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【ネタバレ注意】『ダウントン・アビー/新たなる時代へ』にちょっと言いたい ~日本公開1周年に寄せて~

⚠️ このnoteは、『ダウントン・アビー』(以下『ダウントン』)ドラマシリーズおよび続編映画 全作品のネタバレを非常に含んでおります。これからご視聴の方はご注意下さいませ!



■ はじめに

ようこそ辺境のnoteへ! つちへんと申します。
ここでは主に『ダウントン』、そして私の愛するキャラクター:トーマス・バロー(と、彼を演じるロブ・ジェームズ=コリアー)の話をしようかな~と思っています。

はじめにお断りしておくと、私は小学5年生からの筋金入りの Shipper です。いや、正直言ってこの言葉もトーマス・バローに狂わされてから知りました。要するに腐女子です。
(日テレの某小学5年生の番組を見てると、本当にこんな子供の頃から自分がくさっていたのかと毎度驚かされます。いや、くさってましたけど。)
ということで、私からトーマス・バローへの視線も当然 Shipper 的なものを含んでいるということをご承知おきください。逆に彼をどういう目で見ればいいのか分からない。

トーマス・バローのことは「トーマス」とか「ばろーくん」とか「とーますくん」とかその他もろもろ好きに呼んでいます。
他のキャラクターも同様なので、分かりにくいかと思いますが適当に読んでいただければ幸いです。

以下、今回はどうしてもやりたかった『ダウントン・アビー/新たなる時代へ』(原題:Downton Abbey: A New Era、以下ニューエラと呼びます)の日本公開(9月30日)1周年に寄せた、ひとり放談を勝手に開催いたします。ていうかほぼボヤキです。

ニューエラには良かったところと う~~~ん???なところが混在しているので、全体的に良かった!という方は自己責任でお願いいたします…。
個人的には「世界一豪華な二次創作」だと思って決着をつけた節もあります。笑。
そしてなかなかの長文です。長文のボヤキです。ご了承ください。







■ ニューエラのちょっと言わせて欲しいところ

①  トム&ルーシーの結婚、早くない?

1作目の映画で全くの初登場だったルーシー・スミス。
確かにいずれトムとそういう方向・・・・・・へ進展することは予感させていたものの、そこでのルーシーの情報はごくわずかなものでした。分かっていることといえば、クローリー家の親戚のレディ・バグショーの侍女で、さる事情からロバートに渡るはずの所領を受け継ぐことになった、幸運な相続人だということぐらいです。トムとは上の階と下の階の間で揺れ動いている部分に共通点があるものの、彼女は「ただ何となく善良そうで控えめな、トムに好印象を抱いている綺麗な人」だったと言っても過言ではありません。キスはしてましたが……。

本作の海外での試写の後、「どうやら結婚式のシーンがあるらしい」という噂が流れた時点では、ついにデイジー&アンディの結婚式が行われるのか?と勝手に想像していました。だってデイジー、ドラマでもゴネてたし前作の映画でようやくマリッジブルーから脱したし、それに最初にリリースされた下記の公式ポスターでは、デイジーの名字がパーカーになってるんだもの……。
いや待て、ルーシーもすでにブランソンになってる……

とか言って蓋を開けたらデイジーとアンディの結婚は「僕たちの結婚式より豪華(シュン)」みたいなセリフですっ飛ばされてました。私もシュンです。

ウィリアムとの結婚式が悲しいものだったことを思えば、デイジーが幸せそうにしてるところが見たかったなァ~~という気持ちです。私の頭の中ではデイジーと父親代わりのメイソンさんがバージンロードを歩いてましたけど、、、、

しかし、こちらもあんなにドラマシリーズで女性に対してゴネてた(※エドナ、ミス・バンティングのくだりを参照)トムが、交際1年未満でスピード再婚ってどうですか?しかも見るからに美人で、相続人で、実はクローリー家の親戚でもあるルーシーと……。
父一人娘一人で暮らしてきたシビーたんがグレちゃわない?大丈夫?

ルーシーの性格や特徴が曖昧なままストーリーが進んでいったことで、極端に言えば「スピード婚した相手の連れ子が相続予定の南仏の素敵なヴィラを『みんなで使いましょう』と勝手に決めた上、ラストシーンで赤子を連れてダウントン・アビーを乗っ取る意地悪な継母」にも見えかねなくて、何だかなという感じでした。ひねくれた私の見方ですけど。笑。
世界恐慌とかWWⅡの前に時代を設定したかったのは分かりますが、何ならトムと彼女のために、間にもう一本映画でもあった方が良かったと思うんデスヨネ、、、


②  実際、おばあさまの過去はどうだったのか?

