見出し画像

☆本#357,358,359 密室と理系と進化 「冷たい密室と博士たち」「笑わない数学者」「詩的私的ジャック」森博嗣著を読んで

シリーズ1作目「すべてがFになる」が面白かったので、全部読むことにして、まず2~4まで。
本来の順番では1作目だった、2番目に出版された「冷たい密室と博士たち」はやはり登場人物らの説明が丁寧。しかも、ステップ・バイ・ステップ的ストーリー展開で、「すべてが~」よりとっかかりやすい。
今回の3作の共通点を上げると、「密室」をめぐっての推理展開。今後の作品でも密室がテーマっぽい。

「冷たい~」は、犀川助教授の友人で同僚の喜多助教授の研究所が主な現場。犀川助教授ともう一人の主人公西之園萌絵がその研究所を訪ねた夜、密室の実験室で男女2名の死体が発見される。
読んでると、特に密室の推理をしなくても、犯人はなんとなくわかってくる、描写で…。

「笑わない~」は、主人公ふたりが、偉大な数学者の博士が住む館のパーティに行き、そこでのイベントで2つの死体が発見され、真相を解明する。
理系の書く小説だからか、状況説明以外は簡潔だけど、たまに哲学的だったり、教養的だったり、そして、主役ふたりのやりとりがなんだか類友的。
たまに、萌絵が、「自分で考えたジョークで機嫌が良くなるというのが、性格が暗い証拠だ」と自己分析するのをなるほどと思ったり。

「誌的私的~」は、他2作品と同じく密室だけど、連続殺人。場所は大学施設。女子大生が連続して殺され、疑われていた歌手とその義理の姉も密室で発見される。被害者が主人公らの知り合いだったこともあり、萌絵が積極的に、というかいつものように警察本部長の叔父のネットワークを使って調査を始める。途中、彼女はひどいめにあったりもするけど、最後はいつものように犀川が謎を解明する展開。
著者は理系だからか、あまり複雑な感情部分にはフォーカスしない傾向だったけど(主人公の犀川がそもそもそこはあまり興味がなさそうな設定だからか)、この作品では、ほかよりは複雑な関係が最後のほうでわかる。

犀川助教授が「底がない沼なんてない。ようは、人間の幻想の有無なんだ」というセリフがなんか深い。

この記事が参加している募集

#読書感想文

191,569件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?