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【本解説】幸福の資本論 あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」

今回は橘玲さんが書かれた幸福の資本論あなたの未来を決める3つの資本と8つの人生パターンを解説していきます。

この本は幸福になるための戦略を知りたいと思う人におすすめの本です。幸福になる方法というと今まで多くの本でも語られてきたことですが、幸福な人生を送れていると自信を持って言い切れる人はそれほど多くはないのではないでしょうか。

本書は幸福な人生を実現する戦略についてわかりやすく教えてくれる本です。本書の提案に乗っ取って正しく人生を設計すれば誰でも幸福の条件を手に入れることができます。

結論

このnoteの結論は2つです。

  1. 人生を支える3つの資本とは

  2. 人的資本に関する戦略

という順番で解説していきます。

人生を支える3つの資本とは

人生を支える3つの資本とはについて本書から3 つのポイントをピックアップして解説していきます。1、幸福の定義
2、人生の8つのパターン
3、幸福の製造装置
という3つのポイントについてそれぞれ深掘りしていきます。

幸福の定義

1つ目のポイントの幸福の定義について本書でははじめに家に例えられて説明がされます。

幸福が主観的なものであるように住みたい家を聞かれたとき人はそれぞれ異なる建物をイメージします。どの家が優れているのかの序列がつけられない以上どれも良い家としか言いようがありません。しかし1つだけ共通することがあります。夢のマイホームがいきなり倒壊してしまえば何もかも台無しであることです。良い家はしっかりとした土台の上に正しい設計で立てる必要があるというのは基本中の基本です。

これは幸福も同じで土台の上に正しく設計すべきものです。この土台のことを本書では人生のインフラストラクチャー(カブ構造)と呼んでいます。簡単に言えば幸福の条件のことです。ところが巷に溢れる幸福論の中で人生のインフラについて論ずるものはほとんどありません。これではまるで土台を無視して家の間取りやインテリアあるいは食器棚に並べるお皿のブランドに頭を悩ますようなものです。脆弱な土台の上に無理やり建てた家はいずれ倒壊します。

それでは幸福のインフラとは何か。様々な条件が頭に浮かぶと思います。巨万の富・権力・名誉といったポジティブなものや重い病気にかかる・交通事故で重症を負う・愛する人を失うなどネガティブなものと様々なことが人生に大きな影響を及ぼします。

これらの中には自分の力では どうしようもできないこともあります。そこでまず幸福の条件を設計できるものと設計できないものに分けていく必要があります。設計できないものとは運命のことで容易に変えることはできません。逆に言えば私たちは運命をあらかじめ与えられた環境として受け入れた上で自らの人生を設計していく以外にありません。

しかしここでがっかりする必要はありません。運命は変えられないとしても科学技術の急速な進歩によって設計できないものがどんどん減っているからです。1940年代に抗結核薬が発見されるまでは結核は死病とされ諦めるしかありませんでした。また体の一部に障害があるということは大きなハンデでしたがパラリンピックで活躍するアスリートたちは今やハイテクを駆使した補助具によって健常者以上の成績を目指しています。

AIをはじめとするテクノロジーの進歩は加速度を増しています。これまで運命とされてきたものの多くがいずれ設計できるものへと変わ瑠加もしれません。さらに社会が豊かになったことで職業が多様化し人生の選択肢はどんどん増えています。

人々はずっと人生の選択肢が限られていることに苦しんできましたが、豊かな国の若者たちは今や選択肢が多すぎることの方に困惑しているほどです。あらゆる自分になれるなら今の自分を肯定することが難しくなってしまうということです。この厄介な問題も人生を正しく設計することである程度解決可能です。

ここではまず幸福の条件として次の3つが挙げられています。
自由・自己実現・共同体=絆という3つです。そしてこの3つの幸福の条件は3つのインフラに対応しています。それは金融資産・人的資本・社会資本という3つです。

人生を支える3つの資本資産によって幸福の条件である自由・自己実現・共同体=絆が決まります。そこにどのような家を建てるかは一人一人が自らの価値観に基づいて決めればいいことです。
これが本書の基本的な主張です。

