マンハッタンコードという会社を5年やってみたので振り返りしてみた
2016年3月にマンハッタンコードという会社を設立して早いもので5年目となりました。2020年9月に第5期の通期決算を終えて、全ての月での営業利益黒字を達成しました。恥ずかしいやらかしもたくさんあるのですが、素直に振り返りを記事にしてこれから起業される皆様の何かになればと思っています。
1、株式会社マンハッタンコードとは
スマートフォンアプリケーションサービスの開発に特化した会社です。
事業としてはお客様が作りたいアプリをお客様の代わりに開発しています。
現在は12名で東京の神田小川町という場所で毎日パリピ感満載でお仕事してます。
iOSDCやDesignShipのスポンサーもやっておりますので、どこかで弊社のロゴを見かけたという方もいらっしゃるかもしれません。
作ってきたアプリサービスは沢山あるのですがお仕事上の都合でお話することができませんが、みなさまとはインターネットとスマホとアプリを通して繋がっています。
下記は3年目の時に書き残したものです。興味があれば本記事を読んだ後に暇つぶしにお使いください。
2、数字で見る過去4年間のヤバさと今期の嬉しさ
第1期:60万の赤字
第2期:700万の赤字
第3期:570万の赤字
第4期:110万の赤字
第5期:1000万超の黒字 <NEW‼️>
※ 第1期のみ期間が半年
経営のことよくわからんって人でもわかりやすいようにしてみました。
第4期までは恥ずかしい話ですが見事なまでのオールレッドでした。
第5期でかなり改善できたのでなんとか第6期を迎えることができます。
経営者としてやっとスタートラインに立てたと安心しながらも、実現させたいビジョンが山のようにありますので引き続き全力で行動し続けたいと思います。
さて本題ではありますが、弊社の5年を振り返ってなぜ赤字を招いていたのか、どうやって黒字転換したのかという部分について記録として残したいと思います。
3、何が赤字を招いたのかを振り返る
【赤字体質を招いた原因の大きな2つ】
1、社員に仕事がない期間が多すぎた
2、間違った認識で教育に力を入れすぎた
最初に断っておきますが社員さん達に一切の責任はありません。
経営者である私の行動の結果でありますので、全ては私の責任です。
【前提】採用ポリシーとの戦い
人を採用して会社を大きくすることは良いことです。
どんな事業や会社であっても採用活動というのは必須なもので、この能力が高いと継続的に事業を営んでいくことが可能だと設立時に考えました。
便利な外部サービスに頼り切ると採用機能が成長しないと考え、設立から今もなお弊社は外部採用サービスの使用を禁止しています。
経営者として私はこの考えを変えるつもりはありませんが、最も勉強費用が高かったものであるとお伝えします。
設立当初は知名度が圧倒的に低いため自社ホームページから面談希望してくれる人たちはほぼいません。ましてや弊社は完全独立の会社で知り合いのツテとかもありません。
自社に興味を持ってくれた人たちと面接がセッティングできるだけで、採用側の我々のテンションは爆上がりです。
このテンションが人を見る目というものを狂わせているのだなと今振り返ると冷静に思います。
「今の職場で正当な評価を受けていない」
「もっと開発の仕事がしたい」
「ソースを書きたいんだ」
「勉強して更なる技術を身につけたい」
元々エンジニア出身の私はこんなキラキラした言葉達に踊らされます。
普段は問題解決のプロとしてクライアントからお金もらってますし、自社の社員の悩みなので当たり前に採用後の改善に精を出すわけです。
社員の悩みを聞いて一緒に解決策を考えて計画立案〜なんてやっていくとあっという間に時間とお金がなくなります。
結果として経営に費やす時間が減り、小さな問題は解消できるかもしれませんが大きな問題はそのままで一向に解消しません。
経営者は経営者の仕事をしなければダメです。
