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☆本#273 「実力も運のうち 能力主義は正義か?」マイケル・サンデル著を読んで

興味深いデータが沢山あって、いろいろ考えさせられた。

アメリカでは1970年ごろまでは、高卒でもそれなりに幸福に過ごせていたようだけど、現在では大卒との賃金格差が広がり、依然ほど幸福ではなく、白人の非大卒の3分の2がトランプに投票したというのは、なんかわかった。

ハーバード大学の学生の3分の2は、所得規模で上位5分の1にあたる家庭の出身で、彼らは努力で入学できたというより、寄付できる家柄等が選定要素に深くかかわっている点も、よくわかった。実際、トップ大学の選定は、寄付金額が大きく影響されているのは、調査によって判明している。実際、そういうニュースは聞いたことがある。

アメリカの自殺者は所得が低い層に多いようだけど、最近では高い層の子供も増えているらしい。その理由のひとつが完璧主義だから。良い家柄にいると、いつもトップでいることを期待され、本人もそうでいたいというプレッシャーがあって、それにやられるらしい。

著者が指摘するのは、高所得者層らの子供はそれほど努力せず(家庭教師がいたり、低所得者層の子供と比べると子供時代から待遇が全然違うので)、今の地位にいるのに、あたかもすべてを本人の努力で得たかのように勘違いしてたり、態度が傲慢だったりする点。
アメリカは超リッチとプアの差が大きく、成功が自分の力だけでなく、幸運や偶然の産物だと感じ、謙虚な気持ちが生まれれば、分断する冷酷な成功の倫理から引き返すきっかけになるのでは、と著者は書いている。

アメリカの大統領の学歴なんてあまり気にしてなかったけど、ワシントンとリンカーンは大卒の学位を持っていなかったらしい。学歴=実績でないことは、歴史が証明している。

イギリスでは労働者階級も活躍する社会を目指す的な発言も昔あったようだけど、ブレイディみかこの「ぼくはイエローでホワイトでときどきブルー」や「存在しない女たち」を読む限り、実現はいろいろ厳しい。

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