“おはよー☺ 今日も無事に、過ごせますように☺”
毎朝同じ内容のメールがほぼ同じ時間に母から送られてくる。今、関東近郊で起きているコロナウイルスの爆発的な感染。そんな状況を不安に思い、生存確認と無事であって欲しいという願いを込めて2週間前くらいから送ってくれている。
僕はそのメールに
“ありがとう😊
母さん達も気をつけて”
と返信すると母から
“(^-^ゞ🙆”
と返ってくる
正直少し面倒くさいなと思う日もあるけれどこんなたわいもないやり取りをするのは楽しいし、何よりこんなにも自分が愛されているのかと実感できる。
反抗期には母に向かって酷い暴言も言い捨てたりもした。兄弟で唯一県外の大学に進学させてもらった。それなのに就職はせず役者を目指すと言った時は勘当もせず自分のやりたい事をしなさいと応援してくれた。数え切れないほどの迷惑をかけてきた僕をそれでも愛してくれている。本当頭が上がらない。良い母親に恵まれたと心底思う。
そんなある日、お昼のバイトを終えて着替えていたらパートのおばちゃんと店長が雑談をしていた。店長は社会保険労務士という職に就くために今月で会社を辞める。社会保険労務士とは企業の労働管理や社会保険の難しい手続きを代わりに行ったり、福利厚生や年金などのコンサルティング業務をする仕事だ。職につくには国家試験を受けなければならないらしく合格率は約6%でなるのは相当難しいらしい。
おばちゃんはその理由で会社を辞めることを知らなかったらしく、最初は寿退社だと思っていたことを伝えるとどういうことですかとおばちゃんと笑い合っていた。そしてその後、店長はこう続けた。
「僕も専業主夫になろうかな。でも専業主婦っていいご身分ですよね。お金は自らは払わないで旦那の金で年金もらうって。いやー本当良いですよ」
この発言に正直腹が立った。この人はこの発言を聞いている人の親が専業主婦だった場合どんな気持ちになるかを想像できないのだろうか。
現に僕の母は専業主婦だ。
朝誰よりも早く起きて家族のご飯を作り、みんなを送り出した後は掃除や洗濯。旦那さんの給料からどれくらい生活費に当てどれくらいを貯金するかを計算したり、馬の合わないご近所さんともコミュニケーションする事もあるだろう。専業主婦の事で姑から小言を言われたりもするはずだ。こんなにも大変なことを毎日するのだ。しかも主婦は家事をするのが当たり前という古い考えが未だに染み付いてるこの国なので誰からも褒められたりはしない。
そんな母を見てきたからこそ店長の発言が許せなかったし、愛で溢れている偉大な母が否定された感じがして悔しかった。そんな気配りや思いやりの無い人が資格試験をパスすれば社会保険労務士になってしまうのか。出来ることならぶん殴りたかった。
けれど文章では強気に言い返せるのにその時は何も言えずにその場を後にしてしまった。そんな自分が嫌になった。その日の夜は怒りを缶チューハイと共に流し込んで眠りについた。
朝起きると母からメールが来ていた。
“おはよー☺
今日も無事に、過ごせますように☺️”
あなたの20数年を守らずごめんなさい。これからは守れる強い人になりますと心に誓い、
“ありがとう😊 母さん達も気をつけて”
とメールを送った。すると母から
“ありがとう😊”
と返ってきた。母は偉大だ。
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