人生の8つのパターン

2つ目のポイントの人生の8つのパターンについて解説していきます。

人は3つの資本を運用することで富を得ます。金融資産は財産。人的資本は働いてお金を稼ぐ能力。社会資本は家族や友達のネットワークのことです。この3つの資本資産の合計が一定値を超えていれば人は自分を貧困とは意識しません。逆に言えばこれらを全て失った状態が最貧困といえます。

例えば地方在住の若者は収入が貧困ライン以下で貯金ありませんが、友達はたくさんいるというような状態でしょう。本書ではこの社会資本だけがある状態をプア充と呼んでいます。このプア充の人が何かしらの理由で友達のネットワークから排除されてしまうと3つの資本を全く持たない貧困に陥ってしまいます。

それに対して金融資産をほとんど持っていなくても高収入を得られる職業に就き友達や恋人のいる若者もいるでしょう。人的資本と社会資本の両方を持つ人はリア充と呼ばれます。このように整理していくと人生における金融資産・人的資本・社会資本の関係がすっきり理解できます。

同じように他のパターンも確認していきます。まず金融資産・人的資本・社会資本の全てを誰もが羨むような水準で持っている人は非常に珍しいケースだとは思いますが、その人の人生は超充実しているだろうということでこれを本書では超充という名付けています。

続いてもう少し現実的に人的資本と金融資産はあるけれど友達が居ない。つまり社会資本を持たないタイプです。これはお金持ちの典型です。『金持ちは孤独』とか『金持ちは金持ちとしか付き合わない』と言われるのは社会的に成功すると金や権力を目当てにいろんな人が集まってきて嫌な思いをすることが多くなるためです。これは恵まれた仕事と金融資産があれば面倒な人間関係を切り捨てても困らないということでもあります。その典型が投資家やトレーダーです。

それに対して金融資産と社会資本を持ちながら人的資本がない、つまり働いていない人もいると思います。イメージとしては気前よく振る舞ってみんなの人気者になっているという感じです。これを旦那とします。

リア充・お金持ち・旦那と並べてみると超充にならなくても資本を2つ持っていればそれなりにやっていけることがわかります。これを人生の成功物語として読むこともできるでしょう。若い時はリア充で頑張っ て、成功してお金持ちになると仕事が忙しくなって昔の友達とは疎遠になってしまいます。そしてリタイアした後は資産を社会に還元する旦那になってみんなから慕われるといった感じです。

最後はプア中と同様資本資産を1つしか持たないタイプです。金融資産だけを持っていて人的資本も社会資本もないのは典型的な退職者です。その金融資産の大半は年金という形で国家に運用をアウトソースしています。

日本社会の高齢化に伴って年金不安が重大な政治課題になっています。人的資本だけあって金融資産と社会資本がない若者は最近はソロ充と呼ばれています。この方は結婚や子供を作ることに興味を持たず稼いだお金は自分の趣味などに使い、異性の知り合いはいても恋人のような深い関係にはなりません。

しかし若者以外にもこのタイプの人はいます。典型的なのは駆け出しの自営業者です。彼らは人的資本もあっても事業が軌道に乗るまでは金融資産を蓄積できません。自営業者に社会資本・友達が乏しいのは生活サイクルが一般のサラリーマンとは異なるからです。土日も仕事で水曜定休や午後から働き出して帰宅は深夜になるという生活を続けていると学生時代の友人たちからの誘いに応じることができず友達関係が薄れていきます。

幸福の製造装置

続いて3つ目の ポイントは幸福の製造装置について。幸福をインプットとアウトプットから考えてみます。モデルは極めて単純で私たちは幸福の製造装置を持っており、そこに何らかの刺激をインプットするとあるメカニズムによって幸福に変換されアウトプットされます。

この時幸福の大きさを決める要因は2つだけです。『インプットの量または質』と『製造装置の変換効率』です。

インプットされるのは金融資産・人的資本・社会資本ですがその量は多ければ多いほど良いというわけではなく、人的資本と社会資本では量よりも質が重要になります。さらに同じインプットでも大きな幸福を感じる人と何も感じない人がいるように幸福の製造装置の変換効率は一人一人違っておりその仕組みはいまだブラックボックスです。

