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おねショタ108式の93『ゴーストダイバー』

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高度に情報化し、人の意識すら分解することが出来るようになった世界のはなし。

主人公の”女性”は事故により脳以外を全て有機無機入り混じったマシンに置換した存在。高額な借金を返済するため、現在はとある企業経営者の屋敷で使用人をしていた。

義務として慈善活動家を気取る主人に甲斐甲斐しく仕え、数多くの子供らにも恭しく接する彼女は、その末席に連なる一人の少年と出会う。

ヒト意識変性症……意識の電脳化が出来ないという、今生において致命的な障害を負った彼を、彼女は全く逆の立場からサポートする。

そしてある日、実家から半ば放逐されながらも研究を続けた彼は……彼女の助けもあり……まったく違う電脳化技術を開発。しかしそれは電脳化のリーディングカンパニーたる少年の父親の企業ではなく、永遠の二番手と言われた電脳化企業からリリースされたのであった。

そう、主人公の女性はその企業から雇われたスパイであり、障害に反して素晴らしい頭脳を持つ少年と一族にしか公開されない電脳化コア技術を組み合わせることで新技術を開発させ、以てその巧みな電脳空間情報改竄により真の雇い主たる企業にその権利を移行させたのだ。

やがて少年の父親の企業は失墜。一方少年は年若くして相手方企業の重役に迎え入れられるも半ば軟禁の身。

そして主人公の女性は双方の追及から逃れるためその身体を全て”脱ぎ捨て”、姿を消す。


しかし、物語はそこで終わらない。


ある日、飛び級で入学した大学で少年は一人の女性と出会う。

研究室で報われぬ研究を続ける彼女は、冴えない、地味な、不美人に見えた。

しかし、どこかで会った気がする。という彼に、まさかと否定する彼女。

わたしのような地味な女と企業のお坊ちゃんが接点が有るはずが。

そう口にする彼女に、少年は実家から切り離され、ソーシャルグラフ上ただのヒトであり、その事実は大学側すら把握していないことを指摘する。

そして、自分を出来損ないや一家のおまけではなく、坊っちゃんと呼んだのは、あの使用人だけだとも。

果たしてその女性はかつて彼の生きる支えともなったスパイの彼女と判明し、その二人だけの秘密を抱え、新しい世界へと踏み出してゆくのだった。

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。