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☆本#460-3 選択「月の満ち欠け」佐藤正午著、小確幸「流浪の月」凪良ゆう著、不安の具現「名もなき毒」「ペテロの葬列」宮部みゆき著を読んで

「月の~」の著者の本を読むのは久々。

主人公の小山内は中年男性で、15年前妻子を交通事故で亡くす。ある女の子とその母親と対面しているところから始まる。
もう一人来るはずの三角はまだ来ない。

小山内は三角とは2回会っていた。1回目は15年前の妻子の葬儀のときで、彼は話したいことがあると言っていたけど、精神的にそれどころではなく、結局聞かないまま。次は15年後の3月、ついに話を聞くことに。

三角は大学生のころ、バイト先でひとりの女性るりと知り合った。既婚者だけど、親しくなる。が、亡くなってしまう。その前に彼女からある伝説を聞く。「神様がこの世に誕生した男女に、2種類の死に方を選ばせた。ひとつは樹木のように死んで種子を残す。もうひとつは月のように死んで何回も生まれ変わる」、というもの。

るりの夫は、るりが亡くなった後、どん底まで落ちるも、運よく就職する。就職先の社長の娘、希美になぜか懐かれる。彼女の名前の候補は最初「るり」だったという。がある日を境に態度が変わり…。

岩波の編集者が「本作が(岩波書店にとって)最初で最後の受賞作」って言った(本に書いてあった)というがちょっと…。だって、言霊…。

「流浪の…」は読んでいくうちに映画化された作品の原作だと気付く。

ちょっと風変わりな両親と暮らしていた更紗。
父親が亡くなり、母親も出て行ってしまったため、叔母の家で暮らすことになる。
小学生の更紗は、従兄の行為が気持ち悪くて、家に帰りたくない。いつも公園で時間をつぶす。そこにはいつも大学生ぐらいの男性もいた。
雨の日も濡れながら本を読んでいたら、彼から声を掛けられ…。


「月の~」もこの作品も、女子と大人の男性が主軸。

「名もなき~」は、杉村三郎シリーズ2作目。

編集長が杉村のアシストのためにバイトを募集する。そこで採用されたのが原田(げんだ)いずみ。編集としての経験が3年はあるはずなのに手際が悪く、失敗すると泣いて謝っていたのが徐々に人のせいにするようになる。ある日編集長が注意したところ、逆切れでモノまで投げる始末。しかも翌日から無断欠勤が続き、連絡しても電話に出ない。そこで、杉村が対処することに…。

一方、町では連続毒殺事件が起こっており、杉村は偶然、被害者の一人の孫と知り合い、こっちの事件にも巻き込まれていき…。

トラブルメーカーの原田のキャラクターが強烈。

「ペテロ~」は、杉村三郎シリーズ3作目。

編集長と杉村は、元取締役の森のインタビューのため彼の自宅へ行く。
帰りに乗ったバスが、バスジャックされる。犯人は老人で、彼を除くと、車内は乗客6名と運転手。犯人は途中で、運転手と老女は降ろす。
警察を待つ間、犯人は乗客に慰謝料を払うと言い出し…。

警察が音響閃光手榴弾を使ったことで、乗客は無事救出される。
その後、犯人は慰謝料を払うほどの資産を持っていなかったことが判明。なのになぜか乗客と運転手のもとにお金が届き、杉村らはひとまず送り主を探し始めることに。

前作で知り合った探偵の北見の妻子から、バスジャックのことで見舞いの電話をもらい、杉村は彼らを訪ねる。北見は亡くなったのに、過去に仕事の依頼を受けたことがある足立という男性が来たと知り、その件を杉村が対応することになる。
杉村はそもそも、北見の仕事への信念みたいなものに惹かれていた。

日曜日、杉村は妻の紹介で短期間働くことになった同僚の真野からの電話を受ける。同僚の井出から連絡があり、家に来るよう言われたという。どうやらセクハラ相談で、翌日、井出と話をしようとするも、彼は有休をとり出社せず。その二日後、杉村は人事に呼び出され、井出が休職願いを出し、杉村をパワハラで訴えたと聞く。労連が介入し調査が始まり…。

その後いろいろあって、井出から突然電話で呼び出された杉村は、妻の秘密を知ることになり…。

5作目から読んでいるので二人がどうなるかを知っていたけど、なかなか一方的でひどい展開。と、最初思った。が、杉村が解放されたがっていて、留まりたいという熱意もなかったのなら、なるようになっただけ。
とはいえ、親の遺伝子を子は30%しか引き継がないと聞いたことがあるけど、浮気は引き継ぐのかとか、避けたいと思っていた怖いことがなんとなく頭の片隅にあるだけで逆にそれを実現させてしまうのかとか、したいことは結局止めることはできないのかなとか、ちょっと考える。


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