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michinoxa 1st albam 『ゆりかごから』小話(8) 羽をもがないで

1stアルバム『ゆりかごから』の各楽曲について語る連載です。



2024.05.12 release
michinoxa 1st albam 『ゆりかごから』
1. 203 (feat. 知声)
2. みんないなくなってく (feat. 重音テト)
3. 中の下 (feat. 知声) [2024 Remaster]
4. potta-potta (feat. 知声) [2024 Remaster]
5. 玻璃の心臓 (feat. 知声) [2024 Remaster]
6. Fundamental (feat. 知声) [2024 Remaster]
7. 謎の液体と青い粉末 (feat. 知声)
8. 羽をもがないで (feat. 花隈千冬)
9. 157 (feat. 重音テト)
10. パーソナル (feat. 知声) [2024 Remaster]
11. 君のこと信用してないよ (feat. 知声)
12. ゆりかご (feat. 花隈千冬)

 ↓ Click here to listen ↓



曲全体の話

ボカコレ2024冬参加曲

2022年3月に「上澄み feat.知声」でデビューした自分は、
ボカコレルーキー部門の参加資格「ボカロPデビューから二年以内」を迎える直前で、
2024冬はラストルーキーというやつでした。
それまで3回ルーキー部門に参加してきましたが、
とうとうルーキーランキングに掠りもしないまま「新人です」とも言えないタイミングを迎えてしまったわけです。
このタイミングで出さずにいつ出す、ということで
弱小ボカロPにありがちな「中の人感たっぷり」というか「俺の才能を否定するな!」みたいな、そんな本作をリリースしました。

ボカロ界などのアマチュア創作界隈って本来「羽をもぐ」ような厳しい場所ではなくて、誰もがのびのびと羽ばたける場所であるべきだと思うんですよ。
クリエイターも「俺は好きに羽ばたくぜ!」くらいの気持ちでいていいんです。

そんな思いをこめた楽曲です。



アルバム制作のきっかけになった楽曲

本作は、ありがたいことにYouTubeで複数の方に再生リストinしていただいて、自分の楽曲としては初めて視聴回数500回を達成することができました。
他の曲は全然伸びていないので『羽をもがないで』だけを再生リストの一部として聴いてくださってる方が多いのかなと思います。
知らないコンピレーションアルバムに入れていただいているような不思議な気持ちです。
純粋に曲を聴いていただけていることは、
自分の名前が売れたが故に新曲が売れていくよりも嬉しいですね。

本作の動画がちょっと伸びたことで
「もしかしてサブスク配信の需要あるのでは!?」と思い立ちアルバムをリリースすることを決めましたが、
結局アルバム版の本作の視聴回数は滑り散らかしています。



コード進行に苦労しました

本作はAメロのコード進行に苦労しました。
半音ずつぐだぐだするメロディなくせに、
「自分が聴いて不自然でないコード進行」
「1番と2番は違うコード進行にしたい」
という自分のこだわりで、納得のいく進行を2つ制作しなければならず。

1小節ごとに転調する

でもそのおかげで、語呂の良い歌詞と相まって心地よいAメロになったんじゃないかな、と思います。
このへんとかこのへんですね。

他にも、イントロはなぜか5拍子だし、
1番を経て上がった調性を2番に向けて戻さなきゃいけないしで、
「なんでこんなメロディにしたんだ」と過去の自分に当たりながら
難題なパズルを解くように作曲した覚えがあります。



内容

本作はずっと同じ時系列の物語ではなくて、1番と2番の間で時が経っています。

  • 1番: 中学生くらい。親元で生活している。反抗期

  • 2番: 大人。恋愛とか倦怠期とか経験してそう


親への反抗

1番は中学生くらいの子の、よくあると言えばよくある親への反抗をテーマにしています。


毎朝野菜を食べなさい


これはおそらく母親とかに言われた言葉でしょう。


小さい頃は何屋になりたいって言ったって
褒めてくれたのに
いつからか渋い顔


これもきっと親に対する不満ですね。
子どもが無謀な夢を見なくなる時期よりも、
親が「無謀な夢を見ないでほしい」と思い始める時期が早いことで起きるコミュニケーションエラーです。
もしくは、こういった出来事を経て子どもが無謀な夢を見なくなるのかもしれません。



黙って見守っててね
ここは優しい家だから だから


これも親関連、と思いきや
当時鑑賞した映画『オオカミの家』の影響ですね。
こちらの映画のテーマも、親への反抗っちゃ親への反抗です。



今の自分の等身大な歌詞

自分の作詞の傾向として、
実体験そのままではなく、
架空のストーリーやモチーフで主張を揶揄することが多いです。
『みんないなくなってく』では三途の川の河原のような場所にいますし、
『謎の液体と青い粉末』なんてずっと喩え話です。

逆に言うと「今の自分の正直な主張」はほとんど出てきません。
そういった意味でも本作は珍しく「中の人感たっぷり」なわけですが、最も等身大な歌詞は以下でしょう。


愛したい
害がない
だらしがない
つまらない私


一昔前までは「ダメダメな自分ホントクズ」みたいな、自尊心もへったくれもないような自己評価の低い自分でしたが、
大人になるにつれ、それじゃやっていけないことに ようやく気づきまして。

  • 就職活動

  • キャリアプラン(社会人はね、そういうの書くんですよ)

  • 転職活動

など、
並べただけで胃が痛むような、
自分の能力や努力を認めないと人生のステップを進めないときが ちょいちょいあるんです。

子どものころは「何者か」になりたかった、何かに秀でたり極めたりしたかったのですが、
結局それなりに人畜無害で、それなりに怠惰で、ユーモアセンスもさしてない、つまらない凡人なことが分かりました。
それでも、自分の能力や向き不向き、成長を認めて、
「やればできるじゃん自分」「悪くないじゃん」くらいには自分を好きになったほうがいいし、なりたいなと。
上記の4小節にはそんな思いが薄っすら詰まっています。


今回は以上です。

歌詞の全文は以下の通り。
是非読みながら聴いてみてくださいね。

歌詞

才がない
彩がない
毎朝野菜を食べなさい
Lie a Lie
Die or Die
羽ばたきたい
ってちゃちな羽ばたばた

小さい頃は何屋になりたいって言ったって
褒めてくれたのに
いつからか渋い顔

羽をもがないで もがないで もがないで
そろそろ飛べそうなので
自信と自尊心と自身への
期待で腹を膨らませて
止めないで 止めないで 止めないで
地上に留まっちゃ駄目
黙って見守っててね
ここは優しい家だから だから

愛がない
By my side
大嫌い
惰性みたいな関係
チンして
淫したい
もう1回愛されたい

愛したい
害がない
だらしがない
つまらない私
才がない
財がない
歩きたい
間違いがない道

凸凹の路面に
消えかけた白線
アスファルトを突き抜けて
やっと芽吹いた

若葉を摘まないで 摘まないで 摘まないで
今花開きそうなので
名も無い花はないけど僕らは永久に無名です
毟らないで 毟らないで 毟らないで
ひとりぶん生きているので
野の花か?雑草か?
君に決める権利ないね ないね

もがないで もがないで
引き留めないで 止めないで



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