現人神、三千四百二十二代横綱は大トロ切り身概念の夢を見るか

 横綱が寿司職人であることは周知の事実であり、当然のことながら、小結とはおむすびを完璧に作れなければ就けない役職だ。一般教養としての日本史を中学校で習っていれば、良い飯握ろう粟稗五穀という言葉にも慣れ親しんできたことだろうと思う。

 人類が滅亡して久しい今でも、横綱は寿司を握り続けているし、それを合掌捻りで宇宙へと送り出している。横綱とは神であり、準ずる立場の大関、関脇、小結、前頭――土俵上でぶつかり合い、寿司を握り続けることで、人類再生のための呪的エネルギーを蓄積し続けていた。

 人類再生! 何と壮大な夢だろうか!

 かつて自らが生み出した殺人紅マグロによって駆逐された人類は、最期の希望を力士へと託した。力士たちは殺人紅マグロをついに打ち払い――その遺骸で寿司を握り、人類再生を夢見ていた。

 宇宙マグロの脅威に晒されながらも、今日も横綱は寿司を握っていた。

 新たな脅威が迫っていることに、気付くことなく……。



続く

 

 

 

 

 

 

 

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