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自分の普通を押しつけるなこの野郎

「普通に考えたら分かるよね?」

オーストラリアはブリスベンでは今年の3月頃からレストランの営業が制限されてしまい、当時行っていたUber Eatsの配達で生計を立てることが難しくなってしまったため、一時的に北へ300キロほど離れたバンダバーグという都市で農作業を行っていた。7月には街が比較的平和を取り戻した様子だったため、また街へと戻り仕事を探すことにした。求人に募集をかけ続けること数日。近所の日本食レストランの面接に運よく合格し、初日のトレーニングを受けることとなった。

迎えたトレーニング当日。制服をもらい厨房に入る。緊張しいなことに加え、飲食業全くの未経験であったためなかなかに心臓バクバクではあったが、与えられた主な業務は業務用食洗器で皿を洗うことのみ。本日はどんな感じで忙しいか、雰囲気をなんとなくでいいから把握しろとのこと。
良かったぁ、ラッキーw

とは思っていたものの、昼、夕方の食事時となってくると当然混むのが飲食店の性だ。洗うべき食器も多くなってきたため、作業工程の効率化を考えつつ動く必要があった。あたふたしながらも仕事をこなしていると、、、

顔は幼いが雰囲気から自分より年上であろうと思われる、女性のベテランっぽい従業員が声をかけてきた。

「なんでそんなに食器重ねて入れるの?そんなことしたらきちんと汚れ取れるわけないよね?分かるよね?普通に考えたら分かるよね?」

・・・

ざっけんな。


食器をどんだけ重ねようと業務用ってくらいだからあのデケェ食洗器は水洗いして綺麗にしてくれるもんだと思ってましたすんまへん。確かに想像すれば分かりそうなもんですな。若干言いぐさが嫌味だったけれどもそれもまあ百歩譲って許す。


ただ普通に考えて、って何だよそれ。


多くの人種の人たちで構成されている国、オーストラリア。国外出身の人たちの割合は総人口の四分の一に及んでいる、ザ・多民族国家である。そんな国で生活していたら、文化の異なる人と触れ合う機会はどうしたって避けられない。文化が異なれば、常識が異なる。つまり、自分の「普通」が通用しない。オーストラリアという異国で、僕が身をもって感じた教訓の一つだ。

異文化交流では特にそれが顕著に映るが、それだけではない。同じ文化を持つ人、つまり日本人同士でだってそんな事象は大いに起こりうる。目玉焼きに醤油をかけるのが普通の人もいればマヨをかける人もいるだろう。塩コショウの場合もある。「目玉焼きとかけて大好きな恋人とときます。その心は、どちらもきみ(黄身・君)が中心でしょう。」という場合もある。ねづっちです!あ、今こういうのはいらない?

家族、親族であろうと他人である以上、今まで人生で経験してきたこと、得た知識は各個人で当然異なっている。つまり、自分の「普通」が全て当てはまるわけがない。

しかし、この人は躊躇なく「普通に考えたら・・・」という文言を用いた。いわゆる自分の「普通」を押しつける言動に腹が立ったのだ。


気の弱い僕はその時は、「あ、すいません・・・」ととりあえず謝ったが、もしこの世に法律がなければてめぇなんざ、”↓タメ↑+K”のコマンドでサマーソルトキックをお見舞いして日本へぶっ飛ばしてるところだ。くにへかえるんだな おまえにもかぞくがいるだろう。

この件がきっかけというわけではなかったけれども、気の合う人がいなかったこと、不器用かつ飲食業未経験だったため全く仕事ができなかったこと、そして何より、体がここから去れと言っていたので(胃がヒリヒリする感じ)この仕事は4日くらいで辞めてしまった。辞めずにあの仕事を続けていたら、調理スキルとお金は得ることができただろうが、現在の自分に合っているといえる仕事環境も発見することができなかっただろうし、なかなかに惨めなワーキングホリデーを終えて、自分が本当に必要なものを得ることができないまま日本に帰ることとなっていたかもしれないと思うとゾッとする。

今回学んだ人生のセオリー:
胃がヒリヒリするようなあの感覚を味わった時は、逃げるべし。

しかしながら、

結局のところ普通とは、まともとはなんだろうね

あーあーうー

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