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神様のカルテ0

『神様のカルテ0』は、夏川草介さんによる「神様のカルテ」シリーズの前日譚であり、珠玉の短編集です。この作品では、主人公の栗原一止が医師国家試験直前のエピソードや、信州の本庄病院での研修医時代の葛藤が描かれています。また、一止の妻である山岳写真家の榛名との関係も深く掘り下げられています。

この作品を読んで感じたのは、医療現場の厳しさと、それに立ち向かう医師たちの情熱です。一止は、医師としての使命感と患者への思いやりを持ちながらも、現実の厳しさに直面します。特に、末期癌患者との関わりや、自殺志望の登山者とのエピソードは、一止の人間性と医師としての成長を感じさせます。

また、一止と榛名の関係もこの作品の大きな魅力です。榛名は一止を支える存在であり、彼女の強さと優しさが一止を励まします。二人の絆は、医療の現場での厳しい日々を乗り越えるための大きな支えとなっています。

さらに、本庄病院の内科部長・板垣(大狸)先生や事務長・金山弁二との関係も興味深いです。大狸先生の「人にはその人の神様が書いたカルテがある」という言葉は、医師としての限界を認識しつつも、最善を尽くす姿勢を示しています。金山弁二との交流も、一止にとって大きな学びとなります。

医師としての使命感と人間としての優しさが交錯する中で、一止は成長し続けます。『神様のカルテ0』は、医療の現実と人間の温かさ、優しさを描いた感動的な作品です。

一人ぼっちなのは人間だけじゃない。人はみんなひとりなんだって

神様のカルテ0より

一人だってことは、嬉しいことも悲しいことも全部自分が引き受けるってことです。だったら毎日を大切に積み上げて、後悔しないようにしたい

神様のカルテ0より

本当に苦しいのは、自分だけが一人ぼっちだって思うことです。そうして、何もかも投げ捨ててしまうことです。そんなの、間違っていますし、悲しいですし、なにより、かっこ悪いです。

神様のカルテ0  榛名の言葉より

生きる理由なんてものは、しっかり生きてから考えればいいんだよ。

神様のカルテ0 浩二郎の言葉より

ヒトは、一生のうちで一個の人生しか生きられない。しかし、本は、また別の人生があることを我々に教えてくれる。たくさんの小説を読めば、沢山の人生を体験できる。そうするとたくさんの人の気持ちもわかるようになる

神様のカルテ0

それは、優しいということと弱いということを混同しているからです。優しさは弱さではない。相手が何を考えているのか、考える力を「優しさ」というのです。

神様のカルテ0 國枝さんの言葉より

優しさというのはね、想像力のことですよ。

神様のカルテ0より

限られた中でも力を尽くすのが人であるのなら、人間にはずいぶんとやるべきことがあるはずだ。

神様のカルテ0より

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