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「映画レビューの日:パラサイト」 2020.01.26

【ネタバレあり】【最高傑作】【パルム・ドールの看板に偽りなし】【2019年度作品ダントツナンバーワン】【個人の感想です】

・前提として、ニューヨークの映画館で英語字幕での観賞。
英語のレベルは、日常会話に毛が生えたレベルだから、全体のストーリーは理解できているけど、所々わからない単語があってもどかしい思いを何度かした。それにしても、英語字幕ありがたすぎる。字幕なしで映画見るのと理解度が300%違う。。

・ラストシーンから暗転して、エンドロールが始まって、「ふう。」って息をついて、4秒くらいたってからまず腕にゾクゾクと鳥肌が立ってきて、
そこから一拍おいて太腿から全身にかけてゾワァアアってでっかい身震いが起こった。映画を見てこんな体験をしたのは初めてだった。。

・体調悪かったから、悪寒がしただけかもしれないけど。笑
劇場を後にするときも、魂抜かれたかのような異常な倦怠感がして、もう、「すごかった」。そんな映像体験ができます。単純に私のコンディションの問題かもしれませんが。

・見終わって、家路につくまで着いてからもレビューや考察文献を読み漁った、そして私の映像の読み込み(見込み?)が甘かったことを痛感。。

【ここから先】【作品内容に関して】【閲覧注意】

・ポスターについて


・見る前のポスターの印象は、「目線を隠された家族の写真」だったんだけど、終わってからポスター見ると(特に室内のやつ)、情報量の多さにびっくりした。。。

・ネットで読んだ情報だけど、
絵画テント死体の脚テント、など作品のキービジュアルがここあそこに散りばめられてるとのことで。。。あ、右奥のテーブルにケーキもあるね。これ今気付きました。。うわあ!、お父さんの右肩あたりにおもちゃの矢も写ってる!!!見てはいけないものを見つけてしまいそうで、拡大して見るの怖すぎ。。まああと、大した発見じゃないけど、キム家は靴履いてないんだね。
一番びびったのは、これ

お母さんの右脚にゴキブリ。これはネットで見たやつで言及されてて、ひぃって思った。。

・これは私の解釈なので、「知らんけど」って言い逃げするつもりですが、
この特徴的な目線って、特定の家族を匿名化することで、他人事じゃないですよ。韓国(だけでなく世界?)の貧困問題を表してますよ。って表現したいんかな?って思った。 知らんけど。
意外と、目線について言及するレビューを見なかったな。でも、こういうことじゃないですか?知らんけど。(逃)

・やばい。。。。。ちょまって、やばい。また見つけた。ケーキの上に点灯してるランプあるじゃん!!!うう。怖い。。。。今、また、ザワっっって鳥肌立った。。。この恐怖感はなんなの。。?;_;

・あとキッチンにある、写真かポストカードがぺたぺた貼ってあるのは、地下室のあれなのかなあ?それと、特徴的な棚は、地下室に繋がるあれだよねえ?

内容について

・ここから先は、この映画のギミックとかを語るのではなく(この作品は2階、半地下、地下で分断された格差問題がホニャララ〜〜みたいな)、大袈裟だけど、私が送ってきた人生があるから、私だけが感じることのできた感想を書き落としたいなと思ってます。


・一番好きなシーンは、ダントツで!!間違いなく!!ラストシーン!!!
一番最初のカットと最後のカットを全く同じカメラワークで、全く同じ室内で対比させるとか、もう、そういう演出は大好物すぎる!!!!興奮した。興奮したので全部太字です。

・しかも、妄想で父と再会を果たした幸せの絶頂からの対比でもあって、より、彼の絶望が際立つ。家族を失った絶望。父に宛てた手紙と妄想の実現する可能性がない絶望。。。辛い。。。でも、好き。。。。
私、なんでかわからないけど、BAD ENDフェチなんだよな。。。病気か?

・父を迎えにいくシーンでは、「マジか!?」って思って案の定夢オチだったけど、私、なんなら狂乱のパーティー自体が夢オチになるんじゃないかなって少し思いながら見てた。仄暗くて色彩のない地下でのハラハラする展開から、いきなり明るい裕福民のパーティーに来たから、すごく色も鮮やかに見えて、夢みたいだなって思ったから。。5年ぶりの地上は、彼にとって不釣り合いで夢のような場所だっただろうね。

・あ、あと地下の旦那に関する考察で、長男へのトドメを刺し方が、石を「落としている」っていうのは知性のない猿のようだという気付きは、ちょっとゾクっとした。


・次に好きだったのは、雨のシーン。水の入ってこないトンネルの中でも、ちゃんと車道に水撒いているな〜。とか、そういうの見てしまいがち。笑
それと洪水のシーン。すごかった。興奮した。撮影手法的な意味で。かっこよかった。あんな大量の水を用意するなんて。。。。本当にすごい。。。あとそもそも荒廃した街には興奮してしまうよね。(もちろんフィクションに限る。)


・ただ、一番印象に残っているのは、地下室で暮らす男のセリフ。「ここで住んでいるのが自然で、何ならここで結婚したような気がする」みたいな。。セリフの裏付けとして、生活の幸せの象徴として重なっていた避妊具の束。


