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原書購読:The Wonderful Wizard of Oz『オズの魔法使い』


『オズの魔法使い』の表紙

 このページは、『オズの魔法使い』の紹介だ。ジャパ・アニメ調の可愛いイラスト付きで、続編『オズの不思議の国』も入っていて、お得な本だったりする。英語で読みたいが、長くてモチベーションが保てない人向きかもしれない。なお原文は変わらない。そのままだ。
 イラストは、原書購読:001の『不思議の国のアリス』と同じ人が描いている。可愛い。

 言語:アメリカ英語
 表題:The Wonderful Wizard of Oz
 著者:Lyman Frank Baum(1856~ 1919年)
 出版社:Seven Seas
 発行年:2016/4/19(初版は1900年)
 ページ:400(249ページからは続編『オズの不思議の国』)
 イラスト:Kriss Sison
 金額:¥1,911(2018年6月27日)
 読了:2018年11月15日

 『オズの魔法使い』は、少女ドロシーが、犬トトと共に、ハリケーンで異世界に飛ばされ、そこでパーティを組み、悪い魔法使いを倒して、帰還する異世界ものの走りである。
 パーティ・メンバーは、かかし、ブリキのきこり、臆病なライオンだ。かかしは脳みそを欲しがり、ブリキのきこりは心臓を欲しがり、臆病なライオンは勇気を欲しがる。このキャラ設定はゲーム的で、シナリオ上、パーティ・メンバーの行動原理にもなっている。
 そういう意味では、異世界、剣と魔法、パーティ、ラスボスというまさに現代のファンタジー小説やゲームの枠組みが、すでにこの童話には出ている。極めて現代的だ。
 作者はフランク・ボームだが、イラストを描いたウィリアム・ウォレス・デンスロー(1856~ 1915年)も共同作者とされている。これもラノベの作者とイラストレーターの関係みたいで面白い。
 出版して二年目に、ミュージカル化した。映像的な作品という意味でも現代的で、アメリカのエンタメの出発点にもなっている。物語が産業化した。


カンザスの実家

 自分が最初に、英語で読んだ本が何だったのか、思い出せない。もしかしたら、フランシス・ベーコン(1561~1626年)の『Novum Organum(ノヴム・オルガヌム)』1620年の英訳だったかも知れない。何でそんな本を選んだのか謎だ。記憶違いかも知れない。
 もし今から、過去に戻ってやり直すなら、最初の英語の本は、『オズの魔法使い』にしたい。それくらい好きだ。とにかく、この英語は気持ちいい。あり大抵に言うと、現代のアメリカ英語で、分かり易い。今読むと子供向けだなと思うが、最初はこれくらいがいい。
 何で自分は、ラテン語から英語に訳された難解な哲学書などを読もうとしたのか?反省。


パーティ・メンバーと共に

 『オズの魔法使い』は、『不思議の国のアリス』と競合していると言われている。フランク・ボームとルイス・キャロルは、ほぼ同時代人で、お互いの本を読んでいた。アメリカとイギリスの対立だ。ドロシーという少女を主人公にしたのは、アリスの影響だと言われている。
 ドロシーのモデルは存在するが、生後五か月で死んだ親族の女の子らしい。
 物語の生地は、アメリカ西部のカンザスで、トウモロコシ畑やかかし、ブリキと言った要素は、当時のフロンティアの風景を反映していると言われている。
 フランク・ボームは、アメリカ西部のフロンティアをイメージした物語を作りたかった。だから19世紀ヴィクトリア朝の道徳的なお話や、四行詩を使った難解なリドルは要らないと考えた。子供は子供のままがいい。彼はそう考えて、先行者とは大きく異なる道を選んだ。
 この瞬間が、古典的童話と現代的童話の境目だったのかも知れない。
 だがフランク・ボームにも、ルイス・キャロルと同じく、子供友達がいたらしい。そういう点では二人はよく似ている。よく即興でお話を作って、子供たちに話していたらしい。
 アメリカとイギリスで同じ英語。物語の主人公はどちらも少女。子供友達に語って聞かせていたという共通点がある。やはり同時代人で、似た環境にいたという事か。


ウィング・モンキーとパーティ・バトル

 『不思議の国のアリス』は劇場版アニメで『千と千尋の神隠し』だろう。   『オズの魔法使い』は深夜アニメで『Re:ゼロ』みたいな長編の異世界ものだろう。凄く乱暴な置き換えをすると、こんな感じではないだろうか。
 古典対現代、アート対エンタメみたいな対立の構図も、両者には感じられる。どちらが好きかは、好みの問題だろう。私は『オズの魔法使い』が好きだが、気分によっては、『不思議の国のアリス』も観る。そんな感じだ。


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とまれ、素敵な童話なので、ご一読を!
 
                            原書購読:002


 

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