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おじがうらやましかった

週末は、地元の近くで
木のイベントがあり、わたしと夫も参加した。
わたしたちは、会社のほかに、
それぞれ個人で、日用品の制作販売を
しているので、出店を頼まれたのだ。

木のイベントは、

木っ端を使った工作教室、
小さな家を建てるワークショップ、
薪割り体験

など、木に興味があるひとに、楽しんでもらえる内容になっていて、大勢の子供連れや
木の好きな人たちで賑わっていた。
出店や体験は、あらかじめ場所も決まって
いて、誰でも好きな場所でやっていいわけでは
ない。ルールもある。

久しぶりの直接販売。
お客さんとお話しできるし、
直接販売はたのしい。

テントを立てて商品を並べて、

いらっしゃいましー
見て行ってくださいましー

とやっていると、
店の前を60歳くらいのおじさん(おじ)が
わたしたちのことなど、目に入っていないか
のように、通り過ぎた。
興味ある人、ない人いろいろだから、
無視されることなど、こんな場所では
慣れっこだ。けど。

わたしが、おじに釘付けになったのだ。
なぜなら
おじが、首からけん玉をぶら下げていたから。

「けん玉名人登場や」

と夫がゆう。
私たちは入り口付近に出店していたので、
おじも今、このいでたちで登場したばかりだ。

この登場の仕方で、たいしたことなかったら
恥ずかしいぞ、
と思い、おじがどうするのか、
観察していると、
私たちのテントから少し離れた、
でかい岩の前に立った。
そこに決めたみたいだ。

おもむろ

という言葉がこんなにもぴったりとくる
瞬間はない、というくらい、
おじは無言で、おもむろにけん玉を始めた。

今からけん玉やりまーす
見にきてくださーい

なども一切なく、無言で急に、始めたのだ。
初めはゆっくり、だんだん速く、だんだんと、、速く、速く。。速。はやっ!

けん玉は膝でするんだ。と思った。
おじの膝が、1秒に4、5回くらい、小刻みに
屈伸している。
夫が言った。

「みろ、あの膝。けん玉のしすぎや」

ほんとうだ。おじの膝は、小刻み屈伸を
しすぎて、完全なO脚、ガニ股になっている。

おじの速さがマックスになり、すげ〜
と言っている所に畳み掛けるように、
左手にもけん玉をもち、両手けん玉を
やり始めた。
どっから取り出した?

おじは、心得ている。盛り上げ所を。
玉のほうを持って、柄のほうを振り回して
穴に入れたり、膝にバウンドさせたり、
いろいろな技を繰り広げている。 

たまに失敗すると、
ああっ!
とデカめの声が出てしまうわたし。
だが、

みんな、見に来てくださいね〜

と声をかけられていないので、
みんな、遠くから、戸惑いながら
見るしかない感じ
になってしまっている。

そのあと、わたしたちにお客さんが
来たので、しばらく目を離していたが、
次に見たときは、7歳くらいの男の子と
対面でやっていた。

おじに話しかけ、貸してもらったのだろうか。
おじは、教えている、という感じでもなく、
ただただ、自分の技をやり、
男の子は男の子で、ひとりで自分の
技をみがいている。

おじ、幸せやな。
と思う。

理想の思考回路、があるとすれば、
思考から、行動までの流れに、
マイナスのイメージをはさまない、
というのがわたしの理想だ。

いいこと思いついたよ。
やろ。
てゆう。

おじは今日、

仕事も休みやし、ひまやな。
天気ええな。
お、木のイベントやっとるやん。
俺の技、みんな見たらびっくりするやろな。
けん玉、木でできとるしええやろ。
木のイベントやしな。
どら。
見せに行くか。
よっこいしょ。

という感じで来たのだろう。
首にぶら下げて、家から。

パンフレットには、
「けん玉ライブ」
とか、ひと言もなかったし、
勝手にやりに来たのだ。

はからずも、ゲリラライブになってしまったが、おじは、ただ、いいこと思いついたから、
やっただけだ。
あれこれ考えてない。

それか、ただただ、人前でもあがらずに
どれだけ自分の技を成功させることが
できるか、という、自分の成長だけの
ためにした挑戦だったのかも。

あー、そっちかな。

どちらにしても、わたしは、このような
心の赴くままに、ひとりで動けるひとを
見ると、
いいなあ、と思ってしまう。
いいなあ、というか、すごいなあ。
わたしにはできないから。

ひとり、というのがすごいのだ。
友達とか、同士とかで寄り集まれば、
心強いし、ちょっと勇気のいる事だって
できてしまう。
だから、ひとり、はすごい。

まあ、たくさん人が集まる場所で、
心の赴くままに行動して、捕まってしまう
場合もありますから、そこは
注意も必要です。
ね。


Naito_hさま
イラスト使わせていただきました。
ありがとうございました!


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