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まいこ・ザ・ジャンパー 6【終】

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ややあって、正式な警察執行部隊の到着を待ち、一旦はその範囲で拘束したバカ共改めテロリストの身柄を確認するべく、覆面を引き剥がす。
そこにはトカゲ……のような、ではなく……そのものの顔が存在していた。
「……特殊メイクですかね」
「血の色まで置換する技術って、あります?」
「なにか採血か生体サンプルを取る手段を……」
目の前で黄緑色の液体が吹き出した様子を見ていない彼らはそう疑わざるを得ないのだろう。まさかという気持ちが慎重にさせ、そう言葉を言い交わす。

「いや、でも、まさか。まさかねえ」
責任者らしき男性がそう独り言のように呟いていると、液体の付着していた上着とブラウスをゴミ袋に入れ丁寧にパックしたマルシャがアンダーウェアのまま近づいてきた。なお肌色は一切見えないのであまり色気はない。

そもそも、アンドロイドだしね。

「あの、もし”そういう存在”なら、伝染病等の危険はありませんか?」
その一言に、俺たちは仲良く飛び退った。
さすがマルシャ。頼りになるわ。

そして、瞬く間に2年が過ぎた。
自らをヤオピン星人と名乗るトカゲ人達は、正式に、双方向接触した初の異星人と認定され、その目的をジャンパーチャイルドの誘拐と認めた。処遇は未だ不定だが、危惧していた未知のウイルスなどはなく、警察からうちの管理局付きの研究所に移され急ごしらえの拘束施設に入ってもらっている。
そもそもおかしかったのだ。どこまでバカなテロリストでもジャンパーを手に入れて扱える組織などこの地球上どこにもない。

だが、逆に言えば地球外ならある。らしい。

奴らの乗ってきた宇宙船の航海ログを調査し、次の目的地を見事割り出した俺たちはその悪の枢軸(仮)に殴り込みを……かけるわけもなく。もうちょっと上のレイヤーにアプローチすることにした。
かねてからの懸案でもあった。

「本当に街全体を艤装に転用したんですか」
「ええ、補償を受けて同じ街を作るよりそっちのほうが面白そうだからと」
どういう精神構造をしているんだろうここの住民は。
「今の所、そしてこの先もしばらくは”この船”が最大サイズでしょうから、その発着港に使える施設の建造は、これからの役に立つ。ということで、市議会も通ったそうです」
「おお、素晴らしき哉地方分権!」
「そうなんですか?」
「さあ?」
とりあえず伸びをして、船のブリッジから眼前に広がる重機の群れを眺める。

「カザキリさん。行けそうですか?」
「じゅーんや! じゅーんや!」
「それは、舞心ちゃん次第です」
順大さんがコアブロック、かつての玉座から舞心ちゃんの手を引いて現れた。
後ろには舞香さん……ふっくら……いや?
「おめでたですか?」
「おめでたです」「ええ、お恥ずかしながら」
仲が良くて結構です。

「じゃあ、行きましょうか。地球史上最大規模の……ママへのチクりに」
その正式名称を、【超銀河上位知性への情報提供を伴った正式接触を目的とする天の川銀河外超長距離航海計画】という。

【おわり】

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