冷たい言い方に聞こえるかもしれませんが、結局は自分が良い顔したいだけだったんだなと学ぶことができました。
会社としてのポリシーを設定して戦略と目標を立て、社員と話し合って戦術を決めたら仮説検証を繰り返すのみです。あとは現場に任せましょう。
良い情報としては外部採用サービスなんか使わなくたって人は採用できることを証明できました。同じお金を使うのであれば採用サービスよりも自社の採用機能の強化に使った方が何万倍も効果的だという信念に変わりはありませんし、非常にオススメしています。
「採用でミスった」という言葉を使うと読者の方々には他責に聞こえてしまうかもしれませんが、私はこの活動結果によって社員を信用し続ける力を手に入れることができたと自信が持てました。
間違いなく現在の社員さん達が弊社最強のメンバーであって、辞めて行った人たちに注いだパワーにも手抜きはありません。
全てにおいて全力でやりましたし、後悔など微塵もありません。
1000万近くの勉強代を払って学んだことなので、その辺のキラキラ人事に負けることは一切ありません。
4、赤字要因1:社員に仕事がない期間が多すぎた
弊社の赤字要因で最も大きいものの1つは社員が売上を出すまでの間にお金を使いすぎたことです。
会社に金銭的な体力がある場合はこの状態でも余裕がありますが、起業したてで未経験者も採用していた弊社には適していなかった手法でした。
仕事がなくて待機していた期間中は社員さん達は一生懸命勉強してました。
サボってる人なんかいませんでした。
ただし悲しいことかもしれませんが、お金がなければ生活はできません。
辛辣な言葉かもしれませんが、理想を語ったり、やりたいことを実現させるなら稼いでからにするべきです。
だいたい2〜3ヶ月で現場で通用するエンジニアリングやデザインができる人を未経験から育て上げるなんていう甘えた考えがダメなんです。
何の仕事でもまず「必要とされること」を覚えなければいけない。
必要とされている仕事を続けることで身に着けるスキルや経験が何なのかが具体的に浮き彫りになる。
そして浮き彫りになってから初めて、成果につながる強化が行えるのです。
過去のゆるふわ思想家だった自分をぶん殴ってやりたいです。
まず徹底的に改善したのが仕事がない社員の仕事を作ることをやりました。
採用時に説明したことと違う状況を招いてしまっていることを正直に話し、負担になることはわかっているけどサポートするので会社のために行動して欲しいと頭を下げて相談をしました。
初めは社員さんのキャリアについて汚点になってしまうのではないかと悩みましたし、希望の業務に就けていないというのは問題だと思っていました。
もしかしたらこれが原因で去って行ってしまった社員さん達もいるかもしれません。しかし会社がなくなれば現在進行形で仕事している社員さんの生活さえも脅かされてしまいます。
徹底的に実施したことでみんなが会社の利益や売上について真剣に取り組んでくれるようになりました。
「面接に来てくれた人は良い人なんですけど、任せる仕事がないのに雇えないっすよ」って社員さん達から忠告してもらえる会社になりました。
今は私は人事決裁権を持っていません。
現場の社員さんが採用に悩んだ時に相談に乗りますが、決めるのは弊社の社員さん達です。任せる仕事があることをベースに採用をしているので、待機工数が劇的に減って赤字を生み出す機会が劇的に減りました。
5、赤字要因2:間違った認識で教育に力を入れすぎた
インプットがなければアウトプットはできません。
エンジニアだった私はこんな原則を知っているが故に、何か始めようとする前には学習期間やインプット量を成果指標の1つにしていました。
今でも考え方として間違っていないと思っていますが、それが仕事に適しているかというと別の話でした。
「社員教育のゴールは具体的に教えてください」という質問に適切な回答を出来る人は一体何人いるのでしょうか?適切な回答を提示できる会社は一体どれだけあるのでしょうか?
