リーグ・アンからRBライプツィヒへ渡った3人のスター候補生 FOKUS Bundesliga #7
前書き
近年、ブンデスリーガは欧州トップリーグの1つであると同時に、ワールドクラスのタレントをもつ若手選手の「登竜門」のような役割も担っている。リーグにそのようなイメージをもたらしたのは、間違いなくドルトムントだ。
ミヒャエル・ツォルクSD時代のドルトムントは若手選手と契約し、高額な移籍金で海外の名門クラブへ売却する経営モデルで競争力を維持した。そして近年ブンデスリーガで台頭したRBライプツィヒもドルトムントと類似した経営モデルを採用している。
RBライプツィヒにとっての集大成は2023年夏の移籍市場だった。DFBポカール連覇を遂げた同クラブはチームの主力であったクリストファー・エンクンク、ドミニク・ショボスライ、ヨシュコ・グヴァルディオルを放出し、2億2000万ユーロとされる移籍金を手にしたのだ。しかし上記3選手に加えてコンラート・ライマーやマルセル・ハルステンベルクなど中核を担った選手が退団したため、同クラブには適切な補強が求められた。
そこでRBライプツィヒが注目したのが、リーグ・アンのクラブで活躍する若手のタレントたちだった。彼らの獲得に成功したことで、前シーズン3位であったRBライプツィヒは競争力を保ち、チャンピオンズリーグ出場権を維持した。本テキストではそんな2023/24シーズンのRBライプツィヒで活躍したフランスから来た3人の若手のスター候補生を紹介する。
ロイス・オペンダ #17
誕生日: 2000年02月16日
出身地: リエージュ, ベルギー
身長: 178cm 利き足: 右足
前所属クラブ: RCランス
2023/24シーズンの成績:
34試合 24ゴール(ブンデスリーガ)
8試合 4ゴール(チャンピオンズリーグ)
●今シーズンのハイライト
ロイス・オペンダのタレントの大きさを知るには、エティハド・スタジアムで挙げた2ゴールを見るだけで十分だろう。巧みな身のこなしでマンチェスター・シティのセンターバックを手玉にとり、ゴール右隅へ冷静にシュートを決めてみせた。
●これまでの経歴
クラブ・ブルッヘのユース出身のオペンダが脚光を浴びたのは2022/23シーズン。リーグ・アンで2位と躍進したRCランスのメンバーとしてリーグ戦21ゴールを挙げるなど、得点源として活躍した。
2023年の夏の移籍市場では、推定4300万ユーロとされる移籍金でRBライプツィヒへと加入。ブンデスリーガ第1節のレヴァークーゼン戦で得点すると、その後も得点を重ねて、シーズン計24ゴールを挙げた。
●プレースタイル
オペンダの特徴は、スプリントでの抜け出しと左右両足から正確なシュートを打つ能力を兼ね備えるところだ。重心の低さからフィジカル面も安定しており、抜け出されると止める手立てが少ない。
加えてオペンダは味方との連携も得意とする。リーグ戦で7アシストを記録するなど、ゴール前で味方に質の良いパスを供給できる。彼がティモ・ヴェルナーやベンヤミン・シェシュコよりも多くの出場機会を得られるのも納得だ。
2000年生まれのサッカー選手はスーパースター揃いだが、オペンダは同世代の選手たちにも引けを取らない特別な才能の持ち主だ。
シャビ・シモンズ #20
誕生日: 2003年04月21日
出身地: アムステルダム, オランダ
身長: 168cm 利き足: 右足
前所属クラブ: PSV(保有元: パリ・サンジェルマン)
2023/24シーズンの成績:
32試合 8ゴール(ブンデスリーガ)
2試合 2ゴール(チャンピオンズリーグ)
●これまでの経歴
2003年は多くのタレントある選手が生まれた年だが、シャビ・シモンズもその代表的存在の1人だ。カタルーニャのレジェンドと同名であるシモンズは2010年、当時7歳でFCバルセロナの下部組織ラ・マシアへ加入。欧州中のタレントが集まるチームでキャプテンを務めるなど活躍した。
バルセロナで将来を渇望されたシモンズは2019年、代理人のミーノ・ライオラ氏の助言もあり、フランス首都のクラブへ移籍する。パリ・サンジェルマンのトップチームで出場機会を得られないシモンズに転機が訪れたのは2022/23シーズン。母国の名門・PSVへレンタル移籍を果たすと、リーグ戦で19ゴール8アシストを記録し、エールディヴィジで得点王に輝いた。
