「文章なんて書けません!」という方に贈るちょこっとTIPS【後編】
さてさて、前編では、文章を書くためにやるべき準備のお話しでした。
まだ読んでいないよ、という方はこちらもぜひ。
後編の今回は
についてお話しします。
今回書く内容は、文章を書く際のルールについて。
何気なく書いている方が多いかなと思うのですが、ちょっとしたルールを知っていると、それだけで読みやすさが格段にアップします。
日本語って、非常に難しい言語です。
文法も複雑で、かつ表現手法が無限にあるので、細かいことを言い出すとキリがない。
そして、文法的に、また表記ルールとして正しくなくても「なんか味があればOK」みたいな空気感もあるので、正解があまりないようにも思えますよね。
とはいえ、味を出すにもまずは基本的なルールを知っておかないと、雰囲気はあるけど読みにくい、何が言いたいのかよくわからない、といった文章になってしまいます。
まず前半の【やりがちなこと】セクションでは、私が普段文章の校正チェックをする際に、よく見かけるポイントに関して説明します。
後半の番外編は、かなり細かい内容なので、一旦スルーしても構いません。目次を見て、気になる項目だけ読んでみてくださいね。
それでは、まず【やりがちなこと】から見ていきましょう!
【やりがちなこと①】読点「、」入れていますか?
一番多いのが、読点「、」を適切に入れていないケースです。
読点「、」の全くない、長い文を書いていませんか?
(読点「、」が多すぎる人もいますが、私の肌感では、読点「、」が無いパターンの文章に出会うことが多いです)
人はまとまった文章を読む際、無意識にその文章を頭の中で音読しています。
読点「、」がない文章は、声に出していなくても、読者を窒息させる危険があるのと、区切れの位置が曖昧になることで、内容の理解を妨げてしまいます。
読点「、」には、息継ぎと、文節の意味を区切るという大きく二つの役割があるんです。
例えば、この文章を読んでみてください。
これはさすがにちょっと極端な例ですが、息継ぎ無しで読みながら、意味を正確に理解するのはなかなか難しいと思います。
読点「、」を入れることで、落ち着いて意味を考えながら読むことができると思います。
人によって一息の長さは異なりますので、絶対にこの文字数以内に一度は読点「、」を打つ、という法則はないのですが、少なくとも自分で読んでみて、息ができない文章を書くのはやめましょう。
※ひとつの文を長く書きすぎるのは、内容の理解を妨げる要因にもなります。文が短ければ、読点「、」を打たなくていい場合もあるので、一文を短く書くことも意識してみてください。
これを意識するだけで、文章がぐっと読みやすく、理解しやすいものになりますよ。
【やりがちなこと②】同じ文末表現ばかり使っていませんか?
次の文章を読んでみてください。
なんとなく、稚拙な文章に感じられるかな、と思います。
これは、同じ文末表現(「〜です。」)が連続しているからです。
同じ文末表現を繰り返さないというのは、ライターが最も気を使うポイントだと言っても過言ではありません。
上記の文章の文末を直してみましょう。
文章にリズム感が生まれたと思いませんか?
文末の表現の重複を避けるだけで、グッと洗練された印象の文章を書くことができます。
ただ、100%全ての文末の重複を避けるのは、かなり難しく、また読んでみて違和感がなければ多少重複していても問題ありません。
文章の内容によっては、どうしても重複が避けにくい場合もあります。
※例えば「過去の回想」を書く場合、文末に「〜だった。」「〜た。」が連続することは、小説などでもよく見かける事例です。
前の文が「です。」で終わっているから、次の文は別の表現にできないかな、となんとなく意識するところからトライしてみてください。
▶︎ちょっと補足:「体言止め」について
先ほどの例文の訂正案でも採用した、ちょっとこなれ感が出せる文末表現に「体言止め」という手法があります。
二文目を「色」という名詞でまとめている部分がそうです。このように、文末を名詞もしくは代名詞(「私が愛した彼。」とか) でまとめることを「体言止め」と呼びます。
この体言止めは、文章にリズム感と洒落感を生み出してくれる手法なので、使ってみてください。
※ただ、他の文末表現と同様に体現止めを繰り返すのはやめましょう。また、体言止めは長い文章のまとめにはあまり使わない方がいい、と言われています。
【やりがちなこと③】ちょっと、そんなに驚かせないで!
これも、地味に多いやりがちポイント。
やたらめったらエクスクラメーションマーク「!」を、文末につけていませんか?
