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太宰治賞に応募した。(3回目)

2020年12月7日、太宰治賞の応募しました。はやいもので、今年で三度目の挑戦となります。

第35回太宰治賞は、すでにできあがっていた小説をそれとなく力試しのつもりで送ったのですが、それが2次選考を通過(27/1201篇)。はじめて小説賞の選考に通過したので、飛び上がるほどうれしかったし、これがなかったら、いまごろこんなにきちんと小説を書いていなかったと思います。

だから僕のなかで、太宰賞というのはほかの文学賞とはすこし意味合いがちがっていて、なんというか、見つけてくれてありがとうという気持ちがつよくて、毎年小説を送ることにしています。

2回目に送った小説が1次通過2次落ちしたときは、もうそんな恩義は知らない、と思ったのですが、そんなあまいものではないぞ、ということすら教えてもらったのかなと、いまでは思っています。


そして今回の応募。北日本文学賞の原稿が予定よりもはやくかたづいたので、8月下旬から太宰賞用の原稿に取りかかりました。

棺がモチーフで、死がテーマの小説で、10月中旬には初稿を終え、1か月半を推敲に費やすつもりでいました。しかし初稿ができたときにはすでに11月に突入しており、初稿なのでいろいろな個所がおろそかなんですよね。

まあ、おろそかなだけならまったく問題はなくて、そこからいくらでも直していけばいいわけなんですが、今回いちばん問題だったのは、初稿がまったく気に入らなかったことでした。

モチーフが棺で、テーマが死である小説が簡単に書けるわけなくて、気がついたら2か月半かけてまったくつまらない122枚の小説を書いていたわけです。

でも、やっぱり簡単にあきらめきれないです。だって、

「この小説はいかん」

としてしまった瞬間に、今年の太宰賞に応募できない、そういうことになってしまうのです。だからそのときの僕には二択しかありませんでした。

原稿をボツにしてあきらめるか、完成させるか。

そのどちらかでした。

太宰賞の締め切りは12月10日ですから、もう1か月しか猶予がなく、1か月であたらしい小説を立ち上げる筆力も題材もないので、あたらしいものを書くなんて考えられないし、ほんとうに考えたくもありません。遅筆なんですよ、無理でしょ、どう考えても。

でも、それを凌駕するほど、ほんとうに堪えがたいほどひどい小説になってしまったんですよね。もう手の施しようがなかった。それで、一瞬あたまをよぎっちゃったんですよね。

あたらしいの書いちゃったほうが楽かもーーーー

ってね。楽なわけねえばかなのか。たぶん相当疲れていました。

で、書いていた122枚を投げ出して、あたらしいのを書きはじめました。11月16日から19日。この4日間のことはわすれないだろうな。本来推敲をするために調整した4連休に、まさかプロットも構想もなしに、中学生を主人公にいってみよう、だけで書きはじめることになるとは......

そして4日間で85枚の初稿を完成させて、そこから約2週間で推敲し、110枚の小説が完成して、12月7日に郵便局で発送を完了してもまだ、自分がこれだけの短期間で小説を作り上げたことがいまだに信じられない。ふだんそれくらい小説が書けないんですよ。


今回の小説のタイトルである【こどもたちはしずかにおぼれる】ですが、これはある日見たTwitterのトレンドで、「こどもが溺れるときは、音も立てないでしずかに溺れるので、プールやお風呂で注意がひつよう」というものを見て、ひらめいたタイトルです。

だからタイトルから発想をふくらませていき、

こどもたち→中学生の主人公たち
しずかにおぼれる→思春期に大人に理解してもらえず、しずかに自我の在り方や葛藤に沈んでいくさま

というながれが書いていくなかで見えてきて、それがうまくかたちになってくれました。おもに『将来に対する葛藤』、『才能』、『恋愛と性』、『死』をえがきました。

僕は基本的にタイトルから小説を書いていくことが多いので、やっぱりタイトルがたいせつになってきます。すてきなタイトルに、きちんとした内容をあたえたいという、もう親みたいな心境でやっているところがあります。

とはいえ、今回の小説は僕のなかではだいぶライトな印象になりました。時間がなかったので文章の強度を高めるのに限度があったし、それをしてしまうと作風が変わってしまうので、今回はこれくらい軽くてもいいのかな、と。

そして軽いと理解している分、どこかはずかしい。そして今回の小説は自分にとってけっこう痛烈というか、主人公の葛藤が僕自身をモデルにしているので、どことなく生々しいんですよね。

北日本文学賞に送った【白墨】同様、今回も数人の方に小説をお渡ししました。みなさん大人なので色よい返答ばかりくださり、そんなうまいことあるかなあと信じていません。まだまだ書けたばかりで客観的になれないんですよね。

で、小説って賞に送った瞬間は無敵状態というか、こんないい小説だれにも書けないだろ状態がちょっとだけあるものじゃないですか。【白墨】を書き終わったときなんかそれでした。もう受賞したわって思ってました。

でも今回はそれがまったくなく、主観はいいほうのものではありません。だからほめられても信じられないというか。ひとの時間とっちゃってもうしわけないです、ほんとうに......


というわけで、今回も太宰賞に応募できてよかったです。3度目の正直、とは言うけど、最終選考までいける強度ではないと思います。いいことは書けたつもりだし、まとまりもあるんですが、全体的に軟弱な気がするんですよね。どうなんでしょうね。

というか【白墨】が会心のできだったんですよ。いま北日本文学賞で3次選考を通過していて息はしていますが、主催側から電話が来ないので、もう余命宣告は食らっています。あれがだめなら、僕の書くものはもうぜんぶおわりくらいな感じです。まだまださきは長そうです。


ちょっと長くなりましたが、今回はこのあたりで。

【白墨】、【こどもたちはしずかにおぼれる】、両作ともに読者を募集しておりますので、TwitterのDMかリプライにてご連絡ください。


おわり

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