世界中がシモンズの去就に注目するなか、彼が2023/24シーズンを過ごす新天地として選んだのはRBライプツィヒだった。2トップ下の1人としてポジションを得たシモンズは、プレーメイクから崩しまで関わる役割を担い、リーグ戦8ゴール11アシストを記録するなど活躍した。
●プレースタイル
シモンズのプレーは非常に攻撃的だ。ボールを持つと相手選手を1~2人引きつけたうえでドリブルではがし、味方にスペースを供給する。ボールタッチのミスがほとんどないため、ファウルなしでシモンズのドリブルを止めるのは非常に困難だ。
また相手がゴール前でマークを怠れば、右足から正確なスルーパスを出すことができる。シュートにも秀でており、ペナルティエリア内であれば、左右どちらの位置からでも得点することができるのが特徴だ。
シモンズが2024/25シーズンをどのクラブで過ごすことになるのか、世界中のサッカーファンが注目している。
カステロ・リュケバ #23
誕生日: 2002年12月17日
出身地: リヨン, フランス
身長: 184cm 利き足: 左足
前所属クラブ: オリンピック・リヨン
2023/24シーズンの成績:
32試合 1ゴール(ブンデスリーガ)
7試合 0ゴール(チャンピオンズリーグ)
⚫︎前書き
ヨシュコ・グヴァルディオルが9000万ユーロの大金を残してマンチェスター・シティへ去ったとき、彼の穴をRBライプツィヒが埋めるのは「不可能」だと思われた。しかし、マルコ・ローゼ率いるクラブはその予想を覆す。育成の名門、オリンピック・リヨンの逸材を引き抜いて見せたのだ。
⚫︎これまでの経歴
2011年、8歳でリヨンのユースへ加入したリュケバは、ライアン・シェルキやブラッドリー・バルコラ、マロ・ギュストなど同世代のスター候補生とともに活躍した。2021年8月にはペーター・ボス監督率いるトップチームでデビューを果たす。
2021/22シーズンの第17節・ボルドー戦以降、リュケバは当時19歳ながらリヨンの先発に定着。第19節・メス戦ではシェルキの蹴ったコーナーにヘディングで合わせてリーグ戦初ゴールを記録した。2022/23シーズンもリーグ戦33試合で先発出場する活躍を見せたことで、リュケバに欧州中から熱視線が向けられるようになる。
結果、3400万ユーロとされる移籍金でリュケバを獲得したのはRBライプツィヒだった。若手逸材の揃うドイツの新興クラブでもリュケバはその能力を遺憾なく発揮する。リーグ戦24試合で先発で出場するなど、ローゼ監督からの信頼を獲得してみせた。
⚫︎プレースタイル
リュケバはセンターバックとして非常に高い総合力を備える選手だ。184cmとディフェンダーとしては小柄だが、地上での1対1と空中戦のどちらにも強く、敏捷性にも秀でている。しなやかな体躯を活かして、高い位置でボールを奪うプレーは印象的だ。
またリュケバの優れているのは左足から前線に供給する質の高いフィードだ。中央にも左サイドにも、速くて正確なパスを送ることができる。加えてドリブルで持ち上がることやロブパスも選択肢にあるため、味方の崩しに関わることができるのも特徴だ。
リヨンユース出身の左利きのセンターバックといえば誰もがサミュエル・ウムティティを思い浮かべるだろうが、リュケバもまたその系譜に連なる「スターの原石」である。
後書き
2016/17シーズン、ブンデスリーガ初昇格を果たしたRBライプツィヒがバイエルン・ミュンヘンと優勝争いを演じたことは多くのファンにとって衝撃的だっただろう。高い位置からの猛烈なプレス、奪回後の速攻、若手主体のチームが見せる爆発力とアイデアは、ブンデスリーガに新たな潮流をもたらした。
しかし彼らも大きな変化を体験してきた。チームの強化担当を担った奇才ラルフ・ラングニックがクラブを去り、2024年冬にはティモ・ヴェルナーとエミル・フォルスベリが移籍を決断した。2016/17シーズンに昇格を果たしたときのメンバーはペーター・グラーチ、ヴィリー・オルバン、ユスフ・ポウルセンを残すのみである。環境が変わるなかでRBライプツィヒがどのような発展を遂げるのか、楽しみでならない。
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