羨ましいぃぃぃ

電車では基本イヤホンをして音楽を聴きながらあまり携帯を操作せずに移動している。

そうするとある欲望が沸沸と湧き上がってくる。

歌いてぇぇぇぇ

アメリカの電車である乗客が歌を歌い、そうすると横に座っていた人が後から歌い、その正面に座っていた人がハモリのパートを歌ったりするよくSNSなどで流れてくるあのシーンや最近だと星野源さんの「POP VIRUS」のMVで電車の乗客全員がぐちゃぐちゃにバラバラに歌い踊ってるシーンなどにとても憧れる。

けれど実際はいきなり日本でそんな事をしてしまったらちゃんとやばい奴認定されてしまう。もしもそこに居合わせた乗客が動画を撮っていてそれをSNSなんかに拡散したらもう最後。一生消えない「やばい奴」が死ぬまで自分にこびりつくのだ。

そんなリスクが頭によぎってしまうため、その心の中では沸沸と湧き上がる歌いたい欲求に「理性」という冷水を注ぎ、頭の中のフィクションの世界で欲を満たす事で何とかその場を凌いでいる。

日本人はなにかとこういう感情を表現することに恥ずかしさを感じる人が僕を含めて多いと思う。だからこそ自分の踊って歌いたいって感情に真っ直ぐなアメリカの人達への憧れがこういった事をする度に思うのだ。

つい先日、「コンフィデンスマンJP プリンセス編」を見に近くの映画館まで足を運んだが作品が人気という事もあって約3時間後の上映しか席が空いておらず、仕方なくチケットを買った。

ショッピングモールに隣接する映画館だったので暇はしないだろうと思い服屋さんや本屋さん、楽器屋さんなんかを回りながら時間を潰していた。そしたら外の方からサックスやドラム、ギターの音色が聴こえてきた。その音を頼りに進んでいくとボーカルのいないジャズバンドが演奏を行なっていた。詳しくは分からないが横断幕などから見て推測するとショッピングモール側が日本やアメリカなどで活動するジャズバンドにオファーして日本の人たちにジャズの素晴らしさを伝える目的のイベントなのだろうと思った。

観客も数十人が集まっていてとても大盛況だった。見ている皆が携帯で演奏を録画してジャズバンドの演奏を楽しんでいた。僕も彼らの演奏を聴いてるうちに体が揺らしながらマスク越しではあるけれど笑顔になりながら演奏を聞いていた。

あーーーまた沸沸と湧き上がる。

勝手に歌詞つけて歌いてぇぇぇぇ!!

けれどそんな事したらせっかくのいい演奏が台無しである。注目は彼らから僕の方に移ってしまいやばい奴認定押されてしまう。そう思ってまた例の如く「理性」という冷水を注ぎ気持ちを落ち着かせて小さく揺れ、頭のフィクションの世界で1人気持ちよく歌っていたら、ある5,6歳の女の子がフラッと現れた。女の子は彼らの演奏をバックにクルクルと踊りだしたのだ。その踊ってる様はコンテンポラリーダンスのように見え、女の子が彼らの演奏で感じた物をそのまま表現してるように見えた。

日本でこんな景色が見れた事、それを女の子が体現しているのが見ていてとても嬉しい気持ちになった。

女の子が踊りをやめる前にポッケの中のスマホを取り出して、ジャズバンドの演奏とその女の子が踊っている姿を動画におさめた。

気がつくと上映の15分前だったので名残惜しかったけれど映画館へ足を運んだ。

もっとこんな景色が増えて欲しいな


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