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古本屋1年生の、2022年イベント出店記

今年は「桶屋書店」の屋号で、初めて自分の本屋業を始めました。
お手伝いなども含めると5つのイベントに本を持って参加しました。

初出店の8月からなかなか思いがまとまらず、noteが書けていなかったのですが、2022年も本日で終わりなので、イベント出店についての振り返りを残したいと思います。

出店の感想をひとことで

出店について、簡潔にまとめると。
明確にわかったのは、現状は古本だけじゃ食べていけないということです(笑

初回を除く4回の出店での売上は、出店料など経費を除けば平均1回5000円くらい。始めたばかりということを差し引いても、そもそもイベントは月に何度もないため、他の収入は必要になります。

でも収入以外でいえば、イベント参加はいいことづくめ。
最初に友人に誘われて出店したmingleさんのフリーマーケットで、初めて手売りの楽しさに目覚めて以来(下の記事参照)、その楽しさは、以降の別のイベントでもずっと継続しています。

具体的に書くと、
・お客さんの反応が直接わかる
・自分の好きな本に興味を持ってもらえる
・本屋同士、お店の人同士で話ができる
などなど。たくさんの機会と希望にどっぷり浸れるのが、イベントのいいところです。

デビュー戦、そして反省

8月に参加した『美須々の杜のモール』@長野県護国神社は、屋号「桶屋書店」を名乗るきっかけになったイベントでした。

晴れると蝉の鳴き声に囲まれる、自然の中のマーケットでした。

終わってみればとても楽しかったのですが、出だしはかなり大変でした。
朝からかなりの雨で、自分で用意したテントが古かったため、雨漏りに悩まされました。そんな天気でも他のお店は大盛況。それを横目にみながら、自分の準備の甘さ、ターゲットの甘さについて考えていました。

決して全然売れなかったわけではありません。
ただ、私としては本が濡れない状態で売りたかったし、何より、もっとちゃんと興味を持ってもらえる並べ方をしたかったのです。

その時はお家にあるビジネス書が多めの品揃えだったのですが、これが全然売れなかった。
「読めばすごくいい本なのに」と思う一方で、「夏休みで、しかもこの森の中で読むなら、やっぱりエッセイとか雑誌とかを選ぶよな」と納得している自分もいました。

あと、出店に合わせて思いつきで作ったZINEも、もっと売りたいと思いました。
こちらは「読む」ことに偏りがちな本屋にも、「書く」ための本がほしいなぁ、と思い、適当な本が見つからなかったので、自分で作ってみたものです。
(現在はminneでのみ販売しています)

初めて作ったZINE『ゴキゲンな毎日のための好きなものハンドブック』

当日は個人のインスタグラムで告知しただけだったのですが、友人を中心に幾人かの方がわざわざZINEを目掛けてきていただいて、しかも買っていただけて、とても嬉しく思いました。

ただし、ビジネス書とはあまり関連がない印象になり、イベントでは影が薄くなってしまった感がありました。
正直、作った段階で軽く燃え尽きになってしまい、併売のことまで考えていなかったのは否めないんですが(笑

ビジネス書もZINEも、どっちも私にとっては大切で、ちゃんと売りたい品です。
これがきっかけになって、「ちゃんと選書して、もっと興味を持ってもらえるような並びにしたい」という気持ちになりました。

テーマを絞った2回戦と、それ以降

10月に参加した第5回まつもと一箱古本市では、一箱古本市デビュー。ここでは前回の反省を活かし、ビジネス書に振り切った選書にしました。

いいお天気の松本・六九商店街が会場でした。

で、どうだったかといえば。
もちろんビジネス書が飛ぶように売れた、わけではありません(笑
というのも、古本市には掘り出し物を「安く」手に入れることに価値を置く人は、やはり多いのです。

私が持っている本は発売から1年以内のビジネス書が多いため、価格を下げるのは著者に申し訳ない・・・と思っていたこともあり、1,000円前後の本が多くありました。
このため、文庫や新書など、数百円の本が中心に売れていきました。

しかしそんな中、「この本、どうしても気になるから買う!」って言って下さった方がいました。40代くらいの女性の方で、その方が手にとっていたのは、8月には一冊も売れなかったビジネス書、しかも1,000円代だったのです。

そして、この日はビジネス的な本を並べている店がほとんどなく、キャラ立ちしていたというのもあって、その他にも数冊のビジネス書を手にとっていただけました。
それが私にとっては、この方向でいいんだ!と思えるじかんになりました。

天気にも恵まれ、2022年の売上はこの回が一番でした。

また11月には、一箱古本市でいただいたご縁からマツモトアートセンターさんのイベント「第6回 書物とアート」に参加。
小規模のイベントですごく居心地良く、他のお店の人ともたくさん喋れた回でした。

ちなみにここではまた選書のテーマを変え、アートに振り切ったものに。
オノ・ヨーコさんの『どんぐり』や、フィルムアート社の『アートという戦場』などを持っていきました。売れたら面白いな・・・という想いを携えて。笑
この回は、前回置いていなかったラインナップの本が売れ、すごく面白かったです。

机の下に布を敷くことを覚えました!

3回転している本

私が出店した中で、前回売れたけれどもまた並べておくと売れる、というのを繰り返した唯一の本がこちら。
『最後の秘境 東京藝大』(二宮敦人著、新潮文庫)です。

もともと私がお気に入りの本だったのですが、文庫という手軽さもあるし、お店の中で目立ちやすい本なのかもしれません。そして、ちょっと日常では気にならない本を手にとって欲しいという私の思惑にも見事に合致した、適度な「非日常的」さを持った本でもあります。

こちらは今年、学生さんから大人の方まで、さまざまな方に手にとっていただけました。今後もいろんな角度で「ハマりそうな」本を増やしていけたらと思います。

探していない本に出会う本屋

イベントとしての学びはたくさんありますが、自分の屋号を名乗ることで見えてきたものもあります。

最初に「桶屋書店」と名乗った時に、名前の由来を「探していなかった本に出会う本屋」としました。
風が吹けば桶屋が儲かる、というフレーズからとったこの言葉は、人生何が起こるかわからないし、本もまた、何が役に立つかよりも、興味を持ったものを手にとって欲しいという思いで付けたものです。
別に探していなかったし、なんでこの本に興味を持ったのか全然わからないけど、気になる瞬間っていうのがある。それこそが自分の本心に近くて、多分今必要としている本なのだと思います。

ようやくそのコンセプトが身に沁みてきました。

読みたい本がたくさん見つかる、自分の感覚が研ぎ澄まされる感じの棚をつくりたい。でもそれだけじゃなくて、読んだ先、考えた先、表現するところまで辿り着けるような装置を作りたい。(その表現の手段の一つがZINEという形になりました)
そうやって、頭の中に、希望を植え付ける存在でいたい。

それには本屋という手段がぴったりだと思うし、それが私がやりたかった「本屋」なのだと実感しています。

来年の予定

2023年は2月4日(土)の「上諏訪一箱古本市」が最初の参加になる予定です。

来年はもう一つの活動であるABD(読書会)もゆるやかに再開していきたいなと思います。
また来年もよろしくお願いいたします。

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