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『素粒子のモンスター』ノート

アイザック・アシモフ 著
山高 昭 訳
早川文庫

 自宅の本棚にある書籍をジャンル別に分けると、もちろん小説が圧倒的に多いのだが、もっと細かく分けると、宗教、宇宙、数学、科学関係が多い。ただこれらの分野の本を紹介するには、自分の知識や力量がいささか不足しているので、一部を除いてこれまで紹介はしたことはなかった。

 このアシモフの科学エッセイシリーズは昭和の終わり頃に次々と発刊され、アシモフのわかりやすい科学知識の解説を貪るように読んでいた。いま手元にはNo.15まである。

 アイザック・アシモフはロシアに生まれ、アメリカで名をなした作家であり、生化学者で、ボストン大学医学部の教授も務めた。彼の著作は広範囲に及び、科学は言うに及ばず歴史や聖書、SF、科学解説書など500冊に及ぶと言われている。

 この本は、アシモフの科学エッセイのうちのNo.11である。第1部は物理学、第2部は天文学、第3部は化学、第4部は生物学、第5部は工学、第6部は年代学となっており、著者の知識の該博さがこの目次だけでもわかる。

 今回紹介するのは、第6部の年代学の最初の「歴史を一年に縮めれば」だ。
 その内の「宇宙年」(宇宙の歴史を一年に換算すると)では、私たちが存在する宇宙の発生からいままでを1年に縮めてみれば、このようになるという話だ。

◇1月1日午前0時………ビッグバン(約150億年前)
◇1月1日午前0時0分13秒………素粒子の形成
◇1月1日午前0時10分………水素・ヘリウム原子の形成
◇1月3日午前10時………銀河の大きさのガス雲から原子の形成
◇2月18日………天の川銀河の形成
◇9月9日………太陽系の形成(地球の誕生は約46億年前)
◇10月6日………地球に生命が誕生(生命の誕生は約35億年前)
◇12月20日………地球に最初の陸生生物が誕生
◇12月31日午後9時40分………最初のヒト科生物の出現
◇12月31日午後11時59分50秒………歴史時代の開始
◇12月31日午後12時………現在

 という事になるという。
〝歴史時代〟とは、〝有史時代〟ともいい、簡単に言えば、文字の類が成立し、文献などの資料によって出来事がわかるようになった時代を指す。諸説があり、地域によって異なるが、おおよそ6000年前からの時代を指すようだ。その前は〝先史時代〟と呼称する。
 このおよそ6000年前の歴史時代の開始が、宇宙年で見ると、「12月31日午後11時59分50秒」であるから、この私たちが存在する宇宙の長遠な歴史のスケールがいくらかでも理解できる気がする。

 この「宇宙年」のほか、ジェームズタウンの植民から始まるアメリカ合衆国の歴史を一年に縮めた「アメリカ合衆国年」、コロンブスがサンサルバドル島に上陸した時を1月1日にした「北アメリカ年」、文字の発明から始まる「歴史年」、最初の都市の建設から始まる「文明年」、現生人類のホモ・サピエンス・サピエンス(間違っわけではなく、正確にはこのようにいう。)による地球支配の開始から始まる「人類年」、アウストラロピテクス類の出現から始まる「ヒト科年」ほか「化石年」、「地球年」などが記されている。

 地球年によると、恐竜は12月の中旬にだけ地球上に存在し、ヒト科生物が地球上にいる期間は、地球年で最後の5分45秒に過ぎず、その人類の歴史時代は地球年で最後のわずか35秒間だそうだ。

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