こんな感じ。
エクスクラメーションマーク「!」は日本語では感嘆符と言いますが、これをつけることで文章に勢いが生まれるものの、一つの段落にいくつもこれが出てくると、チカチカしたバーゲーンセールの広告のように、読み手にそれなりの「圧」を与えると思っていてください。
そんなに前のめりにアピールしなくても、伝えるべき内容は伝わります。
目の前の人が、唾が飛んでくるくらいに力んで話していたら、ちょっと引いてしまって内容が頭に入ってこないのと同じこと。
内容によって、どーんと押し強めに書きたい内容だとしても、エクスクラメーションマークは、段落にひとつあるかないか程度にしておきましょう。
【番外編】意外と知られていないけれど、実は存在する文章の細かいルール
ここから紹介するのは、知っておくとよりプロっぽくなる、というちょっぴり上級なテクニックです。
例えば
このような、プロはちゃんと知っているルールが無数に存在します。
ですが、非常に細かくややこしいので、文章を書き慣れていない方が、これからお話しすることまで考えると余計に書くことが嫌いになるかも……とは思います。
ただ、読みやすい文章を書くために、こういう知識も持っておくと、より洗練された文章が書けますよ、ということで、参考までにいくつか紹介してみます。
※これらをすべて完璧に踏襲した文章を書くのは非常に難しく、読み手もそのルールを知らない場合が多いので、こだわるのはナンセンスと思われるようなことも結構あります。なので、気になるところ以外は読み飛ばしていただいてもOKです!
■かぎ括弧(「」や『』)の使い分け
「」や『』は、文中で会話や引用、強調に使われますが、実は結構細かいルールがあります。
まず、基本となるかぎ括弧(「」)は、主に会話文をくくるのに使うほか、文章の引用などをくくる、一般的な強調記号です。
特にややこしいルールがあるのが、二重かぎ括弧(『』)の使いかた。
二重かぎ括弧に関しては、以下の二つが主な使い方です。
①かぎ括弧の中に、さらにかぎ括弧を入れる場合(会話の中に引用される会話など)
②著作物をくくる場合(本などのタイトル)
ここが非常にややこしいのですが、上記の『著作物』の中の「個別の作品の名前」(一冊の短編集の中の一つひとつの作品名や、CDアルバムの中の曲名など)は、かぎ括弧でくくります。
また、かぎ括弧の中の文の、閉じ括弧の直前の文末には句読点をつけない、というルールもあります。誰かの発言などを書く際に、気をつけたい点です。
このルールの応用で、例えば、文中に何かの言葉やフレーズを鉤括弧を使って引用する場合、元の文の末尾の句読点は省きます。
はい。もう超ややこしいですね。
括弧の使い方はめちゃくちゃ細かいので、ほかにもルールはありますが、一旦これくらいを覚えておけばいいと思います。
■文中の「?」や「!」の後は、全角スペースを入れる
例えば、以下の二つの文章を見比べてみてください。
どうでしょう。
どっちも大して変わらないじゃないか、と思う方もいると思います。
この全角スペース空けは、WEBコンテンツとしては議論がある表記ルールで、メディアによって空けているところと、空けていないところがあります。
が、紙ものの場合は、JISが定めるルールが存在します(興味がある方はこちらのJIS X 4051に基づくW3Cの「日本語組版の処理要件」2020年8月11日版の区切り約物のルールを参照してみてください)。
そもそもこのルールがある理由は、諸説あるので、何が本当の理由なのかはわからないんですが、個人的には、文章の視認性を良くするためだろうと思っています。
フォントによって「!」や「?」の幅の見え方が違うので、一概にどうとは言いにくいのですが、例えば幅が狭いフォントの場合、記号が入ると前後の文字が寄ってしまうので、ちょっと読みにくく見えますよね。
このルールでは、会話をかぎ括弧で囲む場合も、途中に出てくる「!」や「?」の後にはスペースを入れます(会話終わりの場合はスペースは不要)。
のような感じです。
ちょっとややこしいのですが、「!」や「?」が付くフレーズをかぎ括弧で囲まず、その後に文脈上つながる要素がある場合(←「〇〇!だと彼が言った」「〇〇?という疑問があるのはもっとも」というような文章)、スペースを空けなくても構いません。この場合、「!」や「?」は全角表記にします。
※紙ものの場合は、読みにくさ回避のために前後に半角スペースを入れる場合があります。
先ほど説明したとおり、WEBメディアなどでは、このルールを適用しているところもあれば、そうでないところもある、と境界が曖昧なので、同じメディアの中でこのルールがバラけないように、方針を決めておくのがいいと思います(マネーフォワードの採用広報からの発信ではこのルールを適用しています)。
