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営業心理学について

「⾃分を選んでもらうため」の⼈間関係構築において、活⽤すると効果的である 「営業⼼理学」についてを、Webディレクター目線でまとめました。

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01. Web業界のディレクターの仕事って何だろう?

➀ 受注活動(営業的な業務)
受注前の案件に対して、お客様への提案・受注に向けた対応等の営業的な側⾯の業務

② 進⾏管理(ディレクション業務
受注済み案件の制作進⾏・ディレクション業務 (クライアント‧社内の進⾏管理)

「営業ではなく、ディレクター」「完璧な提案書を作るから大丈夫」「ディレクション力を高めたい」
そんな声も聞こえてきそうですが、案件を依頼していただく事でディレクションする業務が発生します。ですので、案件獲得のための受注活動も非常に重要です。


02. 受注活動におけるディレクターのタイプ

➀ ⼈脈を活⽤する
過去の実績や結果から既にお客様へ信頼を与えている為、個⼈に対して相談が来るレベルである。

② 知識に⻑けている
Webにおける技術⾯の知識に⻑けており、 お客様に安⼼感や信頼感を与えやすい。

➂ 営業⼒
「会話術(コミュニケーション)、丁寧な対応、提案能⼒」など、いわゆる営業マンとして⼀般的に必要と⾔われている物を武器に案件を受注する。

「⼈脈を活⽤する」 「知識に⻑けている」については、時間・経験、ご⾃⾝の努⼒・勉強が特に必要となります。 そこで、今回は、⽐較的取り⼊れやすい 「営業⼒」の中の会話術にフォーカスして、説明します。


03. 営業活動のポイントって何だろう?

エムハンドのディレクターの仕事を例に挙げると、

💬 ⼀般的な営業活動との違い
エムハンドにおける営業活動は「お問い合わせ客」への営業活動が中⼼です。

そのため、下記のようなことは⾏っていません。

❶ 興味のないお客様へのサービス説明
(サービスに興味を持ってもらう)ex保険・インターネット・ウォーターサーバーなど
❷ 飛び込み営業

既に、HPをリニューアルすること⾃体は決定しているお客様へ、弊社のサービスのご説明やご提案を⾏うことが中⼼です。

つまり、サービスの利用(サイトリニューアルすること)自体は決定しており、 自社(⾃分)を「選んでもらえるか」「選んでもらえないか」 が重要なポイントとなります。


04. そもそも営業⼼理学って何?

【心理学】

⼼理学とは、⼈は無意識のうちに「こうされたらこう感じやすい」「こういう状況ではこうなりやす い」などの⼈間の⼼理を研究した学問のことを指しています。営業⼼理学とは、その⼼理学の1種です。他にも犯罪⼼理学‧恋愛⼼理学など様々あるそうです。

【営業⼼理学】

営業⼼理学は、⼼理学を営業活動のシーンに置き換えて、 考えたものです。


05. どんな技法‧話法があるんだろう?

今回、営業⼼理学の中でも もっともポピュラーな下記7項⽬に絞って説明します。

❶ 単純接触効果
❷ 好意の返報性
❸ YESドリ、NO消し
❹ フットインザドア‧ドアインザフェイス
❺ 第三者話法
❻ 両⾯提⽰の法則
❼ 分析⿇痺(選択クロージング)‧極端の回避性(松⽵梅の法則)


❶ 単純接触効

【⼀般的に⾔われていること】

  • 人は何度も繰り返し触れるものに対して好感をいだく現象のことです。

  • 営業では成約に⾄るまでの間、顧客の元を何度か訪れるのが⼀般的でしょう。

  • これは、⻑い時間相⼿を拘束して予定を崩さないようにする効果もありますが、単純接触効果を利⽤するためでもあるのです。

  • 単純接触効果においては、どれだけ⻑い時間を過ごしたかよりも、どれだけ頻繁に時間を過ごしたかが重要です。

  • 成約したい営業マンからすればもどかしくも感じるものですが、1回の商談は短めにして営業回数を増やすようにしましょう。

【⽇々の⽣活における具体例】

💬 新⼊社員の方
⼊社初⽇より、⼊社1週間後・1か⽉後の⽅が ⼼を開いて話していることが多いのではないでしょうか。

💬 デートの回数
好意を持っている異性と仲良くなりたい場合は 「連絡先を聞き」「定期的にやり取りをしよう」としますよね。

【営業活動における具体例】

💬 連絡頻度
ヒアリング後から、提案までの間に 「お礼メール」「質問」「相談」など 『お客様と接触する機会』は調整することが可能なはずです。
その際、「追加資料を送ります」というカタチにすると 嫌らしくなく、⾃然に接触頻度を増やせると思います。 1回も接することなく提案を迎えることは、 この法則で考えると、⾮常にもったいないです。

