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【毎週ショートショートnote】半笑いポッキーゲーム

お題「半笑いポッキーゲーム」

【世紀の難題】(410文字)

動物園ではしゃぐ子どもを眺めながら、ベンチに座って「思考ゲーム」という本を開くと「半笑いポッキーゲーム」と書かれていた。数年前に流行った「トロッコ問題」にも悩まされたが、「半笑いポッキーゲーム」ほどではない。世紀の難題が容易く解けるはずはないが、ちょっと考えてみるか。

2人でポッキーの両端を咥え、同時に食べ始める「ポッキーゲーム」。食べ続けると両者の唇と唇が触れることになるが、それが嫌なら途中でギブアップする。どちらが先にギブアップするかで勝敗が決まるゲームだ。

まず頭の中に「半笑いポッキーゲーム」のイメージを描いてみた。半笑いは、口元が緩む。その状態でポッキーを咥えるのは至難の技なのに、さらに両端から食べ進めるなんてことが人間にやれるはずがない。

……まてよ。人間に? ゲームに参加するのは人間だけだなんて、誰が決めた? ふと顔を上げると、檻の中の猿がこちらを見ている。彼の口は少し緩んでいたが、口の端でうまくポッキーを咥えていた。まるで「おまえら人間はこんなこともできないの」と言っているかのように。

おわり
(2023/07/23作)

『たらはかに』様の7/23~7/29のイベントに参加させていただきました! これが二度目のチャレンジです。たらはかにさん、いつも楽しいお題をありがとうございます!

ちなみにトロッコ問題は、以前「ミステリと言う勿れ」の整くんがいい答えを出していましたね。曰く「そこにいるのが誰かによる」。私は家族や友だちが「いない」ほうにハンドルを切ると思いますが、お話のなかでは「いる」ほうにハンドルを切る可能性も匂わされたりしていて……こ、こわっ。


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