佐藤悠【小山町】1日目
静岡県小山町に旅人としてやってきた佐藤悠です。
アーティストであり、最近では美術作品を鑑賞するプログラム等の企画開発にも力を入れています。
自分の活動もで9割以上がオンラインになってこの2年を過ごしてきました。その中で、何かもうそろそろ自分の中で状況が変わっていくようなタイミングを昨年の中頃からなんとなく感じていて、そのシフトチェンジの機会になるのではと、今回のワーケーションに参加しました。
なので、普段からやっている事がある程度ベースになりつつも、意識的にこれまではあんまり積極的にやらなかったこと、落ち着いて考えなかったことを、やっていく7日間になるのだろう。
今回と似たような機会としては、アーティストインレジデンスと言うアーティストが滞在制作を行う企画などに参加してきましたが、そういえばそういった時も日常の自分とは少し違う自分として、いろんな地域や場所に入っていたなと今振り返ると思います。
海外旅行に行って、日本での自分とは少し違う自分で振る舞うような、そんな感覚でこの小山町にも入っています。
初日は、住んでいる茨城から車で静岡県の小山町に向かいました。祝日で休みだとはわかっていたんですが、なんとなく一旦車を止めて到着する場所として、町役場を選びました。
車を止めてドアを開けると、川の匂いが漂ってきたことが印象的でした。小山町と言う名前の通り、富士山の山頂も含む「山」自体がこの場所の特徴ですが、意外にも自分が最初に出会った、最初に感じたのは川と言うのに少し驚きました。
役場の裏に流れている川があって、駐車場がちょうどその間にあるので、たまたま匂いが鼻に入ってきたんだと思います。
今、この文章を書く前に朝風呂に入ってきて、その時に思ったのが、よくよく考えると自分が今住んでいる茨城県の取手市と言うところは、日本一大きな利根川が流れていて、住んでいる家からも歩いて15分も行けば水面にたどり着けます。
ただ、日常の中で川の匂いを嗅ぐ、感じると言う事は全くなく、大きすぎるが故に川の水が流れているすぐそばまで行く事はほとんどありません。
常磐線の電車に乗って川の上を渡ったり、川の土手やそのすぐ下の広場で過ごすといった事がほとんどで、そのことを「利根川に行く」と便宜上言っていますが、実際川の匂いを感じるほど近くに行く事はないんだと気づきました。
懇親会の中で、どなたかがこのマイクロアートワーケーションションの取り組みに関連して、「自分たちが当たり前だと思って過ごしているこの小山町を、旅人たちの視線で見つめることで何か新しい発見があるのではないか」(『宝を掘り起こす』と言うような言葉が印象に残っています)とおっしゃっていました。
利根川の近くに住んでいる自分が全然水面を日常で見ず、川の匂いを感じないように、もしかしたらこの富士山の上に位置する小山町の方も、山との距離感はそういったものなのかもな・・なんて思いながら湯船につかっていました。
役場に着いた後、集合時間が迫っていたのですぐに出発し、インマヌエルと言う施設でホストの小山町の方々との懇親会に向かいました。
集合場所がよくわからず間違って施設の中に入ってしまったんですが、最近できたばかりのこの施設はすごく開放感があるというか、これからいろんなことが起こっていく余白をわざと残して設計されているような、そんなのりしろ、のびしろ感じる場所でした。
懇親会で施設の方と話す中、そういった今後のビジョンを話されていて、その時は名前が出て来ませんでしたが茨城県の大子町にある袋田病院で行われている様々な取り組みのことを思い出しながらお話を聞いていました。
懇親会があったのは、施設の中のカフェ兼レジデンスになっている1つの大きな家のような建物で、「カフェパズル」と言う場所でした。
今思うと、その時は「パズル」と名言うにはものすごい完成された場所だなぁと思っていたんですが、もしかしたらそこもたくさん人が入って、いろんなことができる可能性の余地を残した作りになっていた気がするので、今後起こっていくことを1つのピースとして捉えてそんな名前になっているのかなと、今文章書きながら考えています。
懇親会の中では、他の旅人の自己紹介があったり、ホストの小林さんから全体の企画の説明があったりしました。
自分も自己紹介をしたのですが、活動が多岐に渡っているので、ほんの1部しか説明できないだろうと言う予感がして、いろいろな活動をざっくり見せて気になるものに挙手をしていただいて数個だけ説明しました。
例えばこういった活動です。
その時の走り書きを見て思ったのですが、そういえばこの作品は手がたくさん当たっていたのに僕が気づかず飛ばしてしまったので、これも紹介しておきます。
あと、その後の懇親会でいろいろ人とお話しする中で、多分こういった作品も紹介しておけばよかったな、こういう活動に興味を持ってくれるんじゃなかろうかと言うものもあったので、少しここで載せておきます。
最近の活動はこちらのブログへ
その後、各自歓談と言うことになり、自由な立ち話が会場各所で起こっていたのですが、印象的だったのは、すごくこの街にアートであったりクリエイティブなものを取り入れたいと言う気持ちでした。
書店がないことであったりとか、子供たちの手の触れられる距離にアートが欲しいであったり、自由な表現者であるはずの子供たちが日本の美術教育の中で肩身の狭い思いをしている話・・などが心に残りました。
ただ、その声はただ願望を口にしていると言うよりは、すでに皆さんが何かしらの活動を起こしている自信であったり、確信のようなものも感じたので、悲愴感のある訴えと言うよりは、前向きでポジティブな意見交換のような印象を受けたのも心に残っています。
会もだんだんとお開きになり、外はもう真っ暗。
「どん・どん」と花火のような音が鳴って、皆さんの指差す方向を見ると、光が空に輝いて、白い煙が夜空の中でその光に照らされていました。光は花火のように散ることもなく、落ちていくこともなく、夜の中に浮遊していて不思議な光景でした。
自衛隊の施設が近くにあって、今日はパラシュートの演習があると皆さんおっしゃっていました。ここではよくある光景のようです。
この滞在期間中、1日1枚タロットカードを引いてその絵柄や言葉で、何か起こる出来事から引っかかるものが出てこないかなと思っていたのですが、本日21日のカードは「星」でした。あ〜この照明弾は今日の「星」なのかなと思いながら帰路につきました。
23日追記:
絵柄を見直してみると、水瓶から流れる水や遠くの景色に山があって、今見ると2日目以降の山や水への関連も伺えますね。
夕食のラーメン屋さんで秋野さんとばったり出会い、いろいろ話したりしながら宿に戻って風呂に入り、今日あった出来事を歌にしたり絵にしたりして就寝。
早起きの習慣がついてしまっているので、起きて他の旅人さんがノートを更新しているのを横目に見ながら、また朝思いついたことをこうやって文章にしています。
他の地域の旅人のノートも来る前にたくさん読んだのですが、その中で印象的だったのは、「大事なこと、大切な事はNOTEの文章に書くことができない。そこには現れない」と言う言葉でした
まぁそうだろうなと思いながら、滞在に入っていったのですが、実際に今文章を書きつつもそんな気持ちがさらに大きくなっている気がします。
日々起こる物事をこのテキストの中で表すのは難しいなと思います。今回もう一つ自分のテーマとして、タイムラインのような時系列で物事が起こっていくような考え方や、アウトプットから距離を取れないかなと言うことがあります。
物事が順番に起こっていく捉え方で、いろいろな指示を考えて企画を組み立てていくことが多いのですが、どうもそれだと複雑な内容を複雑なまま扱うと言う事のが、すごく難しいと思うようになりました。
複雑なことを、分解整理して咀嚼しやすくするには、タイムライン的な考え方が良い部分もありますが、いろんな物事を飲み込みやすくしすぎてしまうと、それはそれで危険で、他の作家さんの行うワークショップなどを見て、最近はもう少し違う形・・複雑で同時多発的にいろんな出来事が起こるような現場を、そのままの形で捉えたり提示できないのかなあと思っています。
本のようにテキストが固定されて並んでいると言うよりは、さっきタロットカードの話を少ししましたが、タロットカードを床一面にばらまいて、目についたものから解釈したり、気になったものを自分なりに並べて読み解いて、さらにそこへカードを足したり引いたり並べ変えたりしながら、その変形の可能性自体も扱えるような・・そういった捉え方で自分も何かできないかなと思っていて、そう言う考え方をしていくきっかけにも今回の滞在がなればいいかなと言うふうに思っています。
滞在の中で起こる様々な出来事・・それは大きなことも小さなことも、自分が認知できないこともあるかも知れませんが、そういった複雑で同時多発的な出来事をできるだけバラバラで、ぐずぐずのままで扱う事はできないのかなあと思っていて、その課題は、ワーケーションと言う「仕事と休暇」の矛盾した事を一緒にやってしまう、今回のこの企画の中での過ごし方にも関わってくるんじゃないかな思っています。
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