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michinoxa 1st albam 『ゆりかごから』小話(2) みんないなくなってく

1stアルバム『ゆりかごから』の各楽曲について語る連載です。



2024.05.12 release
michinoxa 1st albam 『ゆりかごから』
1. 203 (feat. 知声)
2. みんないなくなってく (feat. 重音テト)
3. 中の下 (feat. 知声) [2024 Remaster]
4. potta-potta (feat. 知声) [2024 Remaster]
5. 玻璃の心臓 (feat. 知声) [2024 Remaster]
6. Fundamental (feat. 知声) [2024 Remaster]
7. 謎の液体と青い粉末 (feat. 知声)
8. 羽をもがないで (feat. 花隈千冬)
9. 157 (feat. 重音テト)
10. パーソナル (feat. 知声) [2024 Remaster]
11. 君のこと信用してないよ (feat. 知声)
12. ゆりかご (feat. 花隈千冬)

 ↓ Click here to listen ↓




曲全体の話

重音テト誕生祭参加曲

動画の概要欄に「私は再度生まれた」と記載した通り、
2023年に発売された重音テトSVは
2008年当時のUTAUと比べ物にならないほどアップデートされており、
まさに「生まれ変わった」という表現が相応しいでしょう。

2008年に誕生しボカロ界を風靡したあと、
残念ながらGUMIやIAに風潮を持っていかれた重音テト。
社会は東日本大震災を経て、スマートフォンが瞬く間に普及し、コロナ禍を迎えて一変しました。
ネット界隈では重音テト誕生の地である2ちゃんねるが改名し、ニコニコ動画は栄枯盛衰、YouTubeに完全に座を奪われたと言っていいでしょう。

15年の時を経て再びメインストリームに躍り出た彼女が見た光景はなんだったでしょうか。
彼女が知っていた人やコンテンツ、プラットフォームは「みんないなくなって」しまったのではないでしょうか。
そんなことを思い、本作を重音テト誕生祭参加曲として投稿しました。


イラストお気に入りポイント

MVのイラストは毎度nijijourneyで生成しているんですが、
本作のイラストは特に気に入ってます。

『みんないなくなってく』MVイラスト

この少女、頭良さそうじゃないですか?
論理的そうで、落ち着いてそうで、
声質も甲高くなさそうで、
口調ちょっと男の子っぽそうですよね。
歌詞がひたすら状況の連続である本作にはかなりマッチしてると思うんですよ。

ちなみに、背景を広い空と平野にしたのは
本作の歌詞が「田舎からどんどん人がいなくなっていく様」にも解釈できるなと思ったからです。
自分は平野出身なので「田舎」っていうと こういうイメージなんですよね。

平野

平野でない田舎出身の方だと、もっと山が近いほうが馴染みがあるかと思います。

平野でない



内容

亡くなった人を偲ぶ歌

2022年から2023年にかけて立て続けに友人と後輩を亡くしまして。
「ポーカーフェイスのあいつ」も「ムードメーカーだったあの子」も実際にモデルがいます。
自分は就職を機に地元を離れており、地元の知り合いの訃報に駆けつけることはあまりできません。
焼香や葬儀に行かないと、意外と死の実感は湧かないもので、
「あの人は死んだんだ」というよりも
「あの人はもう居ないんだな」と、ふとぼんやり思い返す感覚があります。
そんな感情をサビの歌詞に持ってきました。


俺の屍を越えてゆけ

あまりに怖いパケ

制作時期にインプットしてるコンテンツからモロに影響を受ける性質が出ていますね。
当時自分はゲーム『俺の屍を越えてゆけ』の実況動画を視聴していました。
そこから連想して賽の河原、三途の川といった和風の死のモチーフを舞台にし、

失った家族はセーブデータにすら残らない非情さ

  • 電脳世界に1人きり

  • バイオグラフィに君の写真が残るだけ


世代を経ても尚、ボスを倒す道のりが続く途方もなさ

  • 両親の涙がこの地の恵みのようだ

  • それはやがて大河になり歴史を紡ぐのだ

  • 未だ途の中

を表しています。
要は かなりの内容が俺屍に引っ張られています。



思い出話

チャーミングだったあの子

2023年7月のことです。
後輩の訃報を聞いた夜、当然眠れなくなっちゃって。

こういうときは別のことに熱中するか、
うまく受け流すかするのが得策だと思うのですが、
この日の自分はマジの悪手を取りました。


Twitterのトレンド欄を開いちゃったんですね。
(Xは当時まだTwitterでした)


