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東大日本史(古代)

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2023年10月の記事一覧

2019年東京大学第1問(年中行事の整備と上級貴族の日記)


【設問の要求】

A:摂関期の上級貴族に求められた能力
B:摂関期に上級貴族によって『御堂関白記』や『小右記』などの日記が書かれた目的

【資料文の整理】

(1)9世紀後半以降、朝廷の政務・儀式が「年中行事」として整備される。あらゆる政務・儀式の細部に先例が蓄積される。
(2)年中行事は上卿(上級貴族が担当。地位により担当可能な行事が異なる)の指揮下で実施。
(3)藤原顕光は「前例」に違う運営

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2020年東京大学第1問(漢字の普及と律令国家)


【設問の要求】

A:都城・地方官衙から出土する8世紀の木簡に『千字文』や『論語』の文章の一部が多くみられる理由
→官人がなぜ『千字文』や『論語』を書きつけたのかを考える。

B:中国から毛筆による書が日本列島に定着する過程において、唐を中心とした東アジアの中で、律令国家や天皇家が果たした役割
→「具体的に」という条件があるので、事例の範囲は資料文に限定し、その意義を説明できるようにする。

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2021年東京大学第1問(9世紀後半における皇位継承・政務の安定化の背景)


【設問の要求】

・皇位継承をめぐる紛争がなくなり、「安定した体制」となった背景にある「変化」を説明
→何が「安定」したのかは必ずしも明示されていないが、(1)(2)より皇位継承方式の安定化、(3)~(5)より政務運営の安定化、の2点を読み取る。

【資料文の整理】

(1)承和の変以降、皇位継承方式は直系継承になる
…桓武以降、平城・嵯峨・淳和の兄弟間継承がなされたことを想起したい。
(2)天

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摂関政治の前提について

 東大2021年第1問を解くにあたり、そもそも摂関政治とは何であるか、その前提条件とは何か、を確認しておく必要があると考え、本記事を作成した。各社教科書における摂関政治の説明と、通史類にみえる摂関政治の前提条件をみていく。

【教科書における摂関政治の説明】

手許にある詳説探究・実教探究・新日本史(一般向け上下巻版)を参照した。

 詳説日本史・実教探究では、摂関政治の定義を摂関が政権を掌握した

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2023年東京大学第1問(古代の国家的造営工事と国家財政・地方支配の関係)


【設問の要求】

①「国家的造営工事のあり方」の変化について、
②「国家財政とそれを支える地方支配との関係を反映」させて説明する。
➂ただし、律令制期、摂関期、院政期の三期に時期区分する。

【資料文の整理】

(1)律令制期:仕丁(労役)と雇夫(庸を財源に労働者を雇用)により工事遂行
 →律令制期の国家的造営工事の費用負担者は公民
(2)平安初期:仕丁の不足と雇夫への依存
 →律令税制の動揺を

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