猫町のような、占い師さんのこと
2020年、コロナ禍最初の年のことです。
4年ほど付き合ったり離れたりしていた彼と正式に別れ、2人の男性と、それぞれ短期間デートした年です。
夏の終わり、その2人目の男性と、定期的に会っていた時期のことです。彼は、以前にもふれた、音楽理論の教授です。
わりとよく行く繁華街を1人で歩いていると、「占い」の看板が見えました。吸い寄せられるように入っていくと、60代と思われる女性占い師が座っていました。
チリチリのカーリーヘア、真っ赤なジャケット、ラメがぎらぎら光る黒レースのマスク、濃い紫のアイシャドウ。小柄で折れそうな程細いその体は、なんとも言えない迫力をまとっていました。
その頃デートしていた彼とのこと、将来のことを、漠然と見てもらいました。
その占い師の方は、歯に衣着せぬといった具合に捲し立てました。
「あなたね、本来は、そんな服着てるような人じゃないのよ!」
(シンプルだけどさりげなくそそるような、身体のラインが出るワンピースにヒールサンダルで、スタイルよく見せるような格好でした)
「男に依存したような、セックスが重要みたいな事言うけど、あなた本当は、全然そういうキャラクターじゃないわよ!?」
要約すると、自分じゃないものを演じてないで、本来の自分で、人生をちゃんと生きなさい、という内容でした。
「お試し20分で2000円」と書いてあるのに、20分過ぎても捲し立てていたので、おずおずと、「あの、時間……」と言うと、「追加料金なんて請求しないから、ちゃんと聞きなさいよ?!!」とさらに続け、倍以上の時間が経ったあたりで、約束通り2000円だけお支払いをしました。
その時は、的を得ていないなあと思いましたが、今思い返すと、彼女の言う通りでした。
そして、あれから同じ大通りを何度も通りましたが、彼女のいた場所を見つけることができません。萩原朔太郎の短編に、そんなのあったなあ、と思いつつ。単に私が見つけられないだけかも知れませんが。
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さて、私は、かつて、愛着トラウマに無自覚だった時分、悩んで行き詰まると、占いを利用していました。
それだけではなく、ウェブ上にある占いも、何種類とチェックしていました。有料のものに課金したこともありますし、夜中に電話占いを試したこともあります。
そしてそれを、恥ずかしいことだと、誰にも言わず秘密にしていました。
愛着障害の典型的な症状として、感情が見えず頼りは論理的思考のみ、というものがあります。
人間は感情の生き物で、思考だけで答えが見つかるわけがなく、わからない、わからない、となった結果、そういうものにすがりたくなったのでしょう。
自分や目の前の相手の感情を認識できず、いくらでも直接会える男性について、赤の他人の占い師に、「彼はどう思ってますか。彼はどうしたいですか。」と問うなんて、ちょっと普通じゃないと今は思いますし、当時も頭ではわかっていました。それでも、何か聞いて安心してみたいと、それ程に、切羽詰まっていたのだと思います。
見捨てられ不安も、要因かと思います。
ダメなら早めに知って、心の準備をしておきたいとか。見込みがあるなら、もうちょっと努力を重ねてみようとか。
振り返ると、本当に病的だな、と、、
健康な人なら、その都度楽しい時間を重ねていくところを、無駄に怯えて、答えを先に求めたいとか。。
これでは、まともなパートナーシップなんて、無理なわけです。