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授業を受けてくれたみんなへ ~塩中ABDレポートVol.5

先週月曜日、無事に「地域ふれあい学習」のABD講座が終了しました。

突然ですが、記事を見ている大人のみなさんに、ひとつ自慢させてください。

最後の授業では、学校所定の「反省用紙」に各個人が授業全体を振り返る時間があり、
・学習内容に興味・関心を持つことができたか
・学習に意欲的に取り組むことができたか
・学習を通して、技能や知識を高めることができたか
・同じ講座の友達と協力して活動できたか
の4項目について、「とてもよくできた~できなかった」までの4段階で自己評価をつけてもらいました。

結果、すべて生徒のすべての項目が「とてもよくできた」または「よくできた」に〇をつけるという評価になりました。

しかも、項目すべてに最上位の「とてもよくできた」をつけた生徒は、19人中15人。約8割がオール最高評価という結果でした。

4段階評価グラフ

他の講座は見ていないので比較はできませんが、それにしても、ここまで生徒の自己評価が高い講座はあまりないのでは?と思いました。

このような高評価が得られたのはなぜかといえば、私が企画した講座がすばらしかったおかげ・・・
ではなく(笑)、何よりもまず生徒のみんなが一生懸命に取り組んだことが一番の理由です。

これは、本当にそうで。
みんなが毎回課題に熱心に取り組み、それゆえに成長のスピードがとても早かったので、私自身、授業の後半で生徒に任せる部分を大幅に増やす必要がありました。

生徒のみんなには、自分の頑張りでこれだけ成長を実感したということにはゆるぎない自信を持って欲しいと思います。

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最後の授業はセレモニーだったのですが、みんながお礼のメッセージの束をくれました。

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一番多かったコメントは、「楽しかった」の言葉。これには、本当に報われました。

生徒のみんなにしてみれば、正直、私の授業は大変だったと思います。

ABDという謎の単語にはじまり、本の要約も、テーマに沿った対話をするのも、ましてやABDを企画するなんて、全員初めてのことだらけだった。
だから毎回「つらくてこんな授業もうやりたくない」という人がいないか、内心、ドキドキしていました。

メッセージをくれて、どうもありがとう。私のほうこそ、みんなにお礼をしなければいけません。この授業がある月曜日のたび、みんなに会うのも、みんなの成長を見るのも楽しみでした。

いただいたメッセージや反省用紙を読んでいると、講座の中で私が言葉にしきれなかった成果や学びを、言葉にしてくれた人がたくさんいました。

みんなからもらったコメントをなるべくそのまま抜き出しつつ、今回の記事は、これらのメッセージへの返信に替えたいと思います。

学んだこと①自分の意見はすでに持ってる

ネットは正しいとは限らないし、ネットに落ちていないことがある。
だから、自分が知りたい情報は自分で選んでいいこと、そのうえで、自分の意見が大切であることは、この授業がはじまる一番最初にみんなに伝えたことでした。

さて、この授業を通してみんなは、自分の意見を持てるようになったでしょうか?

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授業のはじめのころ、「自分の考えを書きなさい」という問いに回答するのが難しいのは、自分の意見が浮かばないからだと思っていた人もいたのではないでしょうか。

でも、この授業では、自分が考えたことを書いた付箋がたくさん模造紙に並びました。
塩尻市立図書館で自分の読みたい本を選んでもらった時、自分が読みたくない本を持ってきた人は誰もいませんでした。

だから、授業に出てくれたみんなにはもうお伝えしたけれど、自分の意見は「持てるように」なったというよりも、「もう持ってた」というほうが正しくて、この授業でみんなはその伝え方を学んだのでした。

今は機会さえあれば、みんなはちゃんと自分の意見を出すことができますから、それにも自信をもってください。

それを示すように、たくさんの人が、「自分の意見」についての「意見」を書いてくれています。

・人の前で発表することが苦手だったけど、少し克服できたと思う
・一人一人が意見をもつことの大切さや、しっかり発言できるような空気を作ってあげる大切さを学ぶことができた
・3年生の人たちはチームに分かれたときにすぐに率先してしっかりと進めてくれて、やりやすかった(2年生のコメント)
・最近国語の授業でグループで話し合う機会があり、ダイアログに似てると思い、自分からどんどん話が進められていたのでよかったです

学んだこと②どんな本でも読める

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本好きのみんなから寄せられたのは、「普段物語はよく読むけれど、今回のABDで読んだような難しい本はあんまり読んだことがなかった」というコメントでした。

それについても、みんなに伝えきれていなかったことがあります。

実は世の中には、子どもたちに伝えたい思いがある大人がたくさんいます

大人たちは、みんながふだんの生活で困ったとき、悩んだとき、新しい発想を与えるものとして、例えば本のタイトルに「14歳からの」とか「13歳のための」とつけたり、ちくまプリマ―新書小学館Youth Booksなどの青少年向けシリーズから出版したりして、みんなが本を選ぶのを待っています。
それらの本は、書店や図書館や図書室の本棚にたくさん並んでいます。