ブラックボックスの中身はみんな違うとしても1つだけ確かなことがあります。それはインプットがゼロであれば幸福というアウトプットもゼロになるということです。退職者が金融資産を騙し取られたり、人的資本しかないソロ充が失業したり、社会資本だけのプア充が友達を失ったり、これはどれも人生の転落物語のよくあるパターンですが彼らが不幸なのは幸福の製造装置にインプットするものが なくなってしまうからです。

このことから資本を一つしか持っていないとちょっとしたきっかけで貧困や孤独に陥るリスクが高くなることがわかります。それに対して2つの資本を持つことができていれば人生の安定度ははるかに増します。

このように人生を金融資産・人的資本・社会資本という3つの資本で把握すると幸福という捉えがたいものにある程度の形作ることで現実的な戦略を考えることができるようになります。

これが本書の基本的なアイデアです。本書では3つそれぞれに関し具体的な戦略が説明されていますが今回のnoteでは人的資本に絞って掘り下げていきます。

人的資本に関する戦略

ここからは人的資本に関する戦略について3つのポイントをピックアップして解説します。解説するのは
1、20代で5500万円の人的資本
2、かけがえのない自分になること
3、収益の最大化と自己実現を両立
という3つのポイントです。

20代で5500万円の人的資本

1つ目のポイントの20代で5500万円の人的資本についてノーベル賞学者の人的資本理論ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者ゲイリーベッカー氏は、人はそれぞれ人的資本を持ちそれを労働 市場に投資して日々の糧となる収益・給料を得ているのだと考えました。これは金融資本を金融市場に投資して収益を得る経済行為と同じです。つまり働くことを人的資本の投資と回収として経済学ので説明ができます。これが労働の意味を大きく書き換えたベッカーのイノベーションでした。

投資のパフォーマンスは期待リターンとリスクで決まります。投資をしたことがある方ならわかると思い ますが期待リターンが大きければ大きいほど良いというわけではありません。

期待リターンが100%のベンチャー投資とゼロ金利の銀行預金があるとします。市場が効率的であればこの2つの投資機会に優劣はなくリスク調整後のリターンはどちらも同じです。つまり100人がベンチャー企業に投資すれば50人は元金が倍になり残りの50人は元金を全て失って平均すれば収益は0になります。

同様に人的資本の投資も労働市場が効率的であればリスク調整後のリターンが同じになるよう裁定が働くはずです。理論的には終身雇用で安定した収益を得られる仕事はローリスクローリターンの投資。つまり債権投資と同じで収益性は低いです。

逆にいつ解雇されるかわからない成果報酬の仕事はハイリスクハイリターンの投資です。つまり株式投資と同じで報酬が青天井になるはずと言えます。

では一般的なサラリーマンはどれほどの人的資本を持っているのか。結論は生涯年収3億円という標準的なモデルで考えたときリスクプレミアム(会社が倒産したり病気になって収入を得られなくなるリスク)を加えた割引率を8%として考えると、社会人になったばかりの若者の人的資本は約5500万円になります。ほとんどの若者はこれほどの金融資産を持っていないです。

ここから次のシンプルな原則が導き出せます。最も重要な富の源泉は人的資本であるということです。金融資本と比較した人的資本の特徴は投資の損失がないことです。奴隷制が禁止された社会では働けば必ず報酬が支払われます。多くのお金持ちが地道に富を積み上げてきたことを見ても人的資本こそが成功への鍵であることは明白です。

豊かな先進国に精を受けたという幸運によって私たちは生まれながらにして大きな人的資本を持っています。それを活用できたか活用できなかったかで経済格差が広がっていきます。

かけがえのない自分になること

続いてのポイント2つ目、かけがえのない自分になることについて。

投資家が金融資本を金融市場に投資して利益を得るのと同じで、労働者は自らの人的資本を労働市場に投資して収入を得ていると考えるという話を前の項目でしました。金融取引のルールは極めてシンプルでたった2行で表せます
1、利益は大きければ大きいほど良い
2、同じ利益ならリスクの小さい方が良い