りゅうちぇるさんの訃報でもちきりだったわけです。


皆さんもちろんご存知だと思いますが、
こういった不安になっているときや眠れないときに
SNSのトレンドを見ることは絶対にしないほうがいいです。

基本的に自分の作曲の原動力はストレスや悲しみです。
人としてそれなりにちゃんと生きなきゃいけない上で
どうしても積もってしまうストレスやフラストレーションを、
愚痴やゲームでうまく発散できればいいのですが、
自分はうまくそれができなくて。
1番のストレス発散法が作曲なんですよね。

そんな自分にとって、言い方は何ですが、「死」は原動力の最たる例です。
必ず起こるもので、抗いようのないことで、
1番悲しいことなのに、絶対に覆らないじゃないですか。
愚痴を言ってもいくら悲しんでも、人は生き返りません。
時が経って受け入れられるようになるまでは、なんとか受け入れようと努力するか、受け流すしかありません。
そういうとき、自分は「自分は悲しいんだ!!!!」という趣旨の曲を作ることがあります。本作や早朝のファストフード店四十九日なんかがそうですね。


その夜、Twitterのトレンドを見て「あっ、絶対眠れないわこんなん」と悟った自分はそのままPCに向かい、夜が更ける中 本作の1コーラスを作り終え、疲労と満足感で寝ました。

余談ですが、
かの三浦春馬さんも7月に亡くなっていることもあり、
自分自身も6~7月は自律神経がうまくいかなくて不眠や「あ"ーっ」てなりがちなこともあり、
6~7月は用心深く過ごすようにしています。
(これは一般的な症状らしく、梅雨やら夏至やらが原因だそうです)
皆さんもからだとこころ大事にお過ごしください。


「白昼夢に八十人」という謎の韻

自分のメモ帳には長いこと「白昼夢に八十人置いてけぼりにした」という謎のあまり語呂の良くない韻がメモされていましたが、
眠れぬ夜の自分の勢いにより、Aメロ先頭に堂々と配置されました。


2023年の夏 暑すぎ問題

歌詞の中で、「ぎらついた正中が灼きつくす」だけは
ただの愚痴ですね。
「今年暑すぎん?」っていう。

実は「夏暑すぎん?」という意図の歌詞が含まれてる曲が手持ちにもう1曲あって。
出すタイミング見失いましたね。
2024年の夏があまりに暑ければ投稿しますか。
そうはあってほしくないけど。


以上です。
悲しいことがあった方も、そうでない方も、聴いていただければ幸いです。


歌詞

白昼夢に八十人置いてけぼりにした
目覚めた私は彼らのために涙を流した
それはやがて小川になり岸を造り出した
私はずっと泣きながら河原に石を積んだ

幾度眠りにつけば
幾度川を下れば
再度逢えるのだろうか?

眠りが小さな死なら
未だ黄泉に着かないのは
途方も無く遠いからか? 

ハレとケを通り過ぎて成れの果て

みんないなくなってく
みんないなくなってく
ポーカーフェイスのあいつも
ムードメーカーだったあの子も 

みんないなくなってく
ああ みんないなくなってく
電脳世界に1人きり
現実世界は人いきれ

濁流は今日も雨を吸って元気そうだ
両親の涙がこの地の恵みのようだ
それはやがて大河になり歴史を紡ぐのだ
私はずっとここに居る意味を考えていた

未だ途の中
場違いな
ぎらついた正中が
灼きつくす

幾度眠りにつけば
幾度川を下れば
再度逢えるのだろうか?

ハレとケを通り過ぎて成れの果て
当然のように「また今度」なんて

みんないなくなってく
みんないなくなってく
物静かだったあいつも
チャーミングだったあの子も

みんないなくなってく
ああ みんないなくなってく
電脳世界に1人きり
現実世界は1度きりさ

みんないなくなってく
みんないなくなってく
ポーカーフェイスのあいつも
ムードメーカーだったあの子も

みんないなくなってく
ああ みんないなくなってく
遺されたのは私だけ
バイオグラフィに君の写真が残るだけ
残るだけ


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