見出し画像

コロナ禍と恋人


昨年、長年付き合っている恋人とは違う保健所管内に住んでいるため、コロナ禍で感染者がどちらかに多く出ている時には会わない事が普通になってしまった。

私は常に人員不足の課題を抱える仕事柄、元々休みは平均月4、5日の生活だ。
コロナ禍でどんなに閑散としていてもその状況は変わらず、副反応を想定した休みが取れないのでワクチンも打たないままになっていた。

恋人は夏にはすでに2回接種を終えていた。
少し感染者数が減ったタイミングでも私が未接種なので、念のために会わない対策をお互い合意の上で取っていたら、会わないまま4ヵ月が経っていた。

なんとか昨年中は一度落ち着いたタイミングであったのだけど、今また会わないまま4ヵ月が経っている。単純に考えて8ヵ月に1回だけ会っている。今の感染状況だと余裕で6ヵ月は会わないことになるんじゃないだろうか。

人員不足が解消された今年に入り、私は先日ようやく1回目のワクチン接種を終えた。
恋人はもうすぐ3回目を接種する。

仕事で恋人の住む近くの地域に行くことが毎月あるけれど、私たちは会おうということにならない。
今まではワクチン未接種という言い訳があったけれど、私がワクチン2回目を終えて、恋人が3回目を終えて、10日ほど経って免疫を獲得したとしても、会おうということにならないような気がしている。

感染状況に関わらず会う恋人たちは会うし、ワクチンに関わらず会う恋人たちは会うだろう。

元々コロナ禍でなくても会うのは1ヵ月に一度か多くて二度。こうしてコロナ禍になって会わなくても平気な所があるのは、その会う頻度のおかげだろう。

という下書きを放置している間に私は2回目の接種を終えて、なんと間もなく、約半年振りに恋人に会うことになった。

不思議な感覚だ。いざとなると1ヶ月振りに会うのと変わらない気持ちでいる。

こういう付き合い方をしていると、本当に好き合っているのかよ、という第三者目線の傍観する私がうるさくて時折一人きりで落ち込む。

私が恋人に初めて会ったとき、まさにあれは一目惚れだった。
こんなにとんでもなく好みに合う顔面がこの世に存在するのか、と話しててもナニしてても顔の良さに動揺していた。

けれど不思議な事に、話していても緊張しないし過剰なサービス精神がわいてこない。平常心で会話ができる。LINEのラリーも続くし、趣味も好きだし、色々な話題で盛り上がる。

とても奥手というか、自分の気持ちをさらけ出さない性分の恋人なので、付き合っているかという確認は出会ってから1年半経ってから私が切り出した。

好きな人と付き合えるなど思いもしない人生を生きていた私にとって、質問の答えが同意だったのは本当にうれしい、信じられないくらい幸福な出来事だった。

そして現在は出会ってから9年目となる。

コロナ禍のほとんどを会っていないけれど、恋人は毎朝遅くなっても必ずLINEをくれる。
そうしてくれるとうれしい、と私が伝えたことを今も年単位でずっとずっとしてくれていることが今も毎朝新鮮にうれしい。

会えるとなるとこんなに文面の心持ちが変わってくるのかと自分で不気味に思う。

身近な恋人たちを見ていると会っているのがうらやましかった。
長時間一緒にいることも、ほぼ毎日のように会えるのもうらやましかった。

けど、実際そうなると私は息が詰まってしまう性分なので恋人とのこの付き合い方が楽なのだと思う。
(他人といるのが無自覚に疲れてしまうので)

会っても特別なこともなく、いつも通りの、今まで通りの時間を過ごす事が目に見えている。
どんなに会っていなくてもすぐに今まで通りの時間になることが分かっている安心感を今感じている。

恋人はこの会うことをどう思っているんだろうか。
聞かないけどね。

お互いに直接言葉で好きと言い合ったことは一度もないけれど、姿が目に入った瞬間に私はいつも感動をおさえるために一人早口で「好き好き好き好き、あー超かっこいいゲロ吐きそう」と呪文を唱えている。

きっと今度も唱えるだろう。いつもよりひどい呪文になるかもしれない。

恋人も会えることをうれしく思ってくれていたらいいな。

この呪文の悪化がひどくならないように、当たり前に月1回会えるコロナ禍が明ける日が待ち遠しい。

まだまだ続く気がするけれど、1回半年会わなくてこの心境だというデータが取れたので大丈夫だ。

恋人よ、私はまた会わないうちに年を重ねて、あなたの想像を超える速さと度合いで醜くなっていると思うが、あなたを一目見たときから一緒に年を取って生きたい、そう思った気持ちは変わらないし、なんなら年々重たいくらいの気持ちになっています。

惜しむらくは一緒にテレビでオリンピック中継を見られなかったこと。

パリオリンピックは一回でいいから、恋人と一緒に見られるようになっていたらいいな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?