業務や特定分野の理解度などを指標にする人もいるかもしれませんが、原則として我々はお金を稼ぐためにチームを組み、組織を営んでいるのです。
お金にならない社員教育なんか何百年繰り返しても何も生み出しません。
会社は学校のような教育機関ではないのです。
作業や仕事に必要なことは教えるのではなく覚えてもらいます。
ダメなものはダメ、良いものは良いという判断基準を覚えてもらいます。
教育や成長というものは自分が自分に対して勝手にやるものです。
自分のことを自分で育てられない人が、どうやって会社の事業や組織を成長させられると言うのでしょうか。
会社はこの個人の活動を環境提供という形でサポートをすることくらいしかできません。
この「社員教育」という言葉を曖昧なまま使い回し、手段だけが先行して目的を達成できるように行動していなかったことは猛省事案で徹底的に改善しました。
まず目的に必要なことは何かを明確にして、それを達成するには何が必要なのかを明確にすることについて取り組みました。
何が、どれくらい、いつまでに必要なのかという5W2Hを使った会話が劇的に増えました。大きいゴールになっているものを中規模や小規模のゴールに変える行動を取り、各業務についての将来のビジョンと戦略を作るようにしました。
実は社員さんというのは経営者よりも会社や業務、現場のことを知っていることが多い存在で、経営者が会社の方向性を示した後に「我々は今何をするべきなのか?」という問いに答えてくれる存在です。
敬語が使えるとか、業務知識があるとかそういうのは本当にどうでもいいことなんです。知識や経験、スキルなんていうのはやってれば身につきますし覚えます。
社員さんに対して求めることを明確にして、適切な関係性と報酬を示すから行動と成果で応えてくれるのです。
単に私に能力がないだけかもしれないですが、弊社の社員さん達は私よりもよっぽど業務のことを細かく知っていて教えてくれます。
私の仕事は経営者として社員さん達の行動が、目標や成果に対してより効率的になるように環境を整えることです。
会社における教育とは我々経営者が社員さん達から施してもらうものです。
この大きな勘違いを是正するのに弊社はたくさんの時間とお金を使い、赤字を生み出し続けたという最悪な道を歩み続けました。
私が経営者として経営者の仕事をしていなかった大きなミスの1つです。
6、5年目で変わったこと
【会社のミッション】
・Design&Development&Sell(作って売るし、作るも売る)
↓
・Let's make a never seen(見たことない、を作る)
会社のミッションが変わりました。
弊社は開発会社なので「作って売るし、作るも売る」なんて考えていたんですが、よく考えたら当たり前じゃんってことに気付きました。
作るというのは人の行動であり誰もが行えることで、弊社じゃなくても良いんですよね。会社としてのミッションで掲げる旗印ではなかったわけです。
当たり前で別に弊社がやらなくても良くない?というミッションを掲げていることを反省して、2020年5月〜6月の2ヶ月で社員さん達と話し合って、改めて会社のミッションを設定し直しました。
弊社は社員の半数以上が20代で、未来や明日を夢見るやる気とパワーに満ち溢れた会社です。時代的に言えばDXやAIなどが登場してデジタルによる更なる効率化や未知の領域に触れることが多くなってきました。
別に全てが新しいものでなかったとしても見たことないモノや体験が未来や明日を作っていくんだということを話し合って認識合わせすることができました。
お客様とのお仕事でも全く同じビジョンで活動しています。
一緒にお仕事する仲間として切磋琢磨しますと、お客様の責任者の方々から「うちの社員のあんな姿を”見たことない”」と言ってもらえるようになりました。
今ではNeverSeen度という造語が社内で作られ、5年経った会社が”見たことない”スタートアップ感に満ち溢れているのは不思議な感じがします。
【投資対象】
・人を大事にして、人に投資する
↓
・人を大事にして、資産に投資する
投資対象が変わりました。
人を大事にするということに何も変わりはありません。
弊社は元々問題解決能力が高いという特徴があります。
お客様の問題以上に社員さんが抱える問題について放置したことは創業以来一度もなく、全て全力で解決してきました。
