見出し画像

【読書感想】ビジネス心理学の成功法則100を1冊にまとめてみました/内藤 誼人

「ビジネス心理学の成功法則100を1冊にまとめてみました」こちらの本、読みました。

最近「行動経済学」「認知バイアス」といった心理学に関係する本をいくつか読んでいます。
行動経済学も認知バイアスも仕事に活用できそうなイメージがけっこうあり、そういった流れで本書はかなりストレートなタイトルだったので読んでみました。


本の内容

まずはAmazonから本の内容を抜粋します。

組織心理学、経営心理学、経済心理学、広告心理学、消費者心理学、産業心理学など、ビジネスに関する世界最先端の心理学研究100本のエッセンスを1冊に凝縮!「イエス」と言いやすくする交渉の裏ワザ、買いたくなる商品の仕掛け、口下手でもうまくいくプレゼンのコツなどなど。“科学的に正しい”人を動かす方法をビジネス心理学の第一人者が伝授。

こんな感じの本です。

自分がつい選びがちな、研究データを基にして書かれた本でした。
研究データを交えつつ、100本もあるので1本1本は短めで読みやすいです。

著者情報

本書の著者である「内藤 誼人」でネット検索したところ、いくつかヒットしました。
リンクしておきます。

いくつか引用と感想

「自分で作りたい」欲求を満足させる

すでに出来上がっているホットケーキよりも、水や卵を加えて自分で作ったホットケーキのほうがおいしく感じるのはなぜでしょう。その理由は、「自分で作ったんだ!」という気持ちが満足感を高めるせいです。
人間には、「クラフト欲求」のようなものがあって、自分で何かを作ったほうが嬉しさや喜び、興奮といった感情を味わうことができるのです。
(中略)
オーストリアにあるウィーン経済大学のニコラス・フランクは、Tシャツ、スカーフ、スマホカバーなどを対象に、どうしてカスタム商品に人気があるのかを調べてみました。
すると、「自分が設計者になったように感じるから」という答えが70%にもなることがわかりました。
また調べてみると、カスタムの度合いが大きくなるほど満足度も高くなることがわかりました。ただ色を選ぶだけでなく、布の材質、デザインなど、カスタムできる自由度が増えるほど、お客さまの満足度は高くなっていくようです。

今回の引用を読んだ時、以前の記事で引用した「IKEA効果」を思い出しました。

【読書感想】行動経済学の超基本 - 自分でつくると価値が上がる:IKEA効果

「クラフト欲求」と「IKEA効果」は関連性が高そうです。

自分でカスタムしたりすることで「クラフト欲求」が満たされ、自分でカスタムした結果その商品に愛着が湧き、実際以上に高く評価してしまう心理状態(IKEA効果)になり、満足度の高い購買になるのかなと。

ただ私は割とカスタムの自由度が高い店は避けている気がします。
パッと浮かぶ例は「スタバ」とか「サブウェイ」とか。

こういった店のカスタムが「クラフト欲求」に該当するかは分かりませんが、どちらの店もほとんど利用することがないです。
もっとオーダーがシンプルそうな店を利用していることが多いです。

プレゼンでは、見本を用意しておく

私たちの知識は、人によって大きく異なります。お互いの知識には差があるので、自分がよく知っていることでも、相手はまったく知らない、ということもよくあります。
エンジニアと営業の人には、お互いの知識に差があります。
そのため、エンジニアと営業の人が一緒に集まって仕事をしようとすると、お互いに話していることがよく理解できず、意思疎通がうまくいきません。
では、どうすればうまくいくのかというと、目に見える形の図面、模型、試作品などを準備しておくのです。はっきりと、目に見える形にしておけば、余計な説明をしなくてすみますからね。
マサチューセッツ工科大学のポール・カーリーは、自動車産業の新車開発チームを対象に研究を行っているのですが、エンジニアやデザイナーなど、専門が異なる人たちは、そのまま話し合いをしようとしても、お互いに会話がうまくかみ合わないことがわかりました。
ところが、見本や模型を使って話し合いをさせると、話し合いもうまくいったそうです。「最近の流行は、スタイリッシュな流線形をしたモデルで・・・」などと口で説明してもいまいちよくわかりませんが、「だいたい、こんな感じの車」といって見本の模型なり、図面でも見せてあげれば、「ああ、なるほど」と一発で理解できます。
(中略)
口下手な人ほど、自分で説明しようとするよりは、むしろ写真や図面で人を説得したほうがうまくいくかもしれませんよ。

