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☆本#277,278 心底ボロボロ「悲しみのイレーヌ」「傷だらけのカミーユ」ピエール・ルメートル著を読んで

「その女アレックス」が面白かったので、同シリーズを読んでみた。しかし、読み順を誤った…。口コミで話題になったのは2作品目で、日本では翻訳もこの作品からだったから2-1の順で読んだ人も同じ思いをしたに違いない。
シリーズ1作目、著者のデビュー作が「悲しみのイレーヌ」。フランス語のタイトルは「丁寧な仕事」。3作目、このシリーズ最後の長編が「傷だらけのカミーユ」フランス語タイトルは「犠牲」。

前者は、2作品目から読んだためどうなるか先が分かっていた。あれがいつ出てくるのかと思ったら、本の4分の3の終わりごろ。つまり2部構成の1部の終わりだった。しかもそこで、1部がフィクションのフィクションだったということがわかる。主人公についての描写に違和感を感じたのは多分そのせい。
ので、解説であらすじ説明が少なかったのが理解できた。

それと、この作品では殺し方が異常なんだけど、エリスの「アメリカンサイコ」が出てきたのでそれも理解。

後者は読んでて終わってほしくない気持ちと、なぜカミーユの恋人が病院を出たがるのか?と思っていたら、案の定思わぬ嫌な展開で、そういう着地点か…、という結末となった。
前者も後者も、最後をちょっと不明瞭にしている点はよかった。前者は救いがないし、後者も微妙なので…。

1~3作を振り返ると、小説の中では5,6年経った設定で、カミーユの精鋭チームの部下3名もそれぞれ分岐点があって、そのドラマ・関係性も興味深い。

それにしても、この著者の暴力描写は、今回異常者のものもあるけど、ほんと情けなし。日本の小説の表紙も気持ち悪いけど、ある意味特徴的だ。書店でこの表紙を見たらきっと手に取らない気がする。このシリーズは短編もあるようなので、それは是非読みたい。

この著者の読めない展開、2転3転は多層的で癖になる面白さなので、今後古い順に読む予定。

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