会社は会社の資産を形成する組織で、社員はその資産形成を行う人であるという位置付けを徹底的に説明し、資産を作れば資産がお金を稼いでくれるという商売の大原則を説明し直しました。
この結果、各業務において細かいやり方がわからなくても社員全員が投資家と経営者のマインドを持つようになりました。
現場での行動判断基盤が見直され、成果が出るので自然と能力自体もアップするという結果に至りました(オススメです)
振り返りではありますが、人は自分に投資されるというダイレクトな利害関係にある状況下では他人との会話に気を遣い、事実をベースにして会話をすることができないのではないかという仮説が生まれました。
会社のお金を使って、会社の資産に投資をするというルールを理解すれば、他人事として捉えることができます。
「会社のお金を他人事なんて考えはけしからん」なんて言われてしまうかもしれませんが、実際には社員さんが冷静になり成果が出ているので弊社の勝ちです。プライドなんかでご飯は食べれません。
【新事業開発】
・自分たちで企画して、自分たちで作る
・作れないと報告できず、改善機会が増えない
↓
・自分たちで企画してパートナーと一緒に作る
・報告機会が増え、報告に数値が必要だと気づく
新事業開発のやり方が変わりました。
弊社は新たにコンテンツ事業を立ち上げる準備をしています。
今まではクライアントワークをやりながらサービス開発をしたり、自分たちで調査や資料などを用意しなければならなかったりといくら手があっても足りない環境でありました。規模が小さいことであっても、やりたいことへの挑戦のハードルが高くなっているということを発見しました。
もちろん全部自前で出来た方が学びになることも多いのですが、時間がかかってしまったりすることで社員さんのモチベ低下にもつながります。
思い通りにいかないことのフラストレーションが社内で蓄積し、人間関係もギスギスしてしまうことも少なからずあったと思います。
万年赤字体質であるのでお金もありません。
考え方を変えることにして最もミニマムな生産ができるように目標設定をし直し、体制と環境を変えました。
これにより会社の顔として外部の取引先と仕事をする機会が増え、権限を発揮する場が生まれました。生産時間が減っているので考える時間が増えました。進捗報告をする機会も増えた結果、数値で分析していないということにメンバーが自分たちで気付き始めました。
数値で計測できないと何が効果的で、何を止めるべきなのかも判断できないのです。結果として根性論めいた「頑張ります」という言葉を頼るハメになってしまいます。
工数見積も出来ませんので計画も立たずに疲弊しやすい環境を作り出しているということがわかりました。
私の仕事には「数字に強い環境を自社に実装すること」が追加されました。
経営者としては最高にエモい仕事だと思ってます。
7、これからのマンハッタンコードとまとめ
【第6期の予定】
・デザイン分野の事業において革新的な行動を示す
・データ分析を基盤とした行動を標準化する
・新商品のβテスト開始と正式リリース
・既存事業の新分野への着手と展開を行う
・オフィスの増床(12名→20名)
・ギャルを積極採用してビジネスマンにする
自分たちの「見たことない」で誰かの「見たことない」を実現させる
この5年で我々は成長して生まれ変わりました。
なんてことはありません。
今まで以上を自社に求めるつもりもなく今まで通りに、いつも通りに自分たちのお仕事をしていくだけです。
成果が出せるようになってきたので少しずつではありますが、曖昧なものが確かなものに変化しています。やり続けてきたことで不確かなものが信頼できるものへと変化しています。
この成果と変化はお客様をはじめとした弊社のファンの方々のお力もありますが、最前線の現場で汗水流して全力で働いている弊社の社員さんたちの力こそが最も大きなものです。
コロナの影響でリモートワークが主流になっておりますが、弊社は相変わらずオフィスに皆が集まってワイワイガヤガヤとお仕事しています。
毎日のように疲労感たっぷりで帰っていく社員さん達の後ろ姿に「お疲れ様でした」と声を掛けられる幸せは何物にも変えがたいものがあります。
これだけは誰がなんと言おうと私が経営者になって最も幸せだったものの1つです。是非みなさまも自分のお金を使って起業してみてください。
最後に一言。
SES事業は馬鹿でも儲かるって言ったやつは正直に名乗り出ろ。
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