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☆本#349,350 現役医師の書く小説「神酒クリニックで乾杯を」「ひとつむぎの手」知念実希人著を読んで

前者はシリーズものの第一弾。個性的で秀でた能力を医師らと働くことになった主人公が事件に巻き込まれつつ、自身の過去の事故の真相もわかり、謎を解明していく話。
シリーズ2作品目から読み始めたけど、こっちのほうが、主人公の転職後の事件に過去の現場での事件がからむ展開や、ドラッグの運び方や殺人、誰が裏で手を引いていたのか等々の意外性がよりエンタメ的。

後者は、30代半ばの大学病院で働く外科医の話。前者は若干ファンタジーっぽいの対し、こっちはヒューマンドラマ。
一流の外科医になるという夢を実現させるべく激務に耐える主人公は、3人の研修医のうち2人を入局させたら、希望している病院へ移動させると言われ、ただでさえ妻子のいる自宅に帰れず病院に寝泊まりする日々なのに、引き受ける。その希望する病院でないと、外科医として一流にはなれないため、そこへの移動を目標に努力を重ねていたから。
とはいえ、条件を考慮し過ぎた行動が裏目に出たり、局内の覇権争いやセクハラで、研修医の信頼をなかなか得られず。しかも、ライバルは尊敬する外科医の教授の甥で、彼とはスポーツで師弟関係だったけど、決勝戦で敗北した苦い過去を持つ。

怪文書騒動後、研修医のひとりの心の傷もケアし、もちろん担当する患者のことを第一に考えた行動からほかの研修医の信頼を勝ちとり、冷静に自分の限界も見極め、結局希望した道ではなく、別の道を選ぶ。それは妥協ではなく、したいことと、向いていることをきちんと認識した結果。

当初の望みを達成できなくても、努力して身についたことは裏切らない。たぶん方向性もあっていれば。

この作品の登場人物はほとんどいい人で、それは善人という意味ではなく、短所もあるけど、悪いことはきちんと反省して前向きに進む、という意味で。ただ2名を除いて。

末期の患者とのやり取りは琴線に触れる。
読んでて、なかなか痛みを理解してくれる医者とは出会えないと聞いたことを思い出して、なんか納得。それと、精神的な悩みが不調となって体に現れる、というのも。



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