個人的には、S5で描かれるバイオレットおばあさまとクラーギン公爵の過去の話も好きですし、当時の女性の結婚に誘惑が付き物だったことはパムーク氏の悲劇(?)に呼応するようなエピソードで面白いとは思っています。
でも、それが伯爵の出自に関わっていて、バイオレットの人生の終わりの時期に明るみになる、ってなると何か……どうですかね……。

これに関しては恐らく、「バイオレットの過去の秘密」というストーリーラインが魅力的なことや、上の階も下の階も2チームに分ける新しい試み、南仏のヴィラがお屋敷と正反対な雰囲気で画面栄えすること、それにフランスロケがしたい(笑)といった制作側の動機のためだと推測しています。

南仏パートで気になって仕方ないのが、モンミライユ侯爵の出迎えのシーン。ロバートと侯爵が同じタイミングで同じ仕草をするんですが、これは意図的だったのか偶然なのか、大変モヤモヤしています。Reddit(海外の掲示板)とかも見たけど解決せず……。

こうなってくると正直、南仏パートはなくても良かった気がします。笑。映画チームとフランスチームで分かれたのは面白い試みではありましたが、それほど上手く機能している感じもしませんでしたし、、、それより個人的には前作の「みんなで成功させるぞ!オー!」みたいな一致団結の方が好みでした。


③  再びの貧血ネタは必要だったのか?

これもRedditとかで色んな人が言っていますが、コーラが病気になるストーリーは果たして必要だったんでしょうか?
ドラマシリーズを見ていた方は既視感しかなかったと思います(※S6のイザベルとディッキーのくだりを参照)。何かひねりがあるのかと思いきや、それ前もあったな…っていう同じような終わり方で、ちょっとびっくりしました。笑。

コーラがマーナにアメリカのアクセントを教えるくだりはおお~となったので、ここをもっとフィーチャーして欲しかったなあ。やっぱり映画撮影にストーリーを集中すべきだったのでは(n回目)


④  ベイツ夫妻が陽気すぎでは?

ダウントン・アビーで映画撮影が行われることが決まった際、ワクワクしているアンナに対してベイツさんが「俳優と二人きりになるなよ」みたいな軽口を言うシーンがあります。
これについてはうちの母が、ドラマの中であまりに残酷な目に遭ったアンナに、ベイツさんがこんな冗談を言うのはおかしくないか?と言っており、確かになと思いました。

陽気というよりキャラクターに一貫性がない、と言うべきかもしれません。やっぱり「世界一豪華な二次創作」に思えてくる……。


⑤  トーマス・バローは体よく追い出されたのではないか?

ここからが本題です。今までのは全部前置きです。スミマセン。

告白すると、私は前作に登場した国王陛下の従者、リチャード・エリス氏の過激派です。笑。そのため、ニューエラでのとーますくんの結末を「ハッピーエンド」などとは微塵も思っていません。

これまで、とーますくんと彼が好意や関係を持った、もしくはモーションをかけた男性、通称トーマス・ボーイズ(※そんなものない)の間には、階級差なり年齢差なり、明確な「差」がありました。また、危険すぎるアプローチで窮地に立たされたことも、何度もあります。意外とそういう勘が鈍いところもトーマスらしいのですが。笑。
そんな中にあって、私がリッチ(※エリス氏に私が勝手につけた愛称です)を愛してやまないのは、「執事のミスターバロー」に非常に近しい仕事をしていて、同じ階級で、身長差も年齢差もほとんどないためです。要するに、彼らがあらゆる面で対等であることが大変魅力的だったのです。あと、単純に顔が良い

ふたりには元々、前作の時点で(ハッキリ言って無駄な)ラストがご用意されている予定でした。それをボツにして、前作を完璧な幸福感のうちに終わらせてくれたマイケル・エングラー監督が、やっぱり最大の功労者だったのだな……などと思ってしまいます。
さておき、ニューエラでのリッチの突然の結婚報告も、一度はボツになったそのストーリーラインの再利用です。

そうしてトーマス・ボーイズの中で生き残ったのが、これまでにいなかったタイプ(=明らかに年上)のガイデクおじさんでした。もうハナからおじさん付けちゃった。でも、トーマス・バローにシュガーダディなんて最悪の組み合わせだと思いませんか?えっ私だけですか?