「エンジニアと営業」という組み合わせは、けっこうよくあります。

私はエンジニアの立場でそういった場に遭遇することが多いですが、たしかに図面、模型、試作品などを準備しておくと余計な説明をしなくても良くなります。

私の場合、よく準備するのはシステムのプロトタイプです。
なるべく早い段階でシステムのプロトタイプ(実際のイメージに近い動くもの)を使って打ち合わせすると、議論が加速する感じがあります。

ただ、「議論が加速=スムーズに進む」ではない感じもあります。
議論が加速して、要件が増えたり変わったりします。

後から要件が増えたり変わったりするよりは、なるべく早くそういった情報をキャッチできるのは良いことではあります。
ただこちらとしてはイメージを共有したいだけというか、認識のズレがなるべく無いように進めるためのプロトタイプだったりします。

その意図から脱線している感じがして、なんだかなぁと思ったりもします。

そしてプロトタイプをお披露目するタイミングって、意外と難しかったりもします。
プロトタイプの作成に時間を掛け過ぎるのも良くないですし。

とはいえ、後から要件が増えたり変わったりは揉めることが多いです。
そういったトラブルを未然に防いでいると思えば、プロトタイプの存在意義は大いにあります。

好かれる人は、相手と同じ言葉を使う

お客さまに好かれる店員さんは、お客さまが使う言葉を、そのまま使います。決して、言い換えたりはしません。
(中略)
オランダにあるラドバウド大学のリックファン・バーレンは、レストランでこれを実験的に検証してみました。
オランダ語では、フライドポテトを「フリット」というのですが、お客さまがフライドポテトを注文したとき、あるお客さまには、「はい、フリットお1つですね」とそのままの言葉をくり返しました。
ところが別のお客さまには、同じ意味なのですが、違う言い方の「パタット」を使って、「はい、パタットでございますね」と言ってみたのです。
それから店員がお客さまからいただけるチップを比較してみると、お客さまと同じ言葉を使ったときのほうが140%もチップが多かったそうです。
お客さまと同じ言葉を使ってあげれば、何となく親近感がわきます。好ましい人だと思ってもらえます。ところが、違う言葉を使うと、「なんとなく肌が合わない」と感じさせてしまうのです。

仕事上での打ち合わせでは、なるべく認識のズレが発生しないように相手の話の内容を自分なりに咀嚼して、内容を自分なりの言葉に言い換えて受け答えしています。
ですが今回の引用を見ると、あまり良い印象を持たれてないかもしれないですね…

ただ業界的に、妙にカタカナ語が多く飛び交いますし、新しい用語もバンバン生まれます。
なので用語の解釈や捉え方が若干違ったりするケースもけっこうあります。

1つ前の引用でも「プロトタイプ」と表現しましたが、日本語訳したら「試作品」になるかなと思います。
引用で試作品と書かれているので、その用語をそのまま使えばいいところを、わざわざプロトタイプと言い換えています。

実際、試作品と表現することに馴染みがなく、プロトタイプと表現することがほとんどです。
1つの例ではありますが、必要以上にカタカナ語に言い換える感じがあります。

そんな状況で好感度を優先して言い換えをしないで進めると、認識ズレが発生する可能性があるかもなと。
そんなに頻繁には認識ズレは起こらないとは思いますが、言い換える習慣は継続しようかなと思いました。

ですが出来れば好かれた状態の方がスムーズに事が進みそうなので、過度の言い換えには気を付けつつ。

相手の仕事を中断させても声をかけるメリット

「○○さんに聞きたいことがあるんだけど、忙しそうだなあ・・・」
「今、声をかけるのは邪魔かなあ・・・」
「どうしよう、確認しておきたいけど、後のほうがいいのかなあ・・・」
このように、他人に声をかけづらいときがあります。特に、相手が真剣な顔をして仕事に取り組んでいるときなど、声をかけるのをためらってしまうのがほとんどだと思います。
けれども、心理学のデータを見ると、「声をかけたほうがいいよ」ということが明らかにされています。相手の邪魔をしても、大丈夫なのだというのです。
ミネソタ大学のメリー・ゼルマー・ブルーンは、医薬品産業で働く、3つの企業の48チームについて調査を行ってみました。
相手の仕事を中断させて、質問をしたり、意見を言ったりすることは、はたして有効なのかそうでないのかを調べるのが目的です。
細かいお話は抜きにして、結果はどうなったのかというと、「邪魔をしてもOK」という明確な結論が導かれました。なぜかというと、たとえ相手にとっては仕事の邪魔になっても、それによって間違いを未然に予防できたり、お互いに新しい知識や手順を習得できたりするからです。

「些細なことを確認すべきか」「声をかけるべきか」と迷うことは、よくあります。

結果として「些細なことだし後で良いか」となり、そのまま声をかけないことが多いです。
そして「後で良いか」としたのに、結局その件に関して声をかけることは一度もなく…といった流れになりがちです。

今回の引用は、そういったタイプの人間が声をかけるか迷った時に少しだけ背中を押してくれそうな内容で良いなと。

ただ「邪魔をしてもOK」という文言だけ受け取って、どんどん些細なことをノーブレーキで提案したり確認したりするのは良くないよなぁとも思ったり。

元々声をかけるのにあまり抵抗が無い人が、より声かけが増えるのはあんまりかな…と。
それだとちょっと過度なコミュニケーションな気がします。

そういった声かけに迷うタイプの人が、提案したり確認したりする頻度が少しだけ増えるだけで充分な気がします。

インフラ計画は、世界的に予算オーバー率100%

人間なら、だれでも失敗したら、次は失敗しないようにしよう、と思うのが普通ですよね。ところが、何度失敗をくり返しても、その失敗からまったく学ぶことをしない業界があると聞いたら、読者のみなさんも驚くのではないでしょうか。
デンマークにあるオールボー大学のベント・フライバーグは、世界五大陸20か国のインフラ計画258件を分析してみたことがあります。調べたのは、当初の予算をオーバーするかどうか。
びっくりすることに、予算オーバーはフライバーグが調べた258件中258件で見られました。予算オーバー率は、驚異の100%(笑)。いやあ、なかなか100%という数値はお目にかかれませんよ。
しかも、フライバーグは70年間にわたるインフラ計画を調べたのですが、予算オーバーはまったく減少していないことも突き止めました。つまり、70年間で、反省も、学習もなされていなかったのです。
すべてのインフラ計画では予算オーバーが見られるのですが、細かく見ていくと、道路の予算オーバーは20%で、橋・トンネルでの予算オーバーは34%、鉄道が45%といった違いはあります。

私も工数見積をちょくちょくするので、今回の引用は興味深かったです。
最初の見積をオーバーすることも、よくあります。
引用にあるインフラ計画と、私が見積するシステム開発計画では毛色が異なるかもしれませんが。

見積時点では必要な作業を漏れなく洗い出したつもりでも、計画が進むにつれて想定外の作業が発生するのはよくあることです。
よくあることなので、見積時点でバッファを持たせたりもします。
ですが、結局そのバッファも消費しきってオーバーしてしまうことが多いんですよね…難しい。

引用すると長くなってしまうので割愛したのですが、規模が大きければ大きいほどオーバーが膨らんでしまうそうです。それにも納得です。
こちらもそれを想定してバッファを多めに持たせるようにするのですが、やはりそのバッファを消費しきってオーバーしてしまうことが多いんですよね…。

じゃあバッファを特盛にすれば…となるのですが、顧客先で使用するシステム開発だったりするわけで、あきらかに多く感じる見積を提出するわけにもいかず。

結局は、思い浮かぶ限りの必要な作業を全て洗い出し、「これだけの作業が発生するので、これだけの金額が必要です。」に納得感のある見積(金額)に着地するわけです。難しい。

「楽観的な人は成功する」は本当か

マーティン・セリグマンという超有名な心理学者の書いた『オプティミストはなぜ成功するか』(講談社)という本があります。
オプティミスト、すなわち、「物事を楽観的に考える人」ほど、ビジネスであれ、政治家であれ、アスリートであれ、研究職であれ、成功しやすいというのです。すごいですね。
書店のビジネス書コーナーに行きますと、「明るく考えよう」「前向きな考えをしよう」という感じのタイトルの本は、いくらでも見つけることができます。
けれども、本当に楽観的に考えているだけで、万事がうまくいってしまうものなのでしょか。
米国テキサス・クリスチャン大学のキース・ヒミーレスキは、ベンチャー起業家、男性163名、女性38名(平均52歳)にお願いして、楽観主義かどうかを測定する心理テストを受けてもらいました。なお、彼らは、米国の40の州で114の職種の仕事をしています。さまざまな業種からベンチャー起業家を集めたのですね。
ヒミーレスキは、起業家たちに心理テストを受けてもらう一方で、ここ2年間の自社の収益の伸びと、従業員数の増加についても教えてもらいました。
すると、驚くべきことがわかりました。「オプティミストほど成功する」どころか、むしろ逆に、「オプティミストのベンチャー起業家の会社ほど、業績は悪い」ということがわかったのです。

私はどちらかというと悲観的な人間なので、楽観的になろうと頑張ったことが過去に何度かあります。ですが結局、悲観的なままです。
もちろん楽観的に考えるシチュエーションもありますが、ベースは悲観的です。

今回の引用は、「楽観的になれば良いってもんじゃない」というニュアンスを感じました。
引用が長くなってしまうので割愛しましたが、悲観的なことのメリットが書かれている部分もあり、悲観的な性格を肯定されている感じがして良いなと。

とはいえ悲観的すぎるのもなんだか良くないですし、引用にもあるように楽観的すぎるのも良くなさそうです。

結局は楽観・悲観の両方を持ち合わせている状態が良いのかなと。
誰しもが両方持ち合わせているとは思いますが、楽観と悲観をうまく行き来して、極端すぎないことが良いのかなと。

もしくは、組織であれば楽観タイプと悲観タイプの人がそれぞれ補い合うのが良さそうです。

楽観・悲観それぞれに良いところがありますし、悲観的な人(自分含む)が無理に楽観的になろうとする必要はないのかもなと思いました。
ただ、楽観的な人が悲観的になろうとすることはあまりなさそう(偏見ですが)。

おわりに

ということで「ビジネス心理学の成功法則100を1冊にまとめてみました」に関してアレコレ書いてみました。

今回の記事で引用したのは、

  • 「自分で作りたい」欲求を満足させる

  • プレゼンでは、見本を用意しておく

  • 好かれる人は、相手と同じ言葉を使う

  • 相手の仕事を中断させても声をかけるメリット

  • インフラ計画は、世界的に予算オーバー率100%

  • 「楽観的な人は成功する」は本当か

の6つでした。

「プレゼンでは、見本を用意しておく」に関して。

厳密にはプレゼンではないですが、私も打ち合わせに見本(プロトタイプ)を用意していくことが多いので共感しました。

見本の用意なしで打ち合わせに臨んで、会話がかみ合わずに空中戦になってしまうこともたまにあります。
見本の用意に時間を掛け過ぎるのも良くないですが、見本のあるなしで打ち合わせに対する熱の入り方が変わったりします。
けっこう大事なことだと思っています。

「相手の仕事を中断させても声をかけるメリット」に関して。

こういった内容は遠慮がちな自分にとって、ありがたい内容です。

引用に「細かいお話は抜きにして」とありましたが、個人的にはもう少し研究データの内容を詳しく書いてほしいなぁと思ったり。

とはいえ、少しだけ背中を押してくれる感じが良かったです。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

「仕事」関連の読書感想をマガジンにまとめています。
こちらも良ければぜひ。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?