・私、半年前に3ヶ月間、セブ島に留学していたのだけど、そのとき、初めてファクトフルネスで定義されたレベル4未満の国とそこでの生活を見た。衛生的でない水道。たびたび起こる断水。外に出れば、「ほぼ屋外」のトタン屋根の家群。着古した衣服を着る人々。ストリートチルドレン。物乞い。そこらへんに溜まっているゴミの山。ハエの大群。美味しくない食事。そして、大型ショッピングモールにいる、裕福そうな人々。

・あるとき、語学学校の先生に、この国の格差や、貧困の理由を聞いたことがあった。
「基本的に、彼らはただただ堕落しているだけ。」って突き放した言い方をする先生がめちゃくちゃ印象的だった。国や歴史の説明をうけるつもりで聞いたのに。物乞いする人の中で、ちゃんと体も動かせる若者は、動けるんだから仕事はあるはず、それをしないのは彼らの選択。らしい。

・地下で暮らす彼が「ここでの生活に不自由がない」って言い切っていた時に、「選択」ってワードが頭に浮かんだ。

・違う先生が言ってた話だけど、「フィリピン人は、とても楽観的。もしも家にある食べ物が残り1日分しかなくなったとしても、それを翌日に持ち越すことはなく、家族で全部食べ尽くす。明日起こる明日の問題のことは明日みんなで考える。」
「嘘でしょ!?!?」って聞き返したけど、「本当だよ」って、真面目な顔で言われた。「フィリピン人はそうやって考えて生活してる。」

・言語化するの難しいんだけど、多分、レベル2〜3の発展途上国の人たちって、レベル4生活圏の私達の精神にもうバチバチに刻まれてしまった資本主義のガツガツした考え方を知らないから、楽観的(私は愚かだとも思ってしまうよ。。)なのかな、って。

・「この国の人たちはあまり裕福じゃないけど、ハッピーそうだ」って、アジア圏に旅行した日本人が口腐るくらい言ってるけど、その理由は、資本主義や競争主義がまだ染み付いていないマインドだからなんだろうな。って、思った。これは多分不可逆で、私たちはもう、そんな風に考えるのはレベル4の国にいる上ではむりだとおもう。「あんな風にハッピーに暮らしたい☆」って人は日本出るしかない。
私個人的には、貧困レベルを下げて生活するなんて、まっぴらだ。セブ島は本当に肌に合わなかった。そもそも不衛生だし、多分、私そこで生活する人々を見下して生きていってしまいそう。あと、ほとんどの人がまあまあな信心深さなカトリックなとこもつらい。無宗教な我々には理解できかねるし、宗教には本能的な恐怖を感じる。

・今はフィリピンの人たちに焦点を当ててたけど、韓国に戻す。
今回の映画での主人公達がハッピーでないのは、当然、韓国の平均レベルはおそらく4であって、3のような地域も存在するからだと思う。レベル4を知ってしまえば、3を脱したいと思うのは自明。

・めちゃくちゃおすすめです。世界が変わる。


・「ジョーカー」の舞台にもなった、私が生活しているニューヨークは、言うまでもなくレベル4の国で地域だけど、ホームレスはそこそこ多くて、豊かな地域での格差っていうのも見過ごせない社会問題だっていうのはわかってる。

・あるとき深夜バイト終わりでの早朝、先輩と地下鉄に乗り込んだら、かなりの激臭がして、車内には複数人のホームレスがいた。
「うわ、すごいニオイ」て言った私に対して、「なかなか鋭いね。。」って言う先輩。「車両移る?」って聞いてくれたけど、二人で降りるのも何だかなと思ったから断った。

・彼は「俺も、こういう人を避けるのって嫌なんだよね。」って言ってて、「素敵かよ」って思った。後から気づいたけど、彼、「臭い」って言葉使ってなかったな。って。自分を恥じた。
同時に、会社員時代、新橋あたりでご飯食べて、ふらふら歩いてたらホームレスの寝床に千円札を置いていった、一時微かに密かに好きだった超絶破天荒なプロデューサーを思い出した。お金置いてくのも1度だけじゃなくて私が見る限り2〜3回あった。これに関しては私には理解不能だった。。「もしも俺がホームレスになったら、こうしてお金置いてってくれな」って言われた。彼になら幾らでも(語弊あるけど)あげれるけど、見知らぬ人には。。できない。。。自分の器の小ささが悲しいし悔しいけど。


・もしも、殺された社長が、殺人鬼の臭いに関して何も反応を示さなかったら、殺されてないかもしれないよね?
格の違いを意識してしまい「臭う」って口にしてしまった私は殺されるだろな。臭いを意識しつつ、差別はしたくないって言ってたバイトの先輩はどうだろう?千円札を置いていったプロデューサーは・・?

・私自身は、多分、今までも、現時点ではこれから先も、お金が欲しいですってスピーチしている知らない人や、小銭の入ったコップをカラカラ鳴らしている人にお金をあげられるようにならない気がする。
無理のない範囲で善意はあげられるし、あげたいけど、お金はあげられない。

・答えは出ないけど、「人」の「人」の接し方や感じ方とか「お金」についてたくさん考えることのできたこの作品を本当に観てよかったと思った。

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