見出し画像

育ちの良さと度量、そして生真面目さ 映画「三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜」を見て

三島由紀夫というと著名な作家で、強烈な個性で、たぶんバイセクシュアルで、コッポラでさえ彼の作品から映画をつくった時の人。映画は日本では上映されてないようだけど。その程度しか知らなかった。

これまで彼の本を読んだことがなかったので、全部読みたくなった。

映画を見る前少し学習しておいた。おかげで、楯の会とか、背景等キャッチアップできて理解が深まった気、がする。

三島は1925年大正生まれだけど、1930年代生まれまでの世代は、途中から天皇が神から人(象徴)になることによるメンタルへの影響が大きいらしい。

東大で三島vs東大全共闘のシンポジウムが開催されたのは1969年で、三島は44歳。二十歳前後の東大生との議論は、サルトルとか、哲学等専門用語が会話に出てきて知的さを感じた。フランスでは大学の卒業に哲学のテストが必修らしいことを思い出した。当時の日本のほうがよほど哲学が身近だった印象。

ちなみに、この年村上春樹は20歳。接点はなかったと思うけど。

シンポジウムは、過激で暴力的なことはなく、互いに相手の上げ足をとったり、話を遮ったりすることなく進み、三島は一貫して相手の意見をねじ伏せたり、否定することなく、ちゃんと話に耳を傾け、そして、自分の言葉で相手に伝わるよう話す。ぶれない信念と意思の強さ。言霊。

信念は曲げないだろうけど、聞いてくれそうな隙がある。

「三島は全員を本当に説得するつもりだった」のが本当かどうか本心はわからないけど、確かに。特に、東大全共闘のひとりの個性的な芥に対して。50年後、芥は相変わらずな感じで、それはそれで興味深かった。

この映画から、三島の育ちの良さや、品格、度量の広さ、ストイックさを感じた。そして、大人の余裕。当時ダンディな著名人は誰かというアンケート調査が実施され、三島は三船敏郎を抑えて1位だった。なんか納得。

スポットライトを浴びた人にはアンチがつきものだけど、彼に会ったら、そのリーダーシップ、教養、人柄に魅了された人が多かったんじゃないかな。

明治大正時代の作家は、自殺や病気で短命な人がちらほらいる。三島は彼らよりは長く生きてるけど、大人物ってなぜ短命なんだろう。

クイーンのフレディ・マーキュリーは、己の弱さを克服するため体を鍛えていた、というのが本当かどうか知らないけど、三島は来るべき時に備えて体を鍛えていた。そして、生真面目に実行した。

ふたりとも享年45歳。命日が偶然1日しか違わないことを今知って驚いた。もちろん、西暦は違うけど。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?