産業大学 人間環境論集、15、21-33.
向出章子(2018)ダンスの授業による大学生のコミュニケーション能力の変化の検討 武庫川女子大学 学校教育センター年報、第3号、77-85.
酒井美鳥・相良順子(2020)女子大生のコミュニケーション・スキルに及ぼすダンス創作活動の効果ー作品創りにおける対人葛藤経験に着目してー 比較舞踊学会、26、13-23.

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