これまで一人では読むのが難しそうだと思っていた本も、ABDの授業では、何人かで読むことができると学びました。

しかもABDは、長編でも、専門書でも、外国語の本でも使えます。

それに、授業を受けていて気づいたかもしれませんが、実は自分の知りたいことは、本を全部読まなくてもわかる場合もあるんです。
コ・サマライズで、自分が担当する箇所を自分で選んだように、興味のあるとこだけつまみ読みすることも、読み方としては全然OK。

だから今後は、どんな本でも難しさで判断せずに、興味の赴くまま読んでいいんです!それは本当に素敵なことです。

コメントでも、読む本の幅や選び方が変わったという意見がありました。

・講座を通して、いろんなジャンルの本を読んでみて、物語以外の本にも興味をもつことができました
・今は読みたい本がすぐ見つけられて今後にも生かせたらいいなと思いました

せっかくだからこのタイミングで、いろんな本に手を出してみてくださいね。

学んだこと③思いやりはグループを支える

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他の人のプレゼンを真似したり、議論ではそれぞれの立場で意見を述べたり。この講座は、グループの活動で学ぶことも多かったと思います。

みんなのコメントは、こんな感じでした。

・相手に伝わりやすいように、わかりやすいようにまとめることができた
・まとめかたが上手な人のを読んだりして学べた
・理由をそえて発言することで聞き手として納得できることが多かった
・初めての講座で何をするかもわからなかったけど、友達ががんばって理解しようとしていて、どんなことにも挑戦したほうがいいんだなと学んだ

グループでは、自分ができないことを誰かが補ってくれたり、自分から協力したりすることで、一人ではたどり着けなかった場所に達することができました。

とはいえ、一人ひとりの個性が要求されるグループ学習は、正直、難しい部分もあったと思います。
特に、全然違う人たちの中で意見を募ったり、方向性を決めたりすることは、大人でも難しいものです。

グループ学習は、みんなが一人ひとり基本的に違う、という前提に立ちます。
だからこそ、相手を思ってわかりやすく伝えたり、理由を添えたりすることは、グループ学習の基本になります

今回みんなはABDを通じて、そのグループ学習の基本を学びました。
今後はどこかで、今回みんなが頑張ったような議論のしかたや協力のしかた、ファシリテーターや書記の経験が、みんなの学習を支えるベースになってくれることでしょう。

何よりみんなには、学年も性別も普段の友達の枠も超えて協力できたという、信頼と実績もあります。

この授業でみんなが実践してくれたことは、今後いろんな人と出会う中で、とても大切な姿勢なんです。

講師は何を学んだか

改めて考えると、この講座でやってきたことは、総合学習だけで使う技能じゃなくて、一生かけて学んでいくことの一部でもあります。

この講座には、テストはありません。
しかし、人生のいろんな場面で突然「抜き打ちテスト」されるような、そんな内容だったなと、振り返ることができます。

このことは最初からわかっていたわけではなく、授業を終えた今、生徒のみんなが学んだ様子を見て、はじめて言葉にできました。

授業が終わってから何を教えているか初めてわかるなんて、「教える側」としてはどうなんだろうと思う部分もあります(笑)

でも、教えることって結局はそんな感じじゃないのかな、とも思います。

人類学にせよ科学にせよ、あらゆる摂理や定理は不変のものではなく、研究者によって現在進行形でずーっと研究され続けている。

そんな中教師ができることは、自らも実践者として生徒とともに今までの前提をたどり、試行錯誤しながらある結論に達する。

すると、学ぶのは生徒側だけじゃなくて、教師もまた学ぶのだといえます。

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講座が終わった今も、私は自分が学んだことを生かしていくにはどんな方法があるかな、と考え続けています。

例えば、総合学習の枠でこの体験ができるのは、全校生徒の中のたった20人。でも、多くの中学生に機会が提供できるか、とか。

また私のようなフリーランスは、1回ごとの報酬額が事業の継続に直結するのですが、今の形態でこの授業を継続していくのは難しく、どうやりくりするかとか。

それに、今回の授業は学校の先生をはじめ、塩尻市立図書館や地域の方の多くの人の協力があって実現してきました。

きっと関わってくれた一人ひとりに、私とは違う学びがあることと思います。
もしかすると、そんな大人との対話の中に、この学びを生かす方法があったりしないかな、とか。

なんだか壮大な話になってきました。
こんなふうに私の人生の宿題は続いていますよ、と報告して、ひとまずみんなへのお返事は終わりにしたいと思います。

そして、今回の講師である私が学べたのは、生徒であるみんなが授業に熱心に取り組んでくれたおかげです。

改めて生徒のみんな、半年間一緒に学んでくれてありがとう。

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