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関根愛「ひとりで食べる」(6日目)

昨夜は旅人の戸塚さんのイベントのあと鍋会をする。また話し込んでしまう。夜更けまで明日夜に行うパフォーマンスの準備をする。しんと静まり帰る寒い深夜の会場を歩き回る。どこにスピーカーをおこう。何度もテストをする。元紳士服店の会場は面白い造り。どこをパフォーマンスエリアにしようか到着時より毎日のように考えていたけれど、ここではないかなとついに思い始める。灯りひとつとってもどのくらいまで落とすのか、ランプはひとつか二つか、元々つ点けておくのか自分で点けるのか、カーペットは剥いだほうがいいのかそのままか、一個ずつ検証する。本番よりもこういう面倒くさい時間が楽しい。空気の粒が濃くなる時間。八時間ねないと体調を保つのがむずかしいのに、三島へきて連日五時間しかねていない。もともと体が強くないし相当疲弊はしているはずだけど楽しい。こういう日は一年にそうそうない。起きて、夜のための打ち合わせをする。お昼に「ひとりで食べるシリーズ」の撮影へ行く。七人目。一人暮らしの七十代くらいの方。飄々とした女性。テレビを見ながら同じリズムでひたすら食べていく。胃の全摘出をし、少ない量から食べる訓練をした。今はやっと食事ができるようになった。生きるために食べた、食べ続けた人の食事。宿へ戻り食事をとる。湯がいたきねうちの十割蕎麦に白だしをかけて刻み海苔を乗せる。それと味噌汁の残り。西日の入る宿の台所が美しくて眺める。つい数日前ここへ来たときにはなかった冷蔵庫や食卓椅子や吊り照明が、ある。人の匂いがする。

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ホストの山森さんの声がけで旅人三人がそれぞれ「何か」をやるアート三夜。今夜は私の担当日。風呂へ入っても散歩をしてもごはんを食べても何をやるのか悩みつづけ一週間前にやっとこれで行こう、と決める。パフォーマンスの題名は「MOST OF THE TIME, I ATE ALONE ほとんどの時、私はひとりで食べた」とした。この題名は映画監督であり母校の教授でもあるジョン・ウィリアムズさんに吟味していただき決めた。午後はその準備に費やす。大先輩である俳優の竹下かおりさんにモノローグ音声をお願いしており、何度か往復をさせていただき今日の朝、最終版をいただく。印刷物を作る。ぎりぎりまで文章を練る。回路がショート寸前になる。結局捨てて捨てて短くなる。時間が横に伸びていく。山森さんが設営や印刷を手伝ってくれる。私は印刷ひとつさえうまくできずいつも紙を無駄にするから頼もしい。パフォーマンスではものを食べるので、それも同時に作る。味噌汁と、三島産のカリフラワー、バターナッツかぼちゃ、黒ひらたけを塩茹でしたもの。カリフラワーは白だしで。米はお昼に炊いておいた。あとサラダとぬか漬け。いつもの感じ。戸塚さんが手際よく記録写真を撮ってくれる。皆さんが頼もしくてありがたくて嬉しい。時間の流れが太くなる。

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(Photo Credit : 戸塚愛美)

小道具はどれも会場であるコワーキングスペース「三島クロケット」に元々あったもの。持ち込んだのは印刷物の紙くらい。旅先での自炊もあるものでどうにかすることが好きだけど、こんなにありがたいことはないと思う。ハンガーラックもライトも椅子もテーブルも紙ヒモも充分だった。そこにあってくれた。パフォーマンスがどんなものだったか、現代アートのキュレーターである戸塚愛美さんが解説を入れ記してくださった。もし良ければお読みください。また映像でも記録してもらった。もう少し時間が経ったら、振り返ってみようと思う。パフォーマンス後に少しアフタートーク(一番苦手)をして鍋会へ突入。ここでも戸塚さんに助けられる。なんて人だろう。頼もしい。日曜の夜にお越しくださった皆さまどうもありがとうございました。

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今回のワーケーションプログラムの主催であるアーツカウンシルしずおかの立石さんがお越しくださった。来られることをお聞きしやや身構えていたけど、想像していた人とは別人でとってもチャーミングで素敵な方だった。限られた時間だったのでまた必ずお会いしたい。左が立石さん、右が戸塚さん。

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