#6 赤い“あいつら”

赤いあいつらが好きだ。あいつらはポストやトマトや日の丸なんかよりも赤くてあいつら以上の赤色を僕は見たことがないし、この先あいつら以上の赤色はきっと現れないと思う。あいつらは単体で食べても勿論美味しいのだが、やはり濃いめの味付けをした料理と一緒に食べるのが1番で、あいつら特有の甘酸っぱさと濃いめの味付けが見事に口の中でマリアージュ(使ってみたかったぁ〜!!使えてハッピー♪)してそれはそれはとても美味なのである。あいつらを何ヶ月も食べずに居ると時折あいつらを食したいという欲求がが出てくるので、あいつらに会いたいが為に牛丼屋やカレー屋に足を運ぶ時もある。その時牛丼やカレーはあくまでおまけに過ぎず、誰が何と言おうと僕の場合主役はあいつらなのだ。

こんなに下手な焦らしをして申し訳ないので単刀直入に言います。僕は紅しょうがと福神漬けが大好きだ。福神漬けは茶色の奴もあってもちろん美味しいけれど断然赤派だ。茶色の福神漬けより赤い福神漬けの方が美味しいもの。紅しょうがと福神漬けは赤ければ赤いほど美味しい(と思っている)。皆さんはどのくらい紅しょうがと福神漬けが好きだろうか?誰よりも僕の方が1番に紅しょうがと福神漬けの事を愛していると自信を持って断言できる。牛丼を食べる時紅しょうがを牛丼の真ん中に円のように置き、摩訶不思議な色の日の丸が完成するようにどさっと乗っけたいし、カレーだったらご飯の白を全部福神漬けの赤で埋め尽くしたいし、沖縄そばなら紅しょうがの赤い着色料が汁に移ってピンク色の出汁が完成するくらいまで紅生姜を入れたい。本当はこれくらい紅しょうがと福神漬けをどさっと料理に乗っけたいが実際はしない。なぜなら周りからヤバい奴&ケチ臭い奴とかそれと料理を作ってる人からしたらものすごく失礼に値する行為という事は重々承知なので、最初は自分の紅しょうがと福神漬けを食べたい欲と世間体をギリギリはみ出ない絶妙なラインの量を料理に乗っける。勿論その量だと食べたい欲は満足しないので、博多ラーメンの替え玉システムのように無くなればあいつらを足し、無くなれば足しを繰り返し、最終的には最初から乗っけたかった量のあいつらを食べる事に成功するのだ。マヨネーズをこよなく愛する人の事を“マヨラー”と言うのなら僕は間違いなく“紅ラー”であり“漬けラー”なのだ。

何故ここまで好きなのだろう?と好きになったきっかけをひたすら探すけれどこれっぽっちも思い出せない。むしろ幼い頃はあいつらの事なんか大嫌いだったなぁ。三食そぼろ弁当や屋台の焼きそば何かに紅しょうががちょこんと入っていたら真っ先にどかしていたし、何なら赤い着色料が付くのすら嫌だったので赤くなったご飯も一緒にどかしていた気がする。牛丼屋やカレー屋さんに行っても今の僕からしたら宝箱のように見える紅しょうがと福神漬けが入ってる容器にも1mmも触れたことがない。けど今はこんなに好きなのです。思い出したいなぁ〜〜。どのタイミングで好きになったんだろう?絶対に「こいつらうめぇ〜じゃ〜ん!!(BOOK OFFのCMの寺田心君風)」と感激した日があった筈なのに。少しも思い出せないのがちょっと悲しい。

とここまで書いてみたは良いものの、紅しょうがと福神漬けに関する自分の体験したエピソードとか思い入れとかを今必死に脳内で探し回っているが全く出てこない。ちゃんと奥の奥の方の引き出しを根こそぎ開けてみても全くの空っからだ。おばあちゃんが良く自家製の紅しょうがを作っていて、それが美味しくておばあちゃん家行くたびに自家製紅しょうがを持って帰っていたなんていうほっこりエピソードなんか持ってないし、カレー屋さんで彼女とご飯を食べてる最中に間違えて彼女の事を別の女の子の名前で呼んでしまったことで浮気がバレてたまたま目の前にあった福神漬け入れを彼女に投げつけられて全身びちょびちょ&服が赤く染まってしまったという激レアエピソードなんか持ってもいない。頑張って出しても牛丼をテイクアウトした時に紅しょうがの小袋を6個ぐらい下さいと言ってちょっと店員さんに変な顔で見られるという何ともうっすうすなエピソードしか出てこない。途中紅しょうがと福神漬けが無くなったらゾッとするよねー、ゾッとするで思い出したが最近、、、という感じで最近体験した最恐に不思議な金縛りを体験したエピソードをぶち込もうとしたがそうしてしまうと流石に横道に外れすぎだろうと我に帰りサッと消したぐらい何を書こうか迷った。というかそもそも最初の冒頭で変な焦らし方をした文章を書いたのもこれを暗示していたのかもしれないな。普段ならあんな風に書いてみようとは思わなかったのに。無意識の領域で僕の脳が全然書くこと無いからちょっとでもいいから行数を稼げっ!!と勝手に命令していたのかもしれない。それだとしたら我が脳ながらナイスファインプレーだと思う。たまにアメトーークでネギ大好き芸人とか油揚げ大好き芸人といった食材系をテーマにした回の時にその食べ物あるあるというコーナーの際に芸人さんが早々にあるあるエピソードが切れて最終的には薄い薄いエピソードしか言わなくなり凄いグダグダな感じになるのをよく見るが、今その気持ちがとても分かった。大体思い入れがある料理ってハンバーグとかコロッケとか良く家庭に出てきたメインディッシュであって、薬味や副菜系とかは大人になってから良さに気づくのでもしかしたらこれも当然の結果なのかもしれない。だからこそあの話のプロである芸人さんでさえ序盤で話が尽きてしまうんだと思う。というのも紅しょうがと福神漬けについて書こうと思ったのもたまたまお弁当に岩下の新生姜が入っていて、岩下の新生姜うまっ!!っとなり、「あ、そういえば僕紅しょうが好きだなぁ。それでいったら赤い福神漬けも好きだなぁ。」というとてつもなく薄い理由で尚且つ慣れないことをした結果がこんなグダグダな文章を書く羽目になったのかもしれない。慣れない事はするなと良く言うけれど本当なんだと見に沁みて分かっただけでもこの文章を書いて良かったと思うようにしよう。そしてこんな事を書いておいて信じられないかもしれないけれど正真正銘僕は“紅ラー”であって“漬けラー”である事は理解してほしい。何せ今も牛丼屋で足りなくなった紅しょうがを“追い紅”してる最中なのだから。

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