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次のステップへ駒を進めるタイミングがやってきたようだ

幅を広げて思い描く。

とある人にこれからの働き方について話をきいてもらったときにもらった言葉。あれは去年の夏だった。

どの選択をすればいいんだろう、私はこれからどこへ向かって進めばいいんだろう。

そんな漠然とした問いかけをぼそっと口に出してみる。この人なら答えに近づくヒントを知っているかもしれない、そんな淡い期待を抱いていたのだろう。

その期待に気づかれてしまったのか、その人はよしヒントを授けようと言わんばかりに私に次の言葉をくれた。

どの選択をするのか、あなたはそれを知っている範囲で探そうとしている。いまは範囲を広げるためにカケラを拾い集める段階、まだまだ安定を求めなくてもいいんじゃないのかな。未知の世界でもチャレンジしてみる、ころんでだっていいんだから。

いまよりも知っている範囲を広げてから、自分にとっての理想の働き方を考えてみる。

幅を広げて思い描く、だよ。

その言葉を頭の片隅にそっと置き、とりあえずいまは目の前のことを頑張ろうと私は日常と向き合う日々へと戻っていった。そして、あっという間に月日は流れていき次の夏がやってこようとしている。

あと数日、梅雨の時期と呼ばれがちな六月を迎えると同時に、私はいまの会社にきて丸二年となる。

『目の前のことを頑張る』の次に置かれたマスが、『次のステップを考える』なのであれば、私はこのタイミングを今か今かと待っていたかのようにぽんっと駒を進めてしまった。

それはここ数日の出来事。してしまった、こう表現するのはそれがあまりにも突然の変化だったからだ。

まだしばらくは、そう思っていたはずなのに。大きな壺が水でいっぱいになったら次へ進もう、それまでは頑張ってみる。私はこの二年、手に持った小さなバケツをえいやえいやと中身を確認せずに注ぎ込んでいた。

するとはっと気づいたときには、壺から溢れる一歩手前まできてしまっていたよう。年明けから今日まで、いつになったら落ち着くんだろうが口癖だったけれど、仕事が落ち着く前に私の心が一旦停止してしまった。

突然の出来事に心はついていけてない。これが本音。

仕事にただ追われるなんてこともなかった日々が色彩を無くしたかのように、つまらないものへと変わってしまった。

働き方をアップデートするタイミングがやってきたんだ。

きっとそうだ、そうに違いない。そんなふうに思えたらちょっとばかり心が軽くなった。でも、じゃあどうしようか、そうやって漠然とした問いを投げかけた途端わたしは頭を抱え込んでしまう。

探しても探してもどこにもないパズルのピースをどうにかして見つけようともがく日々。そしたらふと冒頭の言葉が浮かんできた。

幅を広げて思い描く。

そう、私は幅を広げたいんだった。だって、まだ知らない世界だらけだから。いまの会社にきて二年、『ごくふつう』の会社員でいることが当たり前になってしまっていたけれど、そんなことない。

未来を想像してわくわくしていたい、理想の働き方に近づくために私はまだチャレンジしてみたい。うまくいくかどうかなんて分からない、タイミング間違えたかなと後々思ってしまうかもしれない。

でも、あのときチャレンジすればよかった、そう人生を振り返ったときに後悔だけはしたくない。

私の駒はいま『次のステップを考える』で止まっている。

このまま色彩をなくしてしまった日々を淡々と進むことだってできる、でも心はそうはしたくないと主張している。もがく日々はちょっと苦しい。でも駒を次へと進めるためにはきっと必要な時間なんだろう。

自分で答えを出したいから、まわりに支えてもらいつつも最後はちゃんと自分の手で駒を持ち、進めていきたいから。

自分にとって理想の働き方を見つけていくために、いまの私に必要なのは新しい世界へ踏み出してみること。まだまだ大丈夫、遅くなんてないから。

どの選択をすればいいんだろう、私はこれからどこへ向かって進めばいいんだろう。いまも相変わらず悩んでいるけれど、きっと大丈夫、そんな自信がどこからか湧いてくる。

あとは思い切りだけ、駒を進められるのはいつだって自分自身なんだから。

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