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不安な夜をたゆたう君から目が離せないー『ティファニーで朝食を』

ホリー・ゴライトリーは魅力的だ。

翻訳した村上春樹氏が述べているように、オードリー・ヘップバーンのイメージと重ね合わせることは「もったいない話だ」。

後で映画を見たが、内容は原作とは全くの別物だった。映画を否定する気はないが、原作は昨年読んだ本の中で一、二を争う面白さだったので紹介したい。

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小説家志望の都会に出てきたばかりの主人公は、はた迷惑な女の子、台風の目のようなホリーと出会う。というか、彼女は主人公のアパートの下の階の住人なので彼女に巻き込まれるというか。

序盤は夜のシーンしか描かれていない。ホリーは基本、夜行性なんだろう。めちゃくちゃしてるし、結構自分語り多めだけどどこかつかめない(つかませてくれない)ホリーの、謎というか、魔性というかを知りたいと、いつのまにか心を掴まれてしまっている。ホリーのペースに巻き込まれる疾走感が逆に気持ちがいい。すっかり目が離せなくなっている。

村上春樹氏が言うように本当に設定から忠実に「もう一度映画化して」もらえたらと思わずにはいられない。
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個人的に好きだった場面は、映画版では全てカットされたり、改変が加えられて別物になってしまっていた。

以下、好きなところという名のネタバレ。(読んだことのない方は読んでからの方がいいかも?)

・ホリーはホロスコープを見つめて悩んでいるような女の子なんですよ。彼女のゴミから主人公が生活実態を読み取る、という描写でちらっと出てきます。この設定は映画では全く省かれているものですが、ここは個人的にこの作品の肝だと思っています。後半で、このことに対してホリー本人が言及しています。自分で不安な心を占いとかにすがりながら満たそうとしている、揺らぎながら進んでいくホリーに私は共感してしまうんです。

・最後の猫とのシーン。映画では大幅な改変が加えられていましたが、原作のままの方が好きです。原作のままの方が良いです。そういう選択がホリーらしいというか、ホリーの印象的な言葉のままに。

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イラストは自分なりに原作から読み取ったイメージでホリーを描きました。オードリー・ヘップバーンが代名詞のようになっていますが、やっぱり原作のホリーの方も私は良いなあと思うのでオードリーとは別のホリー像を描かせていただきました。

もう一度映画化するとしたら、たぶん挿入歌は結構ホリーが歌っているカントリー調の曲ばっかりだと思うけど、超個人的にThe Beatlesの While My Guitar Gently Weepsもどっかで入ってくるといいなあなんて思ったりします。

まだ読まれたことのない方は、ぜひこの機会に原作版のホリーにも会ってみてください。

https://www.amazon.co.jp/ティファニーで朝食を-新潮文庫-トルーマン-カポーティ/dp/410209508X

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