■実は結構たくさんある「漢字で書かない言葉」
この「漢字で書くかひらがなにするか問題」も非常に細かい話なので、一旦忘れていいと思いますが、ここまでこだわるようになるともうプロですね! というTIPSかなと思うので「プロのライターはこんなことまで考えているのか……」という参考程度に読んでみてください。
漢字で書かない、というのはどういうことかというと、例えば
という文。一見するとこれで問題がないと思うし、こういう文を書いていることってかなり多いと思います。
ですが、この文は
と書くのが適切です。
これはどうしてかというと、この文章における「こと」は、「お寺に行った」という文節に付くことでこの節全体を名詞とみなすための「形式名詞」という役割だからです。こういった、漢字で書かないのが実は正しい言葉はいっぱい存在します。
なんのこっちゃい、って感じですよね。はい。わかります。が、これに類する、細かすぎる文法まで知っている人はなかなかいないと思いますので、大丈夫です。
こういう知識はマニアックに文章を極めたい方だけ知っておいてください(笑)
※形式名詞以外にも、いっぱいあるんですが、これ以上書くと文章を書くのが嫌いになりました、とクレームが来そうなので、控えます。
ご興味がある方は「漢字で書かない言葉」などとググってみると、さまざまなサイトが出てくると思うので、恐る恐るのぞいてみてください。
■数字の表記の仕方
ひとつ前の「漢字で書かない言葉」に類するものですが、文の中で数字を書くときに、漢数字を使うのか、算用数字を使うのか迷ったことはありませんか?
まず基本のルールとして、横書きの文章の場合は「数えられるもの(ほかの数字に置き換えられるもの)は算用数字」「語句の構成要素になる数字は漢数字」というものがあります。
ただ、例えば「私たち二人は」や「おふたりは」のように、人数を表す表現の場合は、数えられるものの数字であっても、漢字やひらがなにした方がわかりやすい、もしくは雰囲気が伝わる場合があります(このあたりまで来るともうこだわりの領域ですが……)。
文章全体の中で、統一することを心がけましょう。
■見た目の読みやすさも表記の大事なポイント
上に挙げた数字の書き方に関連して、例えば、「ひとりひとり」という言葉を書く場合、「一人一人」「一人ひとり」「ひとりひとり」と色々な書き方ができますよね。
じゃあどの書き方を採用するか、という話なのですが、こういう場合、そのフレーズの見た目で考えることもよくあります。
特に上に挙げた例の、漢数字の「一」は、フォントによっては「-(ハイフン)」「ー(長音記号)」と区別がつかない見た目です。
文脈から「一人一人」と書いても「ひとりひとり」という言葉だと認識することはできると思いますが、こういうどちらとも取れる文字が文中にあると、読むときに微妙なノイズになるので、内容の理解を阻害してしまうことがあるんです。
なので、見た目がほかの文字と似通っている文字に関しては、あえてひらがなに開いて表記することもよくあります。
すべての「ルール」は読みやすさのためにある
正直に言って、文章全体の構成がしっかり作ってあれば、多少表記ルールが間違っていても、伝えたい内容は伝わります。
ではなぜプロは今回紹介したようなルールを色々と踏襲して文章を書いているのか、というと、すべては「読み手にストレスなく読んでもらうため」なんです。
例えば、鉤括弧が段落によって統一されていなかったり、「!」の前後で文が詰まっていたり、パッとみて数字か他の文字かわからないところがあったりすると、その度に読み手は「ひっかかり」を感じて思考に小さなノイズが入ります。
いくらちゃんとメッセージを固めて、構成を練って書いていても、読みにくさを感じさせる文章が連なっていたら、すごくもったいない。
ほんの少しの差ですが、知っていると知らないのでは、仕上がりに差が出る、というのはこういった部分なんですよね。
文章を書くことを始めたばかりの方にとっては、細かいルールをいきなりすべて踏襲するのは難しいことです。
でも「読点はちゃんと入れたかな?」とか「この数字の表記読みにくくないかな」とか、ひとつずつでいいので読みやすさを気にしながら書いてみることで、確実に読みやすくわかりやすい文章が書けるようになります!
ぜひこのnoteをブクマして、時々読み返してみてくださいね。
そして、今回の『「文章なんて書けません!」という方に贈るちょこっとTIPS』の前編後編で割愛した、インタビュー記事の作り方、も年明けあたりに公開したいな、と思っております。
どうぞお楽しみに✨
マネーフォワード 採用広報部 Miranda.
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