そもそもトーマス、S1E1の初っ端から「従者になりたい」と言い続けてきました。クロウバラ公爵との関係においては、あわよくば従者兼愛人として悠々と暮らす予定だったのです。その企てが頓挫してから苦節15年、結局は使用人の頂点ともいえる執事になったわけです。
ところがガイデクの提案は、まさにかつてのとーますくんが望んでいた、従者兼愛人を匂わせるものでした。それをアッサリ受け入れさせてアメリカに行かせるなんて、ジュリアン・フェロウズ御大おんたいは自分で長い時間かけて書いてきたトーマス・バローの人間的成長を否定したいのでしょうか……。

加えて、S6の最後にはあったはずのカーソンの健康問題が、2作の映画ではガン無視されているのもめちゃくちゃ気になります。笑。結局はカーソンが執事であることが、フェロウズ御大にとっての『ダウントン』なんでしょうか。それにしても、カーソンさんは旧時代の象徴みたいな存在ですよね……トーマス・バローが新時代ちゃうんか?

そして恐らく御大には、あの時代における対等な身分の同性愛者を幸せにする方法が、考え付かなかったのだと思います。”映画関係者とその従者” による同性愛関係なんて、すでに映画「ゴスフォード・パーク」で描いたものそのままです。

つまりトーマス・バローは、「自分らしく生きる」というエクスキューズのもと、体よくダウントン・アビーからも、ひいては英国からも追い出されてしまったのではないでしょうか。
とーますくんはこれまで、人生の大勝負に何度も騙されて負けてきました(※S1衛生兵編・S2闇市編・S5治療編などご参照ください)。いくらドラマシリーズで一度行ったことがあって気に入っているとはいえ、縁もゆかりもないアメリカで、俳優ひとりに生活を頼るなんて、人生で一番のギャンブル過ぎるぜトーマス……。

ちなみに大分時間が経ったので書きますが、下記のサイトのトーマス・バローに関する質問は、実は私が投げつけたものでした。

ダウントンが好きすぎて1か月間ロンドンに留学し、ハイクレア城やバンプトン村を聖地巡礼したファンです!前作で登場した国王陛下の従者、リチャード・エリスさんがとても好きなキャラクターだったので今回登場しないと聞き、非常に悲しいです。なぜ退場させたのでしょうか?(20代・女性)

上記「『ダウントン・アビー』脚本・原案ジュリアン・フェローズが読者の質問に次々回答!ファンに愛される登場人物の”その後”まで激白」より


さすがにそのまま使われることはないと思っていたのですが、一字一句変わっていなくてビビりました。笑。何か「退場」とか書いてすげえオタクみたいじゃん(オタクじゃん)。いくら "Ask Me Anything" とはいえ申し訳なさすぎて反省しています。笑。

さて、この中で御大は、次のように語っています。

例えばですが、エリスとバローの関係がハッピーなものだったとしましょう。その場合、彼らはロンドンで別々のアパートを借りながらも、世間には隠れて恋を育んだことでしょう。それ自体全く悪いことだとは思いませんが、劇的に面白い話でもありませんよね。そのため、バローにはもっとドラマチックで彼らしい選択ができる物語を、この作品で用意しています。楽しみにしていてください。

前掲「『ダウントン・アビー』脚本・原案ジュリアン・フェローズが読者の質問に次々回答!ファンに愛される登場人物の”その後”まで激白」より



いや、それでいいじゃん・・・・


劇的に面白くなくても推しを本当に幸せにしてくれればそれでよかったのよ。
私としては、E.M.フォースターの『モーリス』のような「ハッピーエンド」を望んでいました。あの時代の英国にあって、使用人の頂点たる執事に上り詰めたトーマス・バローが、愛する人といかに幸せな関係を築くかが見たかったんです。
唐突に外国で(不安定な立場の)俳優の愛人兼従者=結局は雇われた使用人になることが、果たして彼の「ドラマチック」な選択だったのでしょうか……。




■ おわりに

散々言ってきましたが(笑)、もちろんニューエラにも好きなところはあります。

これまでなかなか進展しなかったモッさんと我らが女神・バクスターさんの関係が大きく動いたことや、ダウントン・アビーで映画撮影が行われること自体も面白かったですし、エキストラのシーンなんてもう大感謝祭って感じでした。あとアルバート可愛い。
おばあさまがこの世を去る終盤の展開も、現実世界でのエリザベス女王の逝去と重なるものがありました。

日本公開から1年、あまりに目まぐるしく、ところどころ『ダウントン』らしくない=陽気すぎる部分もあったニューエラを、やっぱり私は「世界一豪華な二次創作」だと考えることで消化したいと思います。笑。

だから御大、早く「正典」にリッチを呼んできてトーマスと幸せにしてくれよ……(結局はそこ)

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