これに対応するように人的資本の投資についても次のようなルールがあります。
1、収入は多ければ多いほど良い
2、同じ収入なら安定していた方が良い
というものです。

しかし人的資本には金融取引にはない際立った特徴があります。それが同じ収入なら、あるいは収入が少なくても自己実現できる仕事の方が良いというものです。

自己実現はアメリカの心理学者アブラハムマズロー氏が提唱した人間にとって最も高次な欲求で『衣食住のような根源的・生理的欲求』『安全な暮らし』『家族や周囲から受け入れられているという感覚』『他者からの承認』という4つの欲求が全て満たされた後に現れてくると言います。

ここでは自己実現を掛け替えのない自分になることと定義しておきます。自分探しという言葉があるようにどこかにまだ出会っていない本当の私がいるという感覚は今では広く共有されるようになりました。

これに対して本当の自分なんて幻想だという批判があり、その通りかもしれませんがそれでも自己実現の魅力は変わりません。この幻想はお金と同じ構造を持っています。お金というのはその実態だけを見れば紙切れであり金融機関のサーバーに格納された電子データにすぎません。つまりお金の本質は幻想だということです。

しかしみんながその紙切れやデータに価値があると思えば幻想は実体化していきます。お金は確かに幻想ですが、それが共同幻想になるまで共有されると現実へと変わり、私たちを魅了し拘束します。

このお金の話と自己実現の話が同様の構造を持ちます。江戸時代に『本当の自分がどこかにいる』などと言っていたら頭がおかしくなったと思われていたと思います。しかし今では自己実現はキャリアにおける聖杯となり、仕事を通じて自己実現することが人生の目的だとみなされるようになりました。

大学で行われるキャリア教育はこうした特異な価値観を若者に刷り込む役割を果たしています。一旦共同幻想になれば価値観は現実化するわけで、人々は自己実現したと称する人を尊敬し憧れ羨むようになります。

このようにしてかけがえのない自分がリアルな人生の目標になります。だから私たちは無意識のうちに働くことに2つの目標を設定していることがわかります。一つが人的資本からより多くの富を手に入れる。もう一つが人的資本を使って自己実現するというものです。この異なる望みを同時に叶えるのが理想の働き方です。

収益の最大化と自己実現を両立

続いて3つ目のポイントの収益の最大化と自己実現を両立についてです。働くことに対して2つの目標があると話をしましたが、どうすれば収益の最大化と自己実現の二つを両立できるのか。

その基本ステップは
1、好きなことに人的資本の全てを投入する
2、好きなことをマネタイズ・ビジネス化できるニッチを見つける
3、官僚化した組織との取引から収益を獲得する
という3つのステップです。

一見難しそうですがこれは可能であると著者は言います。日本でも優秀な若者が20代で起業しゲームやアプリの開発などを手掛けることが珍しくないです。なぜ彼らがこのような道を選ぶかというと、身近な成功体験を知っているからです。

日本ではシリコンバレーのような何千億円何兆円というビッグビジネスが生まれるわけではありません。しかし有名大学の学生であれば友人の先輩くらいの範囲内でアプリの会社を作ったら3年目で5億円で大手メーカーに買収されたというような話を聞いたことがあるという人も珍しくないです。

日本の市場はグローバルマーケットに比べてずっと小さくはありますが、それでもちょっとした運と才能があれば若くして億万長者になるくらいの規模ではあります。もしまだ20代の人であれば35歳までにやらなければならないのは試行錯誤によって自分のプロフェッション(=好きなことを実現できるニッチなもの)を見つけることです。

会社の中で専門性を生かせるごく少数の恵まれた人を除けば人生のどこかの時点で組織の外に出て知識や技術コンテンツの力で大組織と取引するフリーエージェント化が高度化する知識社会の基本戦略となると思います。

日本人は定年という強制解雇によって誰もがいずれは会社を追い出される運命なので超高齢化に適応できる戦略としてもフリーエージェントとかは非常に有効な戦略だと言えます。

まとめ

まだ解説したりないですが今回はここまで。最後に内容をまとめます
1、人生を支える3つの資本
  幸福の定義人
  生の8つのパターン
  幸福の製造装置
2、人的資本に関する戦略
  20代で5500万円の人的資本
  かけがえのない自分になること
  収益の最大化と自己実現を両立
というポイントについて解説しました。まだまだ紹介できていない部分が多いです。おすすめの本ですのでぜひ読んでみてください。リンクを下記に貼っておきます。

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ではまた次の投稿でお会いしましょう!

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