第34回カレリア語【ヴィエナ方言】 独学記録 -動詞の過去・否定形と能動/受動過去分詞
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カレリア語のうち、本カレリア方言-ヴィエナ方言を学ぶページです。
方言分類に関してはこちらの記事をご参照ください。
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前回は、動詞の過去形について学びました。覚えることが多くて大変でしたね…。
今回のテーマは過去の否定形ですが、これまたなかなかに厄介です。頑張りましょう。
動詞の過去・否定形と能動/受動過去分詞
過去の否定形の作り方は、今まで学習した現在・過去形の作り方とはまったく異なります。
現在・否定形で使用した否定動詞(en, et, ei, emmä, että, ei )は過去形に関しても使いますが、それと結びつく動詞は能動/受動過去分詞と呼ばれる形になります。
基本的には能動過去分詞と結びつきますが、3人称複数(hyö)には受動過去分詞が使われます。
能動過去分詞と受動過去分詞は、語尾が違うものの作り方はほとんど同じです。ただし、ところどころで異なる点もあるのでその辺りはよく確認しておきましょう。
能動過去分詞
能動過去分詞の印は、基本的には -nun/nyn, あるいは単に -n ですが、動詞のタイプによっては少し違う形になる場合があります。
では、動詞のタイプ別に作り方を確認していきましょう。
①能動過去分詞 - タイプ①の動詞
タイプ①では、強階程の現在語幹に -n をつけます。
elyä > 現在語幹 elä- > 能動過去分詞 elän
šanuo > 現在語幹 šano- > 能動過去分詞 šanon
kyšyö > 現在語幹 kyšy- > 能動過去分詞 kyšyn
lukie > 現在語幹 luke- > 能動過去分詞 luken
②能動過去分詞 - タイプ②の動詞
タイプ②では、現在語幹に -nun/nyn をつけます。
viijä > 現在語幹 vie- > 能動過去分詞 vienyn
juuvva > 現在語幹 juo- > 能動過去分詞 juonun
tuuvva > 現在語幹 tuo- > 能動過去分詞 tuonun
šuaha > 現在語幹 šua- > 能動過去分詞 šuanun
不定詞が3音節以上あり最後が -ija/ijä で終わっている動詞では、語幹は最後の -ja/jä を取り除いて、代わりに -če という音を付け加えた形でした。
ikävöijä > 現在語幹 ikävöiče-
ただし能動過去分詞をつくる際には、不定詞から -ja/jä をとり除いた形にそのまま -nun/-nyn をつけます。
ikävöijä > ikävöi- > 能動過去分詞 ikävöinyn
③能動過去分詞 - タイプ③の動詞
タイプ③では不定詞から最後の2文字をとった形、つまり子音語幹に -nun/-nyn をつけます。現在語幹では e という音を加えましたが、過去分詞を作るときには不要です。
さらにタイプ③では -nun/-nyn の最初の音である n が、直前の子音と同じ音になります。
männä > 子音語幹 män- + nyn > 能動過去分詞 männyn
tulla > 子音語幹 tul- + nun > 能動過去分詞 tullun
purra > 子音語幹 pur- + nun > 能動過去分詞 purrun
noušša > 子音語幹 nouš- + nun > 能動過去分詞 nouššun
④能動過去分詞 - タイプ④・⑤・⑥の動詞
タイプ④、⑤、⑥では、不定詞の最後の -ta/-tä をとり、-nnun/-nnyn をつけます。 n が一つ多くなるので注意が必要です。
vaššata > vašša- > 能動過去分詞 vaššannun
varata > vara- > 能動過去分詞 varannun
šiivota > šiivo- > 能動過去分詞 šiivonnun
huhuta > huhu- > 能動過去分詞 huhunnun
ruveta > ruve- > 能動過去分詞 ruvennun
keritä > keri- > 能動過去分詞 kerinnyn
受動過去分詞
さて、今度は hyö の過去形に用いる受動過去分詞の作り方を見てみましょう。能動過去分詞の印は、-tu/ty, あるいは -ttu/tty です。やはり動詞のタイプごとに確認していきましょう。
①受動過去分詞 - タイプ①の動詞
タイプ①では、弱階程の現在語幹に -ttu/tty をつけます。
elyä > 現在語幹 elä- > 受動過去分詞 elätty
šanuo > 現在語幹 šano- > 受動過去分詞 šanottu
kyšyö > 現在語幹 kyšy- > 受動過去分詞 kyšytty
lukie > 現在語幹 luke- > 受動過去分詞 luvettu
②受動過去分詞 - タイプ②の動詞
タイプ②では、現在語幹に -tu/ty をつけます。
viijä > 現在語幹 vie- > 受動過去分詞 viety
juuvva > 現在語幹 juo- > 受動過去分詞 juotu
tuuvva > 現在語幹 tuo- > 受動過去分詞 tuotu