提案前までにお客様と接する頻度を増やすことは、好感を持ってもらうという⾯で有効です。


❷ 好意の返報性

【⼀般的に⾔われていること】

⼈は「⾃分に好意・好感を抱いている⼈」に対して、良い印象を持ちやすいと⾔われています。

【⽇々の⽣活における具体例】

💬 困った時に助けてくれた⼈
そういった⼈が困っている時は、 こちらも助けてあげたくなるものではないでしょうか。

💬 デートで⾊々調べてくれる‧奢ってくれる⼈
⾃分に⾊々と良くしてくれる⼈の場合、好感を持ちやすくなるものではないでしょうか。

【営業活動における具体例】

💬 返信のスピード
お客様からのちょっとした連絡に対して、すぐに返信してあげることで「この⼈は私とのやり取りを⼤切にしている」と感じさせることができます。

💬 お客様の悩みに寄り添う
「●●のような場合、⼤変ですよね」「私も調べてみます」 など、お客様の悩みに寄り添った⾔い回し、対応を繰り返し⼈として好意を持ってもらうことは有効です。

まずは⼩さな好意を提⽰することを繰り返し、 最低限、クライアントから好感を持ってもらうことから意識してみることもありでしょう。


❸ YESドリ(イエスセット、yes set、YES誘導法)NO消し

【⼀般的に⾔われていること】

  • ⼈は、⾃らの⾏動‧発⾔‧態度‧信念などに対して⼀貫したものでありたいという⼼理『⼀貫性の法則』が働いていて、 「何度も同意してると、すぐには反論しづらくなる」と⾔われています。

  • ⼈は、相⼿に対して、「共感する」という作業を何度も繰り返してると、否定的な対応ができなくなります。そうです。

【⽇々の⽣活における具体例】

💬 ⾷事に誘う場合
「最近、すごく暑くなってきたよね?」 →「そうだね」
「暑い⽇は、冷たいものが⾷べたくなるね」 →「そうだね」
「雑誌に、駅前のお蕎⻨屋さん載ってたね」 →「載ってたね」
「やっぱり家で⾷べるお蕎⻨とお店のお蕎⻨は違うよね」 →「そうだね」 「よかったら今度⾏ってみようよ」 →「そうだね」

【営業活動における具体例】

💬 YESを貰える質問の仕⽅に変えてみる
「どうせならしっかり作って効果の感じるサイトにしたくないですか?」 →「そうだね」(安価な企業に⽬移りさせない)

「こういうページがあるとSEO的には有効と⾔われてますが、よくないですか」 →「そうだね」(ご予算増額)

「御社の皆さまで更新できるシステムの⽅が便利ではないですか」 →
「そうだね」(CMS不要の企業様への組込みのご提案)

「医療広告ガイドライン」まで意識して、構築する企業のほうがよくないですか →「そうだね」(他企業との差別化)

いかにして『⼩さなYESを積み重ねていくか』『NOと⾔わせない会話・質問をしていくか』が⾮常に重要です。


❹ フットインザドア・ドアインザフェイス

【⼀般的に⾔われていること】

〇 フットインザドア
⼈はあまりにも⼤きな要求は断りやすいが、⼩さな要求はそれと⽐べて断りにくいということを利⽤する⼿法です。 ⼩さな要求からYesを取り、徐々に要求を⼤きくしたYesを重ね、最終的な本来の要求を受け⼊れやすくさせる効果を狙った技法。

〇 ドアインザフェイス
⼀度断った後の提案は断りづらい、という⼼理を応⽤したテクニックです。本来の要求をする前に、 断られることを前提とした要求を挟むことで、本来の要求を受け⼊れやすくする技法。

【⽇々の⽣活における具体例】

💬 フットインザドア
→今⽇財布を忘れてしまい、100円貸してもらえない?→YES
→度々で申し訳ないが、今日の飲み会代が無いので10,000円貸してくれない?→YES

💬 ドアインザフェイス
→今⽉厳しくて100,000円貸してくれない→NO
→じゃあ10,000円でいいから貸してくれない→YES

【営業活動における具体例】

💬 ⾒積⾦額
値引き交渉などを見越した上での価格設定をする。

⼩さい要望から⼤きな要望へ、⼤きな要望から⼩さな要望へ ⽬的に辿り着くために、上記のような⼯夫をしてみるのも有効です。


❺ 第三者話法

【⼀般的に⾔われていること】

⼈は、第三者の意⾒を取り⼊れることで信憑性が⾼まるため、 相⼿がこちらの主張を受け⼊れやすくなる。と⾔われています。

【⽇々の⽣活における具体例】

・⼤⼿の●●社も使⽤しているそうですよ
・▲▲というツールが今流⾏っているらしいですよ
・⼝コミ


⾃分の意⾒っぽく伝えるのではなく、あくまでも他者の評価‧意⾒のように伝える。

【営業活動における具体例】

💬自分の提案したい方向に導くときに使用してみる
① 多くの企業様がCMSは⼊れることにより、やはり便利だったと ⾔われてます。
② ●●のようなページを作られる他社企業様は多いですね。
┗絶対に作らなくてはいけないページではない場合などに提案してみると良いでしょう。

