教育ファシリテーター → 学校DE&Iコンサルタントへ 【肩書き変更のお知らせとその理由】
これまで名乗ってきた肩書きについて
フリーランスで仕事・活動していると「自分は何者なのか」「何屋さんなのか」という問いに常に向き合わざるを得ません。既存の職業名ではやっていることを表せないため、自分で自分の職業に名前をつけることになります。私に関して言えば、最初は教育コーディネーターと名乗り、ここ数年は教育ファシリテーターと名乗ってきました。ファシリテーターとは、私なりの整理としては「"思考・表現・交流"を促進する/容易にする人」のこと。
コーディネーターというのは「物事がうまくいくように整理・調整してまとめる人」という感じなので、ファシリテーターの方がよりしっくりくるなと思い、あるタイミングから変更しました。自分のやっていることは研修や企画、社会発信なども含めて、広い意味では全部ファシリテーションであるとも言えるというのは、今もそう思っています。
ですが、今回、さらに肩書きを「学校DE&Iコンサルタント」変えることにました。その意味や背景にある思いについて書き残しておきたいと思います。別に私の肩書きがどうなろうとどうでもいいという人がほとんどだと思いますが(笑)私自身の整理のため+周囲の皆さんへの決意表明みたいなものとして、書いてみます。
なぜ今変えようと思ったのか?
「教育ファシリテーター」という肩書きは、自分で名乗っていて違和感がないことに加えて、カバー範囲が広くて結構なんでも包含できます。20代や30代になったばかりの頃は、冒頭に書いたように「自分は何者か」が自分でもスッキリ捉えきれずにいたので、ある意味この肩書きはとても便利でした。ただ、聞いた人からすれば結局「武田緑というのは何屋さんなのかよくわからない」というデメリットもありました。
ここ数年は、自分のやりたいこと、目指したいこと、社会の中で引き受けたい役割がどんどんはっきりしてきています。さらに、子どもができた+歳をとってきて体力の衰えを感じる中で、自分が使える時間とエネルギーには限りがあるということを痛切に実感しており、これからは、「自分が本当にしたいこと / すべきこと」しかしたくないと思うようになりました。というか、そうやって取捨選択しないと、何も為せないのだなと理解できてきた感じです。(逆にこれまでは、時間とエネルギーが無限かのように、生きてきたわけですね…それはそれで幸せでもありましたが…)
で、そのために肩書きで仕事を絞っちゃうのが手っ取り早いと思うに至りました。私は多動性が高いので、思いついたことはなんでもやっちゃいがちです。また、私が何屋さんなのかを明確にしきれていなかったせいですが、いただくお仕事の依頼の幅も結構広いのが現状です。なので、自分自身の意識付けと、ご依頼いただくお仕事の幅をあえて狭めるために、肩書きを変更しようと思います。
なお、先日読んだ寺田さんの本に書かれていた「VSOP」の話も影響しています。もう30代も終わりそうなので遅い動き出しなのかもしれませんが、自分の「Speciality」を明確にして、そこを高めるために時間とエネルギーを集中させていきたいし、対外的にも専門性を認知してもらうことで社会に対してもっと影響を与えられるようになりたいです。
何を「専門性」とするのか?
私がこの先、自分のスペシャリティとするのは「学校におけるDE&I(Diversity,Equity & Inclusion)=多様性を前提とし、不公正を是正し、すべての子どもを包摂することができる学校教育づくり」です。逆にいうと、日本の学校はこの点に大きな課題を抱えていると考えています。
以前から、目指したいとしているのは「民主的でインクルーシブな学校(ひいては社会)」だと言ってきました。それはつまり、一人ひとり多様な背景を持っている子どもたちが誰も排除されず、自分を否定することなくそこで過ごし、学ぶことができて、小さな声が大切に聴かれる学校。子どもたちが「私は大切な存在である」「私たちには影響力(環境や社会を変えていく力)がある」と実感できる学校のことです。
全国の教職員の仲間と一緒に School Voice Project を立ち上げたのも、これを実現していくためには「学校にゆとりを増やすこと」「教職員の心身の健康とエンパワメント」がどうしても必要だからです。
なぜ「学校」?
私はもともとまちづくりや地域活動にも関わってきましたし、フリースクールやオルタナティブ教育など、現状の公教育の制度の外側で運営されている子どもの現場ともたくさんつながってきました(外側に置いてていいのか、という議論はめちゃくちゃ重要な議論ですが、今回は一旦おきます)。
ですが、この3年ほど、活動領域を基本的に制度内学校(以下学校)に絞っています。
理由は一言でいえば、日本のすべての「教育現場」の中で学校がカバーしている子どもの数が最も多く、学校が変われば、子ども・社会へのインパクトが非常に大きいから。そして、学校は、共通の制度の上に乗っかって運営されているので、取り組みの横展開が(他の領域よりは)しやすいと考えるからです。
これは地域や社会教育や子どもの居場所やフリースクールやオルタナティブスクールが大事じゃないと言っているわけでは決してありません。私個人は、どこに・何に自分のエネルギーを投入するかを考えたときに、学校にしようと思ったということです。
なぜ「DE&I」?
身近な人から、「人権教育が専門です」じゃダメなの?という声が聞こえてきそうです。また、「そうやってまた横文字使ってとっつきにくい」「"DE&I"自体の認知度が低くない?」というツッコミもあるかもしれません。でも私としてはこれがベストだと考えています。
(※「DE&Iってなに?」という記事はまた別途近日中に書きます)
人権教育ではなく「DE&I」なのは、多くの人が持っているであろう「人権教育」のイメージとは異なるメッセージを伝えたいからです。人権教育は、"教育"なので、教えることがメインと思われがちです。人権概念や人権課題、差別問題について教えることが人権教育だと、世の中のほとんどの人は思っているでしょう。DE&Iとは、学校という組織・環境を、そこに「多様性があること」を前提に「公正」で「包摂的(排除しない)状態」へと変えていくプロセス。私がやりたいのは、大人が子どもに「教えること」ではなく、子どもの声を大人が聴き、「子どもを取り巻く環境・仕組みを(子どもと一緒に)変えていくこと」です。これは人権というのは「どこかのかわいそうな誰か」の話なのではなく、全員が持っていて、当然あなたにもあって、つまりあなたの声は聴かれる価値があるし、変だと思ったら変だと言っていいし、変えていけるんだよ、というメッセージです。それを、口で言って教え聞かせるのではなくて、体験を通して実感できる環境を保障する、ということ。結果的に、それが一番パワフルに「人権を子どもが理解すること」につながると信じています。DE&Iが生み出す変化の矢印は子ども・学習者のほうではなく環境の側に向きます。そこが重要だと考えています。
それから日本における人権教育は、人権・同和教育が牽引してきたと言っていいと思います。そこには、その文脈で"良し"とされてきた特有の実践のスタイル、レポートの様式、教育観、こども観etcがあります。
私自身も濃い人権・同和教育を受けて育ってその影響を多分に受けて今がありますし、人権・同和教育における実践の蓄積には大きな価値・レガシーがあるわけですが、同時に過去の取り組みを振り返り、見直したりアップデートするべき点はたくさんあるとも思っています(このことについては別途、ちゃんとまとまった文章を書く予定)。なので、一旦そのイメージと、私の発信していることや活動を切り分けたい、という意図もあります。
もちろん、上記はかなり雑な説明で、実際には人権教育には「人権としての教育」「人権を通した教育」「人権についての教育」「人権のための教育」という4側面があり、もっと幅広いものですし、人権・同和教育の取り組みも地域や先生によって違う部分が当然あり、必ずしも定型的だったわけでもありません。ただ、少なくとも「手垢がついたイメージ」がもはや定着している部分があると感じている、ということです。
それから、DE&Iという言葉の認知度が低い問題ですが、これはこれから上がっていくと思いますし、私自身、名乗ることで認知をあげていきたいとも思っています。マジョリティ特権やマイクロアグレッションについても(まだまだではありますが)少しずつ理解が広がりつつありますし、2023年6月に閣議決定された「教育振興基本計画」の中でもDE&Iという言葉が登場しました(PDFリンクの16ページ)。「生活実感のある言葉で語るべき」「横文字を持ってきて権威化させ、それを使って取り組みを広めることには弊害がある」と先日聞いたばかりで、「それはその通りかも…」とも思ったのですが、DE&Iという言葉が包含している細いニュアンスまで伝えられる短い日本語を私はまだ見つけられていません。研修テーマとかは「多様性を前提とした学校づくり」とかってしてるんですけどね・・・。特に「E」のニュアンスを入れるのが難しい・・・。
なぜ「コンサルタント」?
これは、実は「アドバイザー」と最後まで悩みました。
ググって、両者の違いを調べてみたところ、こんな説明を見つけ、なるほど・・・となりました。
それでいうと、学校DE&Iの実現していこうという時には、多くの場合「課題認識」が最初の壁になります。学校という組織・環境はマジョリティ(大人、もしくは子どもたちの中のマジョリティ)に合わせて形成されているのですが、それにマジョリティはなかなか気づけないものです。なので、そこに「多様性がある」「不公正がある」「排除がある」という前提に気付いてもらうことがファーストステップとなります。
・・・ということは、私がやりたいのは(アドバイジングも含む)コンサルティングなのだなと合点し、コンサルタントというワードの方を選びました。
具体的にはどんなことをやっていく?
これまでとやることが大きく変わるわけではありません。研修や講演、ワークショップもやっていきますし、執筆などを通した発信もしていきたいと思います。(インスタとnoteでの発信を今までよりちゃんとしたいという気持ちはありますが、まだ具体的な手立てには着手できてません。長い目で待っててください。笑)
意識的に強化したいのは、コンサルタント的な動き=学校現場に入って、多様性を受けとめる学校づくりに向けた現状アセスメントや、具体的な取り組みへの伴走支援をしていくことです。あまりお金になる気はしませんが、まずは関係性のある先生や管理職の方からのお声がけに応じるかたちで、私自身も経験値を上げていけたらと思います。(ご相談お待ちしてます)
Demo(私の個人事業)のWEBサイトにはこんなふうに記載してあります。
こういう場面で活用できる具体的な支援ツールや研修パッケージ、資料等も整理・開発中です。(どんどん増やしていきたい)
おわりに
そんなこんなで、やけに長い報告になってしまいましたが、今後、フリーランスとしての肩書きは「学校DE&Iコンサルタント」でいきます。教育ファシリテーターも併記するのもちょっと考えましたが、わかりづらいし、選択・集中するという意図もブレるなと思ったので、new肩書きに1本化します。
SNSなどもさきほど全部変更しました!
引き続き、楽しみつつ、がんばって活動していきますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。
最後まで読んでくださってありがとうございました。 よろしければ、フォロー・サポートなどしていただけると、活動していくうえでとても励みになります^^