šuaha > 現在語幹 šua- > 受動過去分詞 šuatu
-ija/ijä で終わり、語幹で-če という音が発生する語は、能動過去分詞同様、不定詞から -ja/jä をとり除いた形にそのまま -tu/-ty をつけます。
ikävöijä > ikävöi- > 受動過去分詞 ikävöity
③受動過去分詞 - タイプ③の動詞
タイプ③も、能動過去分詞と同じような作り方をします。不定詞から最後の2文字をとった形、つまり子音語幹に -tu/-ty をつけます。
männä > 子音語幹 män- > 受動過去分詞 mänty
tulla > 子音語幹 tul- > 受動過去分詞 tultu
purra > 子音語幹 pur- > 受動過去分詞 purtu
noušša > 子音語幹 nouš- > 受動過去分詞 nouštu
④受動過去分詞 - タイプ④・⑤・⑥の動詞
タイプ④、⑤、⑥では、不定詞の最後の -ta/-tä をとり、-ttu/-tty をつけます。
vaššata > vašša- > 受動過去分詞 vaššattu
varata > vara- > 受動過去分詞 varattu
šiivota > šiivo- > 受動過去分詞 šiivottu
huhuta > huhu- > 受動過去分詞 huhuttu
ruveta > ruve- > 受動過去分詞 ruvettu
keritä > keri- > 受動過去分詞 keritty
動詞の過去・否定形
ここまでに作り方を確認した能動過去分詞、受動過去分詞を、否定動詞と組み合わせることによって過去の否定形を作ることができます。
Mie en elän Karjalašša. 私はカレリアには住んでいなかった
Šie et juonun mitänä. あなたは何も食べなかった
Hiän ei tullun kylyh. 彼はサウナに来なかった
Myö emmä šiivonnun eklein. 私たちは昨日掃除をしなかった
Hyö ei mänty töih. 彼らは仕事に来なかった
過去・否定形を動詞のタイプごとに一覧にしておきます。
例文
Mie mänin lomalla kyläh. Mie i pereh kävelimä mečäššä, keräsimä marjua ta šientä. Kylvettih järvie ta venyttih rannalla. Oli hyvyä lomua!
私は休暇に田舎へ行きました。私と家族は森を散歩し、ベリーやキノコを集めました。湖でサウナに入り、岸辺で横になりました。素晴らしい休暇でした!
Mie en männyn lomalla kyläh. Mie ta pereh emmä kävellun mečäššä, kerännyn marjua ta šientä. Ei kylvetty järvie ta venytty rannalla. Olin vain koissa ta opaššuin. Oli ikävyä lomua.
私は休暇に田舎には行きませんでした。私と家族は森を散歩しなかったし、ベリーやキノコを集めませんでした。湖でサウナにも入らず、岸辺で横になってもいません。私はただ家にいて、勉強していました。退屈な休暇でした。
応用
Mie tahon matata Karjalah ta Šuomeh.
En voinun lähtie Japanista koronan takie tätä pari vuotta. Mie ajattelin lähtie matkah Karjalah ta Šuomeh tänä vuotena. Ka Venäjä alko hyökätä Ukrainah täššä tuiskukuušša. Šen takie nyt ei voitu ulkomailta matata Venäjällä. Tietyšti en voi lähtie Venäjän puolen Karjalah, ta en tiijä, konša voin matata šiih.
Karjala on Šuomen ta Venäjän rajalla.
私はカレリアとフィンランドに旅行に行きたいです。
コロナのせいでこの2~3年、日本から旅立つことができませんでした。今年はカレリアとフィンランドを旅行しようと思っていました。しかし、今年の2月にロシアがウクライナに侵攻しました。そのため、今、外国からロシアに旅行することができなくなりました。当然私も、ロシア側のカレリアに行くことはできませんし、いつ行けるようになるかも分かりません。
カレリアはフィンランドとロシアの国境沿いにあります。
学習後のつぶやき
前回の動詞の過去形は、本当に作り方をまとめるだけで大仕事でしたが、過去の否定形は、割と分かりやすいですね。否定動詞と過去分詞を組み合わせるのはフィンランド語と同様です。3人称複数形にだけ受動の過去分詞を用いるのは、そもそも3人称複数形はカレリア語では消滅した受動形現在形の形を受け継いでいるから、と理解していれば迷うこともありません。
とはいえ、過去形とあわせてしっかり覚えこむには、実際に例文を書いて書いて、書いていくしかありませんね。頑張ります。
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