「古臭い」、を取っ払う尖った落語家を紹介してみる
学生時代に部活でのめり込んだ、落語。自分で演じるだけでなく、プロの噺家の方々がやっている寄席や落語会の多くに通い、数々の落語を生で鑑賞した。落語、面白い。
しかしながら、落語を一度も見たことがない人は落語=古臭いというイメージがつきまとう。おじいちゃんが座布団でダジャレとか謎掛けとか言うんでしょ、みたいな感覚なのだろう。もしかすると某日曜日の長寿番組の弊害なのかもしれない。
だが、落語は決してつまらないものではないし、場合によっては古臭いイメージを取っ払うくらいブッ飛んだことを高座でやっているプロの師匠方も存在する。僕は基本的に古典落語を聴くのが好きだが、今回はあえて落語を普段聴かない人に「こんなのもありなの!?」と思わせるような尖った噺家さんを紹介させていただきたい。
三遊亭円丈
東京各所に存在する落語などの定期興行を行う場所、寄席。寄席の最後に落語をやる演者を「トリ」と呼ぶが、トリを取っていたら僕が必ず見に行く師匠が、この三遊亭円丈師匠だ。
落語のカテゴライズの方法はいくらかあるが、その中に古典落語と新作落語といった分類がある。古典落語は、主に江戸明治といった時代を背景にした当時の時代で展開される噺。対して新作落語は、現代を背景にした現代の噺。最近の新作落語ではスマホが出たり、振り込み詐欺が出たり、宇宙人が出たりと非常にバラエティに富んでおり、落語=古臭いといったイメージを取っ払う要因の一つとなっている。
そしてこの三遊亭円丈師匠は、現代の新作落語のパイオニアと呼ばれている。新作落語という存在は円丈師匠が活躍する少し前からあったものの、以前はただ時代背景が現代、というだけで古典落語の様式が拭えない作品が多く蔓延っていたそうだ。しかし、円丈師匠は今までに類を見ない落語を創作し、その概念を根底から覆したということで、新作落語のパラダイムシフトを起こした人と言われている。
そんな円丈師匠の高座は、何もかもがブッ飛んでいる。まず円丈師匠を語る上で欠かせないのは、代表作、『グリコ少年』。上方の新作落語の巨頭、六代目桂文枝も影響を受けたとされており、落語協会のエース柳家喬太郎は、この噺が落語家になったキッカケの一つと述べている。
駄菓子にまつわる見解や思い出を語る漫談形式の噺。そして最後には実際にグリコを取り出し、キャッチコピー「ひとつぶ300メートル」は本当かどうか、実際にグリコを食べて検証するのだ。「グリコは、ひとつぶ、300メートルだ!ワァァァァァ!!!」と言いながら走り去って落語が終わる・・・。なんと大胆。
アクション落語と題して、映画の『ランボー怒りの脱出』を落語にするなどしている。僕が最初に国立演芸場で生で観た円丈師匠の落語も、このランボーだった。
ちなみにYoutubeに上がっている動画はこちら。サムネイルがもうふざける気満々で笑ってしまう。
「ただ、新作落語をやるのが新作落語家ではない。新作落語を作り続けるから、新作落語家なんだ」と師匠はドキュメンタリー番組で述べていたが、言葉通り70を越え、記憶力が衰えても新しい噺や試みに挑戦し続けているのは間違いない。次はどんな落語をこしらえるのか、毎回楽しみでならない。
川柳川柳
川柳川柳と書いて、かわやなぎせんりゅうと読ませる。先程紹介した円丈師匠とは、同じ一門の兄弟弟子という関係だ。その師匠が、名人6代目三遊亭円生。にしても古典落語の名手の弟子から超個性派の弟子が二人もいるというのはなかなか面白い。昔はウクレレかなんか片手に漫談をやってたらしいね。
この川柳師匠も新作落語を多く演じられるのだが、師匠の十八番は何といっても『ガーコン』だ。
戦時中の軍歌の変遷から、ジャズが日本に入ってきたことを面白おかしく語る落語。そして最後に伝家の宝刀、「ガーコンガーコンガーコンガーコン」が鳴り響く。落語の演目数あれど、座布団の上に急に立ち上がる演目はこれくらいのものだろう。今の落語家は立つし、バックダンサーもあるし、高座でスープレックスもかける。
快楽亭ブラック
類まれなカタカナの名前の落語家。改名が異常に多いことや、協会を転々としているところから既に破天荒さが伺える。
そんなブラック師匠の高座は、不謹慎に次ぐ不謹慎。政治に関するあれだったりエロに関するあれだったり、この師匠の落語についてもYouTubeの動画をこちらに上げようと思ったが、そもそも噺のタイトルがゲスいものが多すぎるので控えさせていただいた。僕のnoteにはドストレートで可愛さがない下ネタを記載したくない(笑)
また、蕎麦を食べる噺で本当にカップそばを持ってきて食べ始めるという狂ったこともやっている。こんな落語を見に行くお客さんの層が気になる。
個人的には、、、見に行きたいとは思わないかなぁ(笑)かなり上級者向けの噺家さんだといえるだろう。最初に行くのは正直おすすめしない。
おわりに
現在落語家の数は非常に多く、芸風も十人十色。しっとり噺を聴かせる人だったり、とにかく笑いに特化した人だったり、本当に様々だ。どんな人でも間違いなく好きな落語家はいると思うので、皆さんもお気に入りの落語家を見つけてぜひ落語の世界にのめり込んでいただきたい。こんな感じの芸風でオススメを紹介してほしい!なんて要望ありましたら僕でよければ相談に乗るのでコメントなどいただければ幸いです。
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