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#1 エネルギーの今と未来について分からないことあれこれ

◆Why did we choose this topic?

ロシアがウクライナ侵攻を初めて、早3ヶ月が経ってしまった。資源輸出国のロシアに対する経済制裁により、これまで当たり前だったエネルギー資源供給網を見直す日がやってきた。奇しくも、日本では初めての電力逼迫警報が発令されたし、ドイツではロシアへのエネルギー依存の見直しが急ピッチで議論されている。我々の関心がエネルギー問題に向くのは自然な流れだった。

私たちの生活インフラである電気。これからも本当に湯水のように使えるんだっけ?どのように生産され、供給され、どんな問題点があるの?3カ国視点で見える情報を整理してみたい。

◆Data and statistics

エネルギー自給率

まずは自分たちが利用しているエネルギーが、どの程度自国で賄えているのかを確認してみよう。
MIDNIGHT BLUEメンバーの住む豪・独・日のデータは下記の通り(図1)。

  • 🇦🇺:338.5%

  • 🇩🇪:34.6%

  • 🇯🇵:12.1%

図1) 主要国の一次エネルギー自給率比較
出典:経済産業省, 資源エネルギー庁, 日本のエネルギー(2021)

日本はあまり資源の豊かな国ではない、というのは多くの人の共通認識にあるのではないかと思うが、OECD36カ国のブービーというのは驚きだった。

このエネルギー自給率の違いによって、例えば、ロシアの経済制裁に対する動きも全く異なる。

例えばオーストラリアでは、ロシアへの経済制裁に伴い、エネルギー供給の安定性を憂うニュースはあまり見ない(K🇦🇺)。なにせ自給率は300%超え、発電のための資源を輸出する側なのである。

一方、ロシア産エネルギーへの依存割合が高いドイツでは、毎日のようにエネルギー安全保障に関連するニュースが流れている(S🇩🇪)。

日本は、ロシア問題について、エネルギーに関する報道自体が非常に多いというわけではないように感じるものの(M🇯🇵)、5/9にロシア産の石油の原則輸入禁止が表明されるなど、看過はできない問題である。

とりあえず、このデータを見た我々の感想は、「ドイツもまあまあヤバいけど(特に直近数カ月については日本より大変かもしれない)、日本は相当エネルギー安保がやばそうね。オーストラリアって、電力供給の面では安定してそうで良いね。」というところ。

電源構成

次は、電源構成についてのデータ。
電源構成の意味は以下の通り。

電気をつくるために使用するエネルギー源や発電のしくみ(火力・原子力や再生可能エネルギーなど)の組み合わせをいう。エネルギーミックス。

小学館

では、それぞれの国のデータを覗いてみる。

  • 🇩🇪

ドイツが再生可能エネルギーに力を入れていることは広く知られていると思うが、発電割合の40%程度が再生可能エネルギーである(図2のErneuerbare…が該当)
原子力と合わせると、クリーンエネルギーの割合が50%を超えている。

図2) ドイツの発電割合の推移 (2019-2021)
出典: Statistisches Bundesamt (Destatis), Bruttostromerzeugung in Deutschland

データは上から以下の並びになっている。
褐炭、石炭、原子力、天然ガス、石油、再生可能(風力、水力、バイオマス、ソーラー、家庭ゴミの燃焼、地熱)、残留分

  • 🇦🇺

化石燃料を豊富に貯蔵するオーストラリアの電源構成は、石炭が最も多い(図3)。オーストラリアは日本と並び、COP26で化石賞をもらっている、化石燃料依存の高い国である。

図3)オーストラリアの電源構成
出典:自然エネルギー財団, 世界の革新的な脱炭素政策:オーストラリア

他の国と比較したときに、原子力発電が0であることが驚いた。オーストラリアでは、原子力発電が20年以上にわたって禁止されている模様。

  • 🇯🇵

日本は天然ガス比率が最も高く、石炭、再生可能エネルギーが続く。再生可能エネルギーの割合は、一緒に化石賞を獲得したオーストラリアとほぼ変わらない20%弱である。

図4) 日本の電源構成と再生可能エネルギーの内訳
出典: アスエネ

ただ、電源構成とは、その国で使われている電力に着目した、エネルギー源データである。ガソリンやLPガスなど、そもそも電気に変換されずに使われるエネルギーがあり、そのエネルギーの総量は一次エネルギーとしてまとめられている。

一次エネルギーのデータ(図5)を見てみると、化石燃料の依存度はグッと増す。日本の場合は、原子力や再エネの活用によって過去一時的に一次エネルギーの化石燃料依存度を減らすことができていたが、東日本大震災以降は原子力発電所の稼働が減り、化石燃料依存度は再び上昇している。

図5) 日本の一次エネルギー供給攻勢の推移
出典:経済産業省, 資源エネルギー庁, 日本のエネルギー(2021)

世界的な脱炭素の流れに照らし合わせると、化石燃料を直接利用する割合を減らし(つまり電力で動くものを増やし)、さらには電源構成における再生可能エネルギーの割合を高めていくことが求められている模様である。

(我々のようなエネルギー・電力の初学者は、一次エネルギー、二次エネルギー、電源構成などなど、各グラフが何を表しているのかの定義を理解することから始まり、第1回から大変なテーマとなりました(M🇯🇵))

◆Three Questions

MIDNIGHT BLUEメンバーでこれらのデータを睨んで出てきた疑問は以下の通り。次回以降は、湧き出たこれらの疑問を解消できるよう、私たちなりに3カ国を調査していきたい。

1. 各国のエネルギー安全保障はどうなっている?

環境問題や戦争など、エネルギー面で自分たちの未来の安定性が見えないね。各国はどうやって安全保障を考えているんだろう?

2. 今後の各国の再生可能エネルギーの割合はどうなっていくのか?

日本は資源国でもないのに再生可能エネルギーが増えないのはなんでだろう?ドイツとの差はどうやって生まれるの?土地が発電に向いている、向いていないの違いがあるの?EUはお互いに電力を融通し合う仕組みがある?

3. エネルギーを電力に移していくにあたって、発電・蓄電のための資源は十分にあるのだろうか?

再生可能エネルギーを高めても、再生可能エネルギーで発電できない時間をどうするのかの、間欠性の問題があるよね。蓄電も大事なのだと思うけど、私たちの生活を安定させるほどの蓄電というのは可能なのかな?


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