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☆本#332 107歳のリアルな「これでおしまい」篠田桃紅著を読んで

2021年にあと27日で108歳だった美術家の、亡くなった後に出版されたエッセイ。というか、過去の書物の引用と抜粋が主。

著者は1913年(大正2年)生まれ。1923年の関東大震災のあと、その影響で和装から動きやすい洋装に移り、西洋文化の影響が濃くなってきたとき、戦争がはじまり国粋主義に戻り、そんな環境の中、10代を過ごす。女子は結婚するのが当たり前だった時代に、友達が寡婦になっていくのを見て、そもそも自立したいと思っていたこともあり、自分の筆の実力で自立し、芸術を高めていく。戦後の1950年代に、招待されてアメリカに2年滞在し、その後ヨーロッパでも展覧会を開く。開拓者であり、挑戦者。
当時アメリカへ行くにはVISAが必要で、また、招待する側の予算提出も必須で、今では想像もつかない大変さ。それでも、行けるのは求められた作品の人気、裏打ちされた美術家としての実力。
確かにその作品はシンプルだけど、独特で、類似品がなく、東洋的。

この本の最初のほうの引用ではこれでもかというくらい「孤独」という言葉が出てくる。
モノクロ写真も少し挿入されていて、著者はいつも和装。洋服は形あるものに自分を合わせるもので、和装は1枚でひとに合わせてくれる、という考えは、確かに。

文中には戦争の大変さも書かれていたけど、戦争前の平和な時代の話も少し触れていて、鏑木清方が明治時代の暮らしの幸せな風景を語ってた(展覧会で流れていたインタビュー録音)のを思い出した。

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