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#67 《読書記録》法とは何か

「なぜ法律に従わなきゃいけないの?」
「なぜ法律が存在しているの?」
「なぜ個々人の判断に任せるだけではいけないの?」

皆さんならどうやって説明しますか? そんなこと聞かれたって困りますよね。僕だって困ります。僕たちが生まれてくるよりもず~っと前から、姿かたちは違えど法律や規範と呼ばれるような枠組みはそれなりの規模を持った国家には存在していました。存在していることが当たり前すぎて、疑問にすら感じない、説明しろって言われたって…。

ですが、僕の専門は法学です。法律にかかわる人間は誰しも、このような問いから逃れられないし、逃れるべきでもありません。じゃあ、法学を勉強していたら答えが見つかるのか? 答えはノーです。見つかるはずもないでしょう。見つかるのは、現時点ではこう思う、というような仮説ばかり。あろうことか、勉強すればするほど、何が何だか分からなくなっていきます。

そこで、この本に頼ってみることにしました。

『法とは何か 法思想史入門【増補新版】』
長谷部恭男
河出ブックス
2015年

著者の長谷部先生は憲法学がご専門の方です。この本では、冒頭紹介したような疑問を、法と道徳の違いに焦点を当てながら解説しています。ホッブズ、ロック、ルソー、カントなどの思想を取り上げていること、各章で原典解題していることなどが特徴です。若干の事前知識は必要かもしれませんが、法学の“哲学的な”側面を言語化しているという点について、非常に僕たち初学者の参考になる本です。

「昔からあるもの」は時の移ろいと共に空虚なものになっていきます。骨だけ残った制度に残る未来は一つ。骨粗しょう症に罹ってボロボロに崩れ落ちていく未来だけです。しかし、人間はそのための特効薬を受け継いできました。それが、思想であり、哲学です。
この本は、もしかすると、今の社会への処方箋なのかもしれません。

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