時には有名な方のお名前をお借りしてみてはいかがでしょうか。


❻ 両⾯提⽰の法則

【⼀般的に⾔われていること】

  • ⼈は、何事にもメリットとデメリットがあることを理解しています。 そのデメリットを隠しメリットだけ強調されると、不信感に繋がってしまいます。

  • メリットだけでなく、デメリットも伝えることは重要です。

  • デメリットを公開することのメリットは、誠実であるという印象を持ってもらえること、 そしてそのデメリットを補ってあまりあるメリットがあるということを、逆説的に伝えられることです。

【⽇々の⽣活における具体例】

💬 例.1
新モデルの冷蔵庫は、⾦額は⾼額になりましたが 消費電⼒が下がったので⻑い⽬で⾒たらお得ですよ。

💬 例.2
あの⼈はお医者さんで稼ぎはすごくいいけど、 ちょっとお仕事が忙しい⼈みたいね。

【営業活動における具体例】

💬 メリットとデメリットを伝える
弊社は⾼いです。 ただし、テンプレート等の物ではなくしっかりとお話し、 各社様のご要望に合った構成‧デザインをご提供します。 また、デザインに関しても実績から感じていただけるように クオリティの⾼い物をご提供します。 逆にテンプレートのデザインでは嫌でないですか?

時にはデメリットも伝えることで信⽤を⾼める⼯夫も重要です。


❼ 分析⿇痺(選択クロージング) 極端の回避性(松⽵梅の法則)

【⼀般的に⾔われていること】

  • ⼈は選択肢が多いほど「分析⿇痺」に陥りやすい。(決定することが困難になりやすい)

  • ⼈は「選択肢が少ない⽅が幸福度を感じやすい」ということが統計的にわかっている。そうです。

  • 三段階の選択肢があった場合、多くの⼈は真ん中のモノを選ぶ

【⽇々の⽣活における具体例】

メニューが多すぎる飲⾷店で逆に悩んでしまう という経験があるのではないでしょうか。
松⽵梅のような3段階の値段設計されている場合、 「松=2:⽵=5:梅=3」の⽐率で選択されるそうです

【営業活動における具体例】

💬 提案する内容は絞る
あれもこれも、提案に盛り込み過ぎると、逆に提案軸がぶれる。 相⼿が疲れてしまうという事もあるかもしれません。 その場合、資料を分ける、「提案資料‧補⾜資料」として追加で別送するなども検討してみてはいかがでしょうか。

💬 ⾒積書の数を⼯夫する
2~3件の候補を提示し、その中から選択してもらうようにすることで、NOという回答を貰う事を回避する。

提案する数‧⾒積の数を調整し、ご自身を選んでもらうようにする工夫は重要です。


05. その他の手法

下記は一般的ではないですが、その他の話法等についてご紹介します。

ピーク‧エンドの法則

ある事柄に対して記憶や印象に残っているのは、「感情が最も⾼ぶったピークの出来事」「その終わりごろの出来事だけ」で、 それらが全体的な影響を決定づけるという法則のこと。取りたい案件は最後に「誠⼼誠意対応するのでどうぞよろしくお願いいたします」「絶対損はさせません!」といった 半分、告⽩みたいなことをして、プレゼンを終えることがあります。最後の印象が重要と考えているためです。

吊り橋効果

⼀緒に考え、作っていくことで、担当者との関係が強くなる。というものです。 クライアントが自分を推薦してくれる状況を作れます。

損失回避の法則

「得する」よりも、「損したくない」と考える⼈が多いという考えです。 「MHを選ばないと損しますよ」というニュアンスでのお話なども場合によっては効果的です。

当然意識

お客様の事を考え、最善の提案書を作り、プレゼンしているかと思います。 あとは、ご⾃⾝が「この提案書で私を選ばないのはありえない」という絶対的な⾃信を持つことが重要です。 「⾃信は話し⽅や表情に出ます。」みなさんも、⾃信のない⼈からは物は買わない⼈が多いのではないでしょうか。


04. 最後に

上記の例は全ての場合にあてはまるわけでありません。 お客様のタイプを⾒抜き、それに合った⽅法で使い分けていくことが重要です。

ただし、『知らないことは使うことができません』 使う、使わないは、皆さんの⾃由ですが、 「営業⼼理学」というものを知っておくことで、使う必要がある場⾯が来たら使ってみると良いと思います。

数学の公式などと同じで、「●●の⽅式」など法則の名称を覚えただけでは意味がなく、プレゼン時や電話対応などのシーンなど、日々の業務に当てはめて活⽤することが重要です。


writer
-
坂本大輔