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☆本#486,7 喪失・再生「あなたを想う花 上下」ヴァレリー・ペラン著を読んで

ここ数年読んだ海外作家の本では、メインがミステリーであっても、フランス人の作品にはコアにLove(愛)があるなと思っていたら、この作品も。むしろメイン。

ヴィオレットは40代の女性。小さな町にある墓地の管理人の仕事を住み込みでしている。共に働く仲間もいる。数年前、夫のフィリップが失踪して、今はひとり。

ある日、40代ぐらいで少しセルジュ・ゲンズブールに似ている男性ジュリアンが訪ねてくる。亡くなった母親が父親と同じ墓ではなく、ヴィオレットが管理する墓地に眠っている男性の墓に入ると遺言を残していたので確認に来たという。

彼は警官で、彼女の夫が失踪していることを別の人から偶然聞き、ヴィオレットが頼んでもいないのに勝手に居場所を見つけて知らせる。教えられた場所に行くと、実際彼はそこにいた。
ヴィオレットは離婚をするため、弁護士を挟んで連絡を取る。そのせいで、夫が突然訪れ、もう連絡してくるなと言い残し、本当に出ていく。
夫はヴィオレットより10歳ほど年上で、知り合ったのは彼女が10代のころ。彼の見た目の美しさに心を奪われ、彼も彼女に興味を持ち、すぐ共に暮らすようになり、妊娠した。が、彼の抑圧的な母親との対面、ヴィオレットを見下す態度、それに従属している夫に幻滅していく。それでも、彼女の唯一の幸せの源泉の娘が生まれ、踏切の管理人の仕事に就くことにする。

夫は仕事をせず、浮気を続けるけど、そのほうが都合がよかった。子供との時間が大切だったから。
が、義母が手続したサマースクールで悲劇が起き…。


ヴィオレットの現在と過去が交差しつつ、ジュリアンの母親のイレーヌとその不倫相手とのストーリー、フィリップの話も交互に出てくる。

先日シャルロット・ゲンズブールが撮影したジェーン・バーキンの映画を見たけど、そこでジェーンがセルジュのもとを去ったということを知った(ちなみに結婚はしていなかったらしい。ジェーンが断って)。で、ジェーンと親しかった日本人のエッセイによると、その後ジェーンは映画監督と付き合っていたけど、当時彼は既婚者だったらしい。つまり彼は二重生活を送っていたと。
フランスって、恋愛に「既婚」かどうかってほんと関係なさそう。

著者自身の体験もなかなかドラマチック。彼女は自分よりとても年上の映画監督に手紙を出す。しばらくして彼から返事が来て、ふたりは会う。彼は当時既婚者だったけど彼女に一目ぼれして、離婚する。その後、彼女も脚本で参加した、「男と女」という映画の続編が作られた。
フランスでは男女ともにどちらかがかなり年上だろうが、恋愛に年は関係ないのだな。


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