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絶対に泣いていい日

先日、boy(15歳息子)の吹奏楽部の、
最後の演奏会が終わった。
これをもって、部活が終了する。
住んでいる市の、1番大きな吹奏楽
フェスティバルでの演奏。

1年生から、部活しか行っていなかったので
これで学校との関係も絶たれてしまう
わけだが、わたしはとにかく、部活だけ、
やり切ることができたらそれでよい、
と思って、それだけを目標にして、
一緒にやってきた。

練習も休みがちになったこともあったし、
みんなと約束していた日に行けなかったり、
あんまり休むなら楽器を変える、と
言われたこともあったが、とにかくなんとか、
今日まで続けられた。

この日は弁当がいる、と言われていたので、
朝から作って、
「今日までよく頑張りました。今まで、
楽しませてくれてありがとう」
と書いたメモを、一旦弁当に入れたのだが、
渡す直前で、やっぱりやめよ、
という気になり、サッと抜いた。

行ってきます、と元気に出発したboyの
後ろ姿を見送って、ひと段落。
ああ、ほんとうにこの日が来たんだ。

babyちゃん(17歳娘)の学校が、
休みの日だったので、
最後の演奏だから、聴いてやってよ。
と言うと、えー、と渋ってはいたが、

「まあ、行くわ」

と言ってくれた。
この姉弟、お互いの演奏をほとんど
聴いたことがない。

会場に入り、出番をまつ。
お腹こわしてないかな。大丈夫かな。

いよいよ、boyが登場した。
一曲めは、わたしがずっと、吹奏楽部に
入るなら絶対にやってほしいと思っていた、
ゴダイゴの「銀河鉄道999」
だった。

わたしのとなりにbabyちゃんが座っていた。
babyちゃんが途中、なにやらゴソゴソ、
携帯用ウェットティッシュの封をあけようと
していたので、なんだ?と思って隣をみると、
babyちゃんは、静かに泣いていた。

わたしはハンカチを2枚持っていたので、
1枚をそっと渡すと、babyちゃんは黙って
受け取った。

babyちゃんはものすごく学校に行く子で
あり、boyはものすごく行かない子であるが
この2人がお互いのことに干渉したり
相手を否定したり、口出ししているのを
見た事がない。

一度だけ、babyちゃんが、
「気持ちが、わかる」
と言った事がある。

boyの学校の演奏は、すばらしかった。
すばらしい出来栄えだった。
boyは一度、短いソロで、前に出てきて
くれた。

みんなが、ステージからはける。
終わった。
終わった。
言うことなしです。

わたしは目と口をハンカチでぎゅううっっ
と抑えて、声を出さずに、静かに大泣きした。
こんなところで、人目もはばからずに
泣いているのはわたしだけだった。
いいのだ。
他の人とは、訳が違うのだから。
今日は絶対に泣く。泣いてやる。
と思っていた。

父と母、babyちゃんと、仲のいいわたしの
友人も並んで座っていたが、誰もわたしに
話しかけなかった。一言も。
ずっと静かに、泣かせてくれた。

夫は、離れた場所に座っていた。
たぶん、夫も泣いている。

こどもは、どんな子に生まれたって、
いつだって、親をしあわせにしてくれる。

いい学校に合格した、とか、
いい会社に就職した、とか。
賞をとった、とか、いい成績を残したとか。
そんな事、全然なくても。

なかなか話さなかった子が話せるようになる。
なかなか歩けなかった子が歩けるようになる。
なかなか外に出られなかった子が、
出られるようになる。
そんなこと。とおもうかな。

大切なのは、ひとと比べずに、
自分のこどもだけをみること。
そうしたらいつだって、こどもは
しあわせをくれるということが、
わかるはずなんだ。




こころさま
イラスト使わせていただきました。
ありがとうございました!

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