マガジンのカバー画像

幻想小説 幻視世界の天使たち(始まりのエピソード)

16
遥かな時を超えて、歴史上の謎の解明に挑む者たちの物語です。物語の主な舞台は現代の日本と中央アジアですが、まずは 千年ほど昔の出来事から始まります。
運営しているクリエイター

2024年4月の記事一覧

幻想小説 幻視世界の天使たち 第4話

幻想小説 幻視世界の天使たち 第4話

「それなら話は早い、モンゴル帝国軍は海を渡っての戦いでは、二回目には十万を超える兵力を持って日本に攻め入ったと言われています。既に火器も持っていたモンゴル軍に比べ、日本は武者が戦いのつど名乗りを上げて、騎馬で戦うという前時代的な戦い方をしていたようです。それなのに二度ともモンゴル軍は博多湾より突如姿を消してしまいました。壮大な戦いのあっけない幕切れについてその理由は良くわかっていないのが不思議でし

もっとみる
幻想小説 幻視世界の天使たち  第3話

幻想小説 幻視世界の天使たち 第3話

ユースフ・アリシェロフ教授は中央アジアに位置するウリグシク共和国の国立ウリグシク大学に研究室をもつ歴史学者である。もうすぐ四十歳になる。彼の専門は世界史に於ける征服と征服の過程での戦いの歴史だ。
その中でも、ユースフが数年に亘って研究しているのは絶対的に有利な戦力、戦略を持った軍が、弱小でこれと言った強みのない、勝ち目のない軍に敗退してしまったケースだ。有史以来の戦争の歴史の中では、士気の上がらな

もっとみる
幻想小説 幻視世界の天使たち 第2話

幻想小説 幻視世界の天使たち 第2話

 マイラムの治療にも拘らずアイの意識は戻ることなく、その日も夕方近くになった。マイラムも疲れたように椅子にへたりこんでいた。リョウとマイラムは殆ど口を聞かなくなっていた。やがてマイラムは日が暮れ始めた窓の外を覗きリョウに言った。
「これ以上私にはどうすることもできない」
リョウは半分泣きながら言った。
「何でもします。母さんを助けてください。何とか、何とかお願いします」
マイラムは暫く黙っていて考

もっとみる
幻想小説 幻視世界の天使たち 第1話                

幻想小説 幻視世界の天使たち 第1話                

(前書き)
遥かな時を超えて、歴史上の謎の解明に挑む者たちの物語です。物語の主な舞台は現代の日本と中央アジアですが、まずは 千年ほど昔の出来事から始まります。

(プロローグ 中央アジア古からの伝承)
深い緑の草原を青年が馬を走らせていた。目の前にはなだらかな弧を描く丘が見える。あの丘を越えると村がある。青年はその村に住むこの辺りでは只一人の医者の許に急いでいた。
青年はリョウという名前であった。

もっとみる