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臨月に入って、こんなに遠くへ来たんだなと思う

吉本ばななさんの小説が好きです。
日常でふとしたときに思うことを、透明な、静かな言葉で綴ってくれている感じがします。読んでいると心が澄み渡っていく。

ばななさんが出産を経て執筆された作品『イルカ』を読みました。

あの崖のところから、またもこんなに遠くに来ている。速くてもう追いつけない、誰かこれを記録しておいて、と言いたくなった。

吉本ばなな『イルカ』より

読みながら、妊活を始めた頃から臨月に入った現在までの記憶に思いを馳せていました。
いろんな出来事がぎゅっと詰まった期間でした。長いようで短かった。

不安や悲しさや嬉しさなどいろんな気持ちが溢れた期間だった。でもそれを振り返る暇もなく時が経っていったような。
とくに妊娠が分かったときは、喜びもあったけど「しっかりしなきゃ、やるべきことをやらなきゃ」という思いがありました(沖縄で一人暮らしをしている妹のヘルプへ行っていて、ホテルでひとりで妊娠検査薬を試したので余計に…)。

一つひとつの感情はきっとそのときにしか抱けないものなのに、なんだかもったいない。私自身がまだ追い付いていないのに。

これをやったから妊娠できたとかできなかったとか、そういうことではなく、結婚生活という新しい日常を自分なりに進んでいった結果の現在。

子どもを授かることを願ってはいたけど、予想はできていなかったいまの生活。
あらためて振り返ると、いま目の前に奇跡に近い光景が広がっているんだなと思いました。


作品のタイトルであるイルカは、主人公・キミコの妊娠の継続を夢の世界で助けてくれた天使。
現実の世界でも、第六感が鋭いマミちゃんという女の子が助けてくれます。
このあたりのエピソードはかわいくて、あたたかいトーンで、癒されました。
ばななさんの作品の主人公は、関わる人や物ごとに対して心を開いている感じがするから好きです。読んでいると、私も自由になれたような気持ちになります。

小説のあとがきでばななさんは「妊娠中にスピリチュアル的な様々なことを体験した」と仰っています。
私はその世界とは無縁だけど、そういうことが現実にあってもおかしくはないのかも、と思ったりします。

言葉で説明できないこと、直感的な何かをもし体験したら、また新しい感情が開けるのかも。
それに頼りたい、助けられたいというわけではないのですが、あってもいいのかもなあと思える心の柔軟さは結構気に入っています。
そんな風に思えたら、今よりもほんの少しだけ、いろいろなことが受け入れられそうな気がするので。


だいぶ前に買ったばななさんの著書数冊、まだ読まずにとってあります。
ゆっくり読んで感想